#251 想いは奇跡の鐘を鳴らす 4
ポーラたちを地上に降ろして、それから新ジュメルの機能があるメインユニットをイザヨイと連結させる作業に入る。
他にもシンが使っていたコンテナもあるが、そもそもそれは惑星フォースフルの皇族の試練用にあつらえられたものだったらしい。
襲撃から逃げてたまたま未知のゲートを跳んだものの、メインユニットは損傷が激しく、その部分だけを旧ジュメルが用意したのだという。
つまりその部分だけを返せばいい。
さすがにコンテナを3つも4つも連結するとゲートがさすがに気をつかうだろうが、1つくらいなら何とかなるだろう。
わざわざレーティアを乗せたままにして、カグヤと自動で跳んでもらう必要もないだろう。
いやそのほうが俺的には楽になるのだが、俺を引きこもらせてくれないのが2人もいると心労があるし、地上のニーナも心配だしな。
「私はこうなるとレーティアは降ろしてもニーナは降ろさないかと思ってましたよ」
とカグヤが言うが意図が理解できない。
「地上に慣れていない子ですから、もしものことがあったらまた地上が嫌いになるでしょう?」
まあ宮殿とかは未知数でダメかもしれないが、そうしたらホテルでも連れて行けばいいのではないだろうか?
前の惑星はそれで大丈夫だったんだろう?
「それはそうですが、船長はニーナに甘いですので不安要素があると手元に置いておきたがるかなと」
甘いというのは否定はすまい。
だが現在地上にはレーティアにニーナとポーラのウサギに、シンに貸し出したピンク、黒、オレンジがいるんだろう。
さすがの俺でも過剰すぎないかと思うくらいだ。
「そうですね、宇宙船さえあれば十分追ってこれるレベルです」
ああ、そこまでなんだ。
てか追ってこられても。
ホテルに缶詰めで何とかなるうちに帰ってくるさ。
そこまで行って帰るだけだとそこまでかかるまい?
「そうですね、惑星ヤクモ側にもう一度行ってもらってすぐそばにあるゲートを跳ぶことになります。ここからヤクモのゲートまで10日、そこから未発見のゲートまで1日、その後、惑星ジュメルまで4日というところでしょうか」
ゲートジャンプの後のオーバーブーストを計算に入れずにその日数なら往復で30日未満で帰ってこれるということになる。
それくらいならニーナも耐えれるだろう。
「何事もなければですが」
怖いことを言うなよ。
俺も一点、気にかかることはある。
「私もです」
とカグヤの顔に影が落ちる。
まあ新ジュメルを連れて行くのはいいんだ。
問題があるとしたら新ジュメルの本当の生息場所はそこでないということなんだけどな。
「私と船長が初めて会った惑星ワイズの行かなかったほうのゲートまでは遠いですねぇ」
ではどうするのか?
あのスぺオペ女神は新ジュメルにとりあえずこの惑星で待機しておけと言ってはいたが、状況が状況だけに俺が連れていくことについては文句は言わまい。
ただその後どうするかだが。
その場で待機させておけばいいのだろうか?
その辺の問題がまるで何も決まっていないと言うのがこの依頼の一番の難所である。
そしてそれを決定する存在に会いたくないというのが俺とカグヤの共通認識である。
「まあ全ドラゴンその気持ちなんですけどね」
察している。
ちなみに新ジュメルはなんて言ってるんだ?
「……それがですね、状況が状況ですので一緒に話してもらおうとさっきから呼び出しているんですけど、繋がらないんですよ」
俺のことをよく思っていなくても着信拒否しないで最低限の打ち合わせくらいは参加してもらいたいもんだな、社会人としては。
「ドラゴンを社会人扱いするのはやめてほしいんですけど」
ワンマン会社の社畜という扱いで特に間違ってないと思うんだよ。
「そう思うならもう少し私たちに優しくしてくれませんかね?」
同じ社畜だからといって仲間とも限らない。
お前らのせいでこっちが苦しむ可能性があるなら自衛するのが人として当然ではないだろうか?
むしろドラゴンを貶めることで俺の平穏が守られるのならば尊い犠牲ではないだろうか?
「船長はそういうところありますよね。それはともかくどうしましょう?」
どうと言われても、連結作業が終わったら即出発したいからな。
それまでに打ち合わせの1つもしておきたいところだが。
「まあ打ち合わせ自体は出港後でもできますけど、……新ジュメルがここまで通信でてくれないというのが不安になりますね」
この距離でいることが分かっているのに居留守つかうこともなかろうに。
「ですよね」
と俺とカグヤが頭を悩ましていると、
「いま新ジュメルは送っておいたわ」
と突然艦橋に現れた女神が言い放つ。
出てきました。
スぺオペクレイジーだの落ち担当だの言われている女神の再登場です。




