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#26 常識の時間3 (商材購入のイロハ)

 ファーストコンタクトから惑星到着まで10日ほど。


 その間すべきことはというと、普通はこれからいく惑星のコンテンツを確認して売れそうなものがあるかの品定め。


 食糧、資源、売れそうな工芸品やら民芸品などを物色。

 一点物を欲しがる人も少なくなくこの惑星ではありふれていても他の惑星では真新しい、この惑星では古くさいが他の惑星では斬新ということは多々あるらしい。

 その辺を見定めるのがセンスというよりは運とあとは現地の人とのコミュニケーションということだ。


 とはいえ物品の現物の販売はあまり盛んではない。

 

 データでやり取りできるコンテンツと違い、物品のやり取りは発送手配をする必要があるし、その惑星にいる間にやり取りしなければならないので手間だ。

 代理店を頼めば儲けが減る。

 通信可能な場所からオークションやら通販サイトにのせ、宇宙港に着くまでに売れればいいかなという感じらしい。


 とりあえず現状、俺の資産はワイズのコンテンツとワインくらい。

 データはすでにアップロード済み。

 もうすでに売れ始めているそうだ。

 

 ワインを公営と民間のオークションに1本ずつ出すようにした。


 購買としては売れ行き次第にもなるが米は最優先で手に入れるとカグヤは言っている。

 この惑星には魚を刺身で食べる習慣はないが、生卵の食文化はあるので玉子の入手までは確定らしい。

 他にも地上で欲しいものがあったら購入するので物色するようにとのこと。

 あとコンテンツも同様だ。



 ということでとりあえず艦橋から退出する。

 喫茶室でコーヒーでも飲もうかとも考えたがとりあえず自室に直行。

 リビングのソファーに座り、白ウサギからタブレットを受け取り、とりあえずカグヤに言われた通り物色を始める。


 画像がある家具や装飾品は良し悪しは別としてなんとなくわかる。

 だが手製の工芸品や民芸品はさっぱりわからない。

 俺からしたら鍋敷きにしか思えないものが鏡台だったり、団扇かなと思ったら日傘だったりする。

 俺的にはどういう構造かが気になるが売り物としてはどうなのだろうか? 


 コンテンツにいたっては完全にお手上げだ。

 映画やドラマ、アニメなどの映像系はあらすじ見れば多少は理解できるが、文化的な芸だの笑いだのはさっぱりわからん。

 こういったものはその土地で生活していないとわからないものではないのかと。


 しかしこの惑星ですでにワイズのコンテンツが売れているということは他星の文化を積極的に取り入れようとしているのだろう。

 そうなると俺の考え方が保守的なのかも知れない。

 日本だって海外の映画や音楽や食文化などに触れる機会は多いし、そちらの方が好きだという人もいる。

 頭から否定してはいけないだろう。

 とはいえどうしても暇をもて余しているから他星の文化を求めるのでは? という考えが頭から離れないが。


 さてどうしたものかと思案しながら白ウサギからコーヒーを受け取る。

 最初のころと違って、


<ミルクはどうですか? 砂糖がいくつですか?> 


 と言わなくなった。

 俺がブラックということは理解してくれたようだ。


<お代わりどうですか?>


 との攻撃は今も続いている。

 そんなのよりこっちの相談に乗ってくれないか……、

 え?

 のれるの?

 じゃあコンテンツはどうすればいい?


<この惑星から他の惑星に出ていないものを中心に購入するべきかと>


 なるほど、かぶっていなければ売れる可能性が出てくると。

 また前回来た人が買ったもので連載中のものなどは続きを買えば売れる可能性がある。

 その場合は一応最初から買っておけばセット販売もできる、新規購入者も見込める。

 確かに他の惑星で完結してないコンテンツだと先が気になってもどうしようもないからと完結したコンテンツでないと買わない言う人もいることだろう。

 でもそれってどうやって調べるの?


<販売履歴から検索をかけられます>


 そんな方法が。

 よし白ウサギよ、任せた。

 まず絞り込んでくれ。


 検索の結果一気に減ったコンテンツ。

 これならあとはワイズコンテンツの売り上げ次第だが上から買えるだけ買えばいいだろう。


 さて今度は物品のほうだが、これは今のところ倉庫に空きはある。

 適当に買えばいい。

 次の惑星で売れなくてもその次、またその次で売れる可能性があるのだと。

 

 そういう考えが倉庫を圧迫し、最終的には居住区の空き部屋まで倉庫になるんだろうなと思うのですがね。

 不良在庫の怖さを知らないな。

 しかしながら一度は一連の流れを経験しないことにはどんなものかがわかりにくいのは確かだ。

 なるべく小さめのものを買う。

 大き目のものでも過剰在庫にしないように点数を抑える。

 そういった感じで選ぶとする。


「ちなみにこういったオルゴールなのだが、星によって定番の音楽が違うだろうから売れないのかな?」


 俺の問いかけに白ウサギは音楽だけ鳴るタイプは売れにくいが、小物入れやインテリアとして使えるタイプなら珍しいので買い手がつく場合があるとのこと。

 また原曲に興味を持つ場合もあるので原曲も売れるようにしておくと、さらにその作家の他の曲もと関連をそろえておけば売れる可能性がある。


 なるほど。

 一手二手先を読んだ行動だな。

 しかしそこまでうまくいく可能性はレアケースだろう。

 これを無駄と割り切るか合理的と判断するか。


 今回の場合はオルゴールが売れても少額で、音楽が1曲売れたって同じく少額だ。

 切り捨てたってかまわない。


 ただ普段からこういうことが考えられるかが大きい額のものを売るときに役立つともいえる。

 あとこういった細やかなフォローがリピーターになり、良い口コミが広がるかもしれない。


「じゃあこれと同じ曲のオルゴールを検索かけて」


 同じ曲で統一すれば、買う曲も1曲で済み効率的だ。

 CDやレコードの文化もあるようだが、星によって規格が違うので管理頭脳によるデータ配信が基本で本当に良かった。


<そのオルゴールはやめておいたほうがいいかもしれません>


 俺が順番にチェック入れていると白ウサギが忠告してくる。


「なんで?」


 俺の疑問に武器と判断される恐れがあるためだと告げる。

 船の錨のような形をしているオルゴールで、どこから音が鳴るのだろうと気になったから購入しようとしたのだが、鈍器と見えなくもない。

 材質と形状によっては星によっては武器と判断され軽くて罰金、重くて入国禁止になるそうだ。


「今更だけど輸出入禁止のものって?」


 星によって規定は様々あるが共通認識として武器、中毒性のある薬物、生態系を乱すので動植物が一般的らしい。

 納得できるラインナップではあるが、武器の範囲が広すぎないだろうか?


「これでだめなら野球のバットや花瓶とか包丁もダメじゃないか?」


 俺の疑問だがこのラインナップだとバットが金属ならNG、木製はOK。

 花瓶も陶器やガラスならOK。

 包丁にいたっては規制のある星は少ないという。


 ……刃物はOKで鈍器がだめってことか? 

 なんか逆じゃね?


<着ているスーツは刃物を通さず鈍器による衝撃を吸収しますが、むき出しの頭部だけはどちらも防げませんので>


 首から下を覆う宇宙服ってそんな高性能だったのか。

 ただ温度管理できるだけではないんだ。


<頭部への攻撃が感知されますと肩のところの噴射孔より指向性の空気が発射されます。軽いもの強度の低いものは頭部に当たることはありません>


 だから金属で重たいものは鈍器扱いか。

 輸入物のインテリアで殺人ということがままあるそうだ。

 ……でもそうなると木製バットもダメなんじゃね? 


 木製なら折れるから大丈夫? 

 おい、この穴からどれくらいの風が出るんだよ。

 そっちのほうが凶器じゃないか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 異星間でも似たような文化や風習がある設定とか 主人公の物事決めつけをせず、そういう事もあるのねで納得する性格が好みです
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