#247 続・とある父のぼやき
遅めの朝食をとろうと食堂に出向く。
「もう昼前なんだけど?」
と、なぜかレーティアに生活習慣についてなじられる。
いや、一日の最初に食べる食事が朝食といっても問題はないだろう?
そもそも宇宙の生活において明確な朝があるのだろうか?
地上と同じように24時間サイクルで生活する意味があるのだろうか?
1日が30時間であったとしてもなにか問題があるだろうか?
「またおかしなことを。カグ姉にニーナとの時間が少ないと愚痴っていたけど、マスターの不規則な生活も原因があるよ」
などと意味不明の証言をなおも繰り返す。
……そういえばポーラと会う時間も減ったのかな?
「あのねえ、マスター。ニーナはポーラ姉と一緒に規則正しい生活をしているんだよ。今までは人と会う選択肢がマスターしかなかったからポーラ姉もマスターに積極的に会いに来たけど、ニーナがいるとそっちが優先になるからそりゃぁ、自然と会う時間が減るさ」
そうか、こういうのが娘の自立というのかな?
どんな形であれ成長するなら喜ばしい事だ。
「僕は正直、マスターに自立して欲しいんだけど」
俺は黙って部屋に引きこもれるくらい自立しているだろう?
「それは自立ではないよ!」
あと俺は社会人を20年もしていたから一般的には自立をしていると思うんだが、実家暮らしでもなかったし。
「僕はマスターが管理頭脳のない世界で1人で生活していたっていうのが本当に信じられないんだけどね」
しかたないだろう、社畜という選択肢しかなければそりゃあ生活するよ。
人間追い込まれたら何でもできるよ。
できれば追い込まれずに引きこもりたいがね。
「日本のことを調べると確かにマスターの言うように追い込まれても働く人たちをよく見るけどさ、他の国はバカンスとかシエスタとかしてるのに何で日本人はそんなに追い込まれてるの?」
日本という国の闇かな?
「あとマスターは少々いやかなり追い込まれているときのほうがいい仕事するというのが、僕とカグ姉の分析なんだけど」
その分析、もう一度やり直せ!
ちなみに娘たちは?
「カラオケをそろそろ終了して食事にするみたいで、今こっちに移動中。せっかくだから一緒に食事してよ。コミュニケーションとれるチャンスだよ。」
望むところだ。
じゃあ朝食の注文だけしておこう。
なあピンク、どうだろう、ここは焼きそばパンなどにすればニーナは食いつくと思わないか?
「マスター、ちょっと必死すぎない?」
俺、大人相手ならなんとかコミュニケーションとれるんだけどさ、独身で子供と接したことがないからイマイチ感じとか加減がわからなくてさ。
とりあえず「お父さん、うざい」と言われないように生きていこうと思っているんだ。
「……まあ頑張ってよ」
俺の熱い想いにレーティアはなぜか肩をすくめる。
「ちなみにポーラ姉には? 食いつくようなものは用意しないの?」
必要かな?
じゃあフィッシュバーガー的なものを。
「適当だね」
的確だと思うんだが?
あと朝食にはちょうどいいんじゃないかな?
「娘たちは昼食なんだけど?」
気にするな。
しかしあの子達はカラオケまだしてたんだ?
「いい趣味だよ。ストレス発散にもなるし」
そうかい。
「マスターも歌えとは言わないけど見に行ったら? ニーナとの時間が増えるよ」
レーティアの言葉に俺は心底イヤな顔をして手を振る。
やだよ。
盛り上がっている場所に冷めた人間がいるっていうのは感じが悪いぞ。
「子供が楽しそうに歌ってるのを見るだけでも親としたら楽しいんじゃないの?」
確かにそうかも知れないが、あんな場所にいると俺的には社会人時代のトラウマが刺激されて逆に気分が悪くなる。
俺だけが悪くなるならともかく、ポーラやニーナまでイヤな気分にさせることもあるまいよ。
「そう言われるともう何も言えないね」
とあっさりと引き下がるレーティア。
この件に関しては素直というか引き際が早いというか。
「言いたいこともなくはないけどさ、マスターの闇が深そうだからもういいよ」
お察しの通りだ。
カラオケは嫌な文化だとは思う、だがあの子たちはどんな歌を歌うのかが少し興味はあるな。
ポーラなんか讃美歌なのか?
「神の信者が讃美歌って発想は貧困だよ。あの星だって讃美歌以外の歌はあるし、惑星パールの友達の王女様たちに勧められた男性アイドルグループの歌や女性シンガーソングライターを歌ってるよ」
エクレア、イザベラと仲良くしてたからそういうのも教わっていたのか。
「ニーナはジャンルを問わないね、惑星ラフェスルの歌を片っ端から聞いてたみたいで、気に入ったのを歌ってる」
一人放置されて暇だったからかな。
「あとマスターの影響じゃないのかな? たまに日本のアニソン歌ってるよ」
ああ一時期俺の部屋に入り浸ってたからな。
一緒にアニメを見たもんだ。
……もうニーナ、俺の部屋に来ることないのかなぁ。
もう一緒にアニメ見ないのかなぁ。
あまり対戦ゲームはしないけど、あの子とならゲームもいいかもしれないなぁ。
「え? なんでいきなり気分が落ちるの? マスター、ちょっと情緒不安定じゃない?」
と目を丸くするレーティア。
いや、子育てって難しいよなあと。
「僕はマスターの相手が一番難しいよ!」
明日より新章「想いは奇跡の鐘を鳴らす」が開始されます。
24話と竜玉編を超えて最長となりました。
外伝のほうを含めて少々内容を盛りすぎましたかな~と思いつつも書いてて楽しかったのでついw
外伝「ファンタジー・パニック!」を連動して投稿するつもりがパソコントラブルもありうまくいきませんでしたが、「ファンタジー・パニック!」が明日終了で、その明日からなぜあれが外伝の位置づけなのかという話が始まるのだからまあ良しとしよう。
批判はあるかもしれませんがこういう展開が好きで、書いてて楽しかったのです。
できればお付き合いください。




