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#262 想いは奇跡の鐘を鳴らす 15

「テツジン~。来~ちゃった」


 と屋台の入り口が開いて、笑顔のまぶしい女神が入ってくる。

 まぶしすぎて直視したくない。

 というか来るな!


「って、あれ~? 晃くんじゃない? どうしたの?」


 頼まれた惑星ジュメルへのコンテナ投棄からの帰りだよ。

 せっかくヤクモ方面に来たからな、せっかくだから1杯食べていこうかと思ってな。


 テツジンとの打ち合わせも終わったことだし、作ってもらったラーメンを食べているところだ。

 

「わかる! わかるわ、晃くん! このラーメンにはその価値がある!」


 女神はそう言った後、俺の顔をじっと見て驚く。


「あれ? なんてこと! このラーメンは引きこもりすら外に出すラーメンだったというの!」


 ずいぶんな言われようだな、おい。


「素晴らしい! 素晴らしいわ、テツジン! このラーメンはスペースオペラをも変える一杯よ! 胸を張りなさい!」


 陶酔して言う女神に苦笑いを浮かべるテツジン。

 こんなのが3時間おきに来てるのか、そりゃあひどいな、心中お察しする。


「で、晃君はなに食べてるの?」


 そりゃあラーメンだよ。

 ここ来て他に何を食えと?


「違うのよ。食べ方よ、食べ方。麺の硬さは? 味の濃さは? 油の量は? ネギの量とかあるでしょう!」


 女神は身振り手振りで訴える。


 えっと「普通」で。


「なんで!」


 そんなこと言われても。

 店が推奨するのが「普通」なんじゃないのか?


「違うわよ! 普通ってのはね、多くの人に無難に食べてもらうものなのよ! 味覚ってものは人それぞれ違うものなんだから、そこから自分に合うように持っていくのがラーメンの食べ方でしょう!」


 目いっぱい力説される。

 そりゃあもっともな意見だな。

 でもまあ俺は普通で満足してるからそれでいいんじゃね?


「向上心! 晃君はもっと向上心を持つべきだと思うのよ!」


 食のこだわりも向上心と言うのだろうか?


「言うわよ! そういうところに人間性がでるのよ! 普段のスペースオペラへの対応も向上心があればもっと凄いことがいっぱい起きるはずなのよ! いい? 人間普段からボーっと生きていちゃダメなのよ! なにが自分のために、ひいてはスペースオペラのためになるのかはわからないのだから、人生毎日、毎時間、毎分、毎秒を向上心を持って生きるべきなのよ!」


 ブラック企業の訓示みたいなことを言うのやめてくれないかな?

 スペースオペラの部分を会社に直しても使えそうだな。


「……まあいいわ、晃君のラーメンが伸びてはいけないからこの辺にしておきましょう」

 

 まさかラーメンに救われるとは、人生何が起こるかわからないもんだ。


「テツジン、ラーメンを一杯所望するわ!」

「へい、麺の硬さは?」

「麺は柔らかめ、味は濃い目、油とネギは少な目」


 確固たる自信を言葉に乗せて言う。


 他はともかく麺柔らかめは意外だな。


「晃くんはわかってはいない」


 頭を振る女神。

 多分わからないほうが幸せだということはわかっているぞ。


「ラーメンは飲み物なのよ!」


 いや違うぞ。

 そんなにコブシを固く握ってもそれは違う。


「私も最初は噛んでいた、それでも10杯目を食べているときにふと気が付いたわ、これは飲み物だって。のど越し、そうよ、麺にスープを絡ませ、一気に飲むものなのよ。だからこその柔らかめなのよ!」


 ごめん、意味が解らない。


「なんでわからないかなぁ? 一瞬でなくなるから伸びる心配がないから最初からぎりぎりまで茹でるの。そうすることで、のど越しは良くなるし、胃の負担も少ないのよ」


 そんな新発見を語るように目を輝かせても困るのだけど。

 あと胃の負担を考えるのならば最初からよく噛んで食え。


「晃くんはわかってな……後にしましょう」


 俺になおも何か言いたげだったが、中断する。

 なぜなら、


「ヘイ、ラーメン一丁お待ち!」


 テツジンがラーメンを運んでくる。

 

 女神はたぶん神的な力で手をつかわずに一瞬で髪を結び、真剣な顔で箸を持ち、「いただきます」とつぶやいた後、食べ始める。

 香りを味わうだの、まずスープを飲むなどしない。

 宣言通り、麺を口に運び、……飲む勢いで食べていく。

 スープの熱さもまったく気にせず、とにかく一気にすすっていく。


「ふぅ」


 おそらく麺を全部食べ、いや飲んだ後、一息入れるための水を飲み、そして今度は残った具を食べ始める。

 こっちはゆっくりと味わうように噛みしめながら。

 そしてレンゲですくいながらスープを飲み、最後はどんぶりを持って一気に飲む。


「ごちそうさまでした」


 てか俺より後に食べ始めたのになんで俺より早く食ってんだろうか?


「何言ってるの! ラーメンは時間との戦いでしょう!」


 そうかなあ、ゆっくり味わって食えばいいじゃないか。

 ウチのニーナだって、麺類にはこだわりがあるがラーメンはゆっくり食べてるぞ。

 食べ方はなんだっけ?

 白ウサギに聞くとバリカタ、普通、多め、普通と教えてくれる。


「若い! ニーナちゃん、若すぎる! 私もそれは考えた。でも違うの! 最適解はそれじゃない!」


 と頭を振って嘆く。

 てかうちの子は若いというより幼いの部類だけどな。



あれ? 続・ラーメン回なのか?w


とりあえず明日は体調が戻ればラーメンを食べに行こうと思いますw

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