#253 想いは奇跡の鐘を鳴らす 6
白ウサギが持って来た塩を、「よいスペースオペラを」と言って消えた空間に投げつける。
「創造主に撒く人なんて船長が初めてじゃないですかね?」
女神が帰って落ち着きを取り戻したカグヤがポツリと言う。
本当にこいつはいざってときに役に立たない。
あの邪悪には本当に塩は効かないのか?
少しくらい清められないのか!
「塩や聖水に何の効果がありましょう。そういった不浄を払う最上位の方ですよ」
マグマ相手にマッチ棒程度では何の意味もないということか。
そもそもあれが女神を名乗っているのが間違っている。
やっぱり魔王説を提唱する。
「神とはそういう側面もありますから」
とあきらめ顔のカグヤ。
世の中は表裏一体。
本人は神罰のつもりが被害者からしてみたら悪魔の仕業に見えても不思議ではない。
さてどうしたものか。
「でも創造主、どうしてニーナに目をつけたのでしょうか?」
と不思議そうな顔をするカグヤ。
いや、それは不思議なことではあるまい。
「と、いいますと?」
ニーナは『かわいい』からな。
そりゃぁ、女神が目をつけてもおかしくないだろう?
ニーナに罪があるというなら『かわいすぎる』ということだ。
本当に困ったもんだ。
「……船長ってたまに頭の悪い親バカになりますよね」
失敬だな、事実ニーナはかわいいではないか!
「処置なしですね」
と何故か肩をすくめるカグヤ。
「ですが、さすがに創造主も子供相手にはひどいことをしないかと」
ドラゴン相手に50年調整室に閉じこめるヤツを信じろと?
カグヤは俺の言葉にうっと声を詰まらせる。
「確かにドラゴン相手にはアレですが、人間相手にはそこまでは……。船長だって無理やり宇宙に来ましたけど生活は困っていないでしょう?」
おいおい、引きこもり具合が足りないが?
「それはあきらめましょう」
予想していたのか食い気味に言われる。
……まあ確かに宇宙にいるというのに衣食住は問題なく、娯楽にも不自由はしていないのは認めよう。
だが厄介事が次から次へと。
「まあそれは快適な生活をおくるための仕事ですよ」
いやな仕事だ。
百歩譲って俺は妥協しよう。
だがあんな幼い子供を働かすなんて児童虐待だ!
断固、女神の魔の手から守るべきだ!
という事で早急に対策の検討をしたいところだが、……そちらは?
「この惑星フォースフルのドラゴンです」
「初めまして」
モニターに映っている着物を着た品のよさげな女性が頭を下げる。
何の用だ?
打倒女神と言うのなら大歓迎だ。
よろこんで知恵を貸すところではあるぞ?
「いきなり恐ろしいことを言わないでください!」
現状、最優先事項なんだがな。
やられる前にやるべきだ!
「無理ですって!」
じゃあ何の用だ?
「用と言うか、……創造主がいらっしゃるのに顔を出さないとクリドリのドラゴンのように叱責されるかと」
ああ、そういやそんなことがあったな。
あいつは本当に悲惨だった。
「ですけれど、お忙しそうだったから声がかけられずに……大丈夫ですよね?」
知らんがな。
「あの、そう言わずに何か助言をくれませんか?」
そんなこと言われても……運としか。
テツジンのとこのラーメンが美味かったら機嫌よくなって、お前のことを忘れるだろうが、口に合わなかったらイライラして「そういえばフォースフルのやつ、挨拶してこなかったな」と思い出しハリセン持ってやってくるかもしれない。
「そんな!」
悲壮な顔をするフォースフルのドラゴン。
まあでもヤクモのドラゴンよりはマシだと思うぞ。
あいつなんか、テツジンのとこに女神が来られた日には挨拶にいって、ご機嫌とって、暇つぶしの相手して、もしもラーメンが口に合わなかった場合一番最初にハリセンで殴られるのは奴だからな。
そりゃあ、いま気が気ではあるまい。
あいつ、テツジンのことをいいスペースオペラの種だって喜んでたけどさすがにこれは想定外だったろう。
かわいそうに。
「いえ、あいつもかわいそうですけど、私だって宙ぶらりんでかわいそうですよ!」
何回も言うようだが知らんがな。
無事すむことを祈っておけよ。
「祈る相手がハリセンもってやってくるんですよ!」
顔を抑えて泣き出すフォースフルのドラゴン。
ああ、そういやそうだな。
まあこれが救いになるかはわからないが、テツジンのラーメンは確かに美味かったし、ニーナに言わせれば「神を堕落させる一杯」だそうだ。
まあ何とかなるんじゃないだろうか?
「……そうだといいのですけれど」
堕落するより消滅させる一杯だったら俺も必死に祈ったんだがなぁ。
パソコンがやっと直って戻ってきました。
タダで直ってよかったw
これで環境がどうにか戻りましたので書きまくりたいところですが、このシリーズ書き終わってから少し燃え尽きたのかやる気が出ないのと、昨日、所用で長距離運転したせいか、体調が少し崩しております。
まあこのシリーズは長いので終わるまでには何とかなるでしょうw




