#245 続・ニーナの帰還
しばらく帰ってこないかと思われたニーナが3日も経たず帰ってきた。
これで禁酒も解禁かとほっとする一方で少し不機嫌そうなニーナに少々不安を覚える。
どうした?
「焼うどんは期待に反してお気に召さなかったようで」
いや、レーティアよ、俺でもそれくらいは察しているぞ。
問題はそんな不機嫌になるレベルのものだったのか?
「僕は味覚がないからわからないんだけど、どの店も口コミはよかったんだけどね」
まあ味覚は人それぞれ違うし、サービス1つで味の感じ方も変わるからな。
口コミが絶対ではないことは認めよう。
「でも指標にくらいはなるでしょう?」
まあ確かに。
でも大外れでニーナが不機嫌だと?
「そういうこと。おいしいと思い込んで行ったからガッカリ感が大きかったようで」
なるほど。
ニーナ、すまないな。
それは悪いことをしたな。
余計なことを言わなければよかった。
「お父さんは悪くない」
俺が頭を下げるとニーナは頭を横に振る。
しかしニーナには合わなかったか。
似たようなもんだから気にいるかと思ったんだが。
「お父さん、それは違う」
ニーナがはっきりと強い口調で否定する。
違うとは?
「焼うどんでは戦えない!」
いったい何と戦う気だよ?
「食感は悪くはなかった。でも麺が太い分ソースとの絡みが悪い。焼きそばのほうが強い」
この子のボキャブラリーは少しおかしいな。
ニーナよ、食べものに強い弱いとか戦う戦わないは使わないぞ。
「でもお父さん、焼きそばは天にすら届きうる」
なんかおかしなグルメ漫画でも読んだのか?
俺の手持ちにはそんなものはなかったはずだが、他の星のコンテンツにあっても不思議ではないけどさ。
ちなみに焼きそばが天に届きうるなら、この前食ったテツジンのラーメンはどういう位置づけだ?
「あれは神を堕落させる一杯」
そうか、そいつは凄い。
でもこの宇宙の女神様はもうすでに堕落しているようなもんじゃないのかな?
「醤油とんこつは無敵、ソース焼きそばは最強」
そうかい。
一応確認するが俺たちは今、食べ物の話をしているんだよな?
「そう」
ニーナは真顔で頷く。
どうにも称賛の単語が聞きなれないから何か違うことを会話しているのではと不安になったよ。
しかし焼うどんと言ってもソース以外にも味付けはないのか?
うちの星では醤油味だのカレー味ってのもあったけど。
「……お父さん、それは聞き捨てならない!」
そうなのか?
焼きそばだって塩焼きそばとかあんかけとかなかったか?
「……ニーナ、知らない」
俺の言葉になぜか絶望的な顔をするニーナ。
「レーちゃん?」
「……なくはなかったよ。ラーメンやパスタなんかは食べ方にバリエーションがあって、ニーナだって色々試したじゃない。ラーメンなら味噌、醤油、塩、とんこつ。パスタならカルボナーラやらミートソースやらって感じで」
「うん」
「うどんや焼きそばはマスターの星ではバリエーションがあるかもしれないけど、この星ではかけうどんは醤油味になるし、焼きそばや焼うどんはソース味がメインなんだよ」
この星ではカレーうどんや味噌煮込みうどんは食えないのか?
「なくはないよ。だけど主流じゃないので専門店はないかなと。店のメニューにひっそりとあるって感じで」
とレーティアが説明してくれる。
ゆえに焼きそばを食べに言ったら具材やソースの味が違うが似たようなものが出てくるという。
なるほど、ソース味ばかり食べているとポーラが飽きたというのも納得ではある。
「……レーちゃん、お店検索。ギリアムもう一回降りる準備。あとホテルの予約」
この子は俺と同じ引きこもりではないのか?
なんだろうね、このバイタリティー。
しかも管理頭脳の使い方に慣れるのが重要だとかカグヤが言ってたが、もうすでに俺より扱えてないか?
「いやいや、マスター! しみじみしてないで止めてよ!」
いや、別に急ぐ旅でもないから好きにしてくれてもいいんだけど?
「いや、さっきも言ったけど主流じゃないんだよ。それならウチのピンクのレシピのほうがまだバリエーションがあるよ」
ああそうかもしれないな。
あとそばめしとかオムそばとかもあるぞ。
「――!!」
俺の言葉にニーナがピタリと止まる
「お父さん、それおいしいの?」
焼うどんがおいしいといった俺の味覚を信じられるのか?
自分で食べて確かめなさい。
幸いにも時間はたっぷりあるからな。
「わかった」
とニーナが頷くのを見てほっとした表情のレーティア。
でもこの展開だと俺がずっと焼きそばにつきあわないといけないのだろうか?
俺、なんだかんだでカップ焼きそばで満足してた人間なんだけど。
ラーメンに続いて焼そばを布教しているわけでは決してないw
焼そばを食べようと店に行こうとして、混んでいたので隣のラーメン屋で昼食をとりました。
最近外食はラーメンしか食べていない気がしますw




