#248 想いは奇跡の鐘を鳴らす 1
焼きそばパンでニーナの目を輝かせ、そのあとゲートジャンプを久々にチャレンジ。
良いところを見せようと一発成功、出力80%で突入しポーラとニーナから尊敬の念を集めるが、
「やりすぎです!」
とカグヤになじられる。
俺はただ娘たちに父の威厳を見せたかっただけなんだけど。
かっこいいところを見せたくなってもしかたないだろう?
「その半分の出力で十分です! いきなり船長の異常行動を見せると常識が狂います。この数値は人類の到達できない領域です!」
一応、俺人類なんだけど?
「ゲートジャンプ能力と閉鎖環境適応能力はもう人類を越えています!」
とカグヤはなおも俺を責める。
ちなみにその横でレーティアがニーナに、
「マスターはたまに凄いからね。でもあれは普通はできないことなんだよ。カグ姉もいってるけど異常、本当に異常。だからお父さんは凄いと他人に自慢しないこと。あともしもニーナがするときは無理せずにやること。20%でも凄いことなんだからね」
とコンコンと語る。
ニーナは不思議そうな顔をしていたが何か悟ったのか、
「わかった」
と静かに頷く。
さてここは惑星フォースフル。
かつて出会ったシンビオス皇子の故郷である。
いや皇女か。
えっと名前なんだっけ?
「シンシア様ですよ、キャプテン」
とポーラが教えてくれる。
そんなんだったかな。
てか、今度会ったときもシンと呼んで良いものか?
「本人がそう言っていましたし」
しかしお付きとかがいたら無礼者と言われないだろうか?
「敬称をつけておけば問題ないかと。シン様で」
ふむ、ここはポーラの意見に従おう。
そもそもそれ以前にシンは生きているんだろうな?
犯人に殺されていたとか言わないよな?
俺の言葉にポーラは青い顔になるが、すかさずカグヤがフォローをいれる。
「それは大丈夫みたいですよ。今ジュメルから連絡をもらいました」
と新ジュメルとの情報連結が終わったことを告げるカグヤ。
そういえばあいつまだここにいたんだったな。
ウチのウサギどもがシンの護衛をしてジュメルがフォローすればまあシンも無事だろう。
というか、この星にもドラゴンがいるのならそいつは何しているのかと今になると不思議である。
「ジュメルと通信して直接聞きますか?」
向こうから連絡してきたのか?
「まさか」
俺の問いにドラゴンスレイヤーに好きこのんで連絡をするドラゴンはいないと言う。
そうですか。
まあ俺も嫌われている相手と無理に会話したいとは思わない。
まあドラゴンネットワークでお前を攻撃しているというのなら見せしめにこっちから連絡をしようか?
それくらいはしてやるぞ、むしろ徹底的に。
「幸いなことに私とジュメルは昔から良好な関係です」
そうか、それは良かった。
「ええ、本当に」
じゃあシンについて聞こうか?
「シンシア様は帰国後、熱狂的に歓迎されました。皇族3人が失われた事故の悲報はまだ風化しておらず、王女の奇跡の生還はセンセーショナルな話題です」
この星では皇族は人気があるのか?
「開かれた皇室で国民から高い支持を受けております」
そうかい。
「シンシア様は船長のアドバイス通り、宇宙船から民に自分たちの身に何が起こったのかを告げました。その後宇宙港に入港し、ウサギを伴って地上に降りていきました」
さすがにその状態でいきなり暗殺はないよな。
「はい。出迎えた多くの衆人環視の中でそれはできなかったようです。その後迎えに来た叔父に連れられて皇居に移動しました」
叔父と言うと?
「崩御なさった皇帝の実の弟です。事件以降、政務は第3皇位継承権のその方が取り仕切っていました」
1位が亡くなった皇子、2位がシンってことかな?
「そうです。ちなみに母君は事故以降心労で倒れていて、人前に出ていなかったそうです」
もうそれだけ聞くと叔父が一番怪しいんだが?
「正解です。皇位を継ぎたくて暗殺事件を計画し、事故として処理したそうです。母君の心労も薬物によるものだったそうです」
まあこういっちゃなんだが、オリジナリティーの欠片もないな。
俺の言葉にカグヤは頷く。
「そうですね。あとどうしようもなく小物ですね。ゆっくりと行動する余裕もなかったのでしょう。皇居についたとたん、差し出した飲み物に薬物を混入させました。事前に皇居に潜入していたオレンジウサギの手腕により事なきを得た上に証拠集めもこなし、叔父の罪は明るみとなり、あっさりと拘束されました」
やるな、オレンジ。
「オレンジはハイスペックなんだよ、マスターが使ってないだけで」
それは申し訳ない気もするが、平和であることを責められても。
てかレーティア、お前はそのハイスペックなオレンジに金魚すくいの店番をさせようとしていたのか?
新章開始です。
「女神来襲」とか「ドラゴンの悪夢」と思われた「復讐を誓う王子と怠惰なドラゴン」編のゲストキャラが再登場します。
この小説的に復讐はさらっと終わらせましたw




