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#242 ケーキ談義 後編

お待たせしました。

更新再開します。



 そういやケーキの話だったっけ。

 いまさらいるか?


「まあせっかくネタ振りしたのですし聞かせてください」


 まあいいか。

 たしか11月ごろの話である。

 源泉徴収の準備を開始したり、税務署が開催する説明会に参加したり、そして地獄の社員全員の年末調整の対応・計算と一年で最も忙しい時期がやってくる、そんないやな季節だ。

 とはいえその月の給料計算も終わり、仕事がひと段落ついたころだった。

 俺は休憩室で温かい缶コーヒーを飲んでいた、現実逃避を兼ねて。


「先輩はクリスマスケーキ、もう注文しました?」


 そうしたらその当時よく話していた、たしかまだ20代の後輩(男)が近寄ってきてこう言った。

 弊社クズノミヤ、こういうことを良いところと言ってもいいのかははなはだ疑問というか情けない話なのだが、季節のイベントの商品にノルマはない。

 お中元にお歳暮、クリスマスケーキだのおせちだの土用のウナギだの恵方巻など世間様には多々イベントがあり、場合によってはノルマがあるようだがウチにはなかった。

 社員に休みも働けということはあったが、金を払って何か買えと言わないのは、もしかしたら美点なのかもしれないなと、今にしてみると思う。

 まあ俺は金を払ってもいいから休ませてくれと思ったことは多々あるが。


 とはいえウチの会社にノルマがないからといっても、家族の仕事先のノルマが的な感じで、しがらみから買わなければならない、もしくは売らなければならないということはよくある話ではあった。

 俺はてっきりその手のだろうと思っていた。

 彼女もいないクリスマス、仕事が終わったらいつも通り寮に帰って引きこもり。

 正直クリスマスケーキなど1人では食べきれないのだが、ノルマというなら協力するのもやぶさかではない。

 アイスクリーム的な日持ちするものがあればいいのだが。

 ということを後輩に伝えたら、


「へ? 何の話です?」


 と後輩は真顔で俺に聞き返す。


 何の話ってクリスマスケーキの話じゃなかったっけ?


「そうですよ、クリスマスケーキです。予約しました?」


 こうなると純粋な話題だったようだと判断した俺は、人生でクリスマスケーキなど予約したことがないことを正直に告げる。


「ちょっと待ってください! クリスマスですよ!」


 心底びっくりした顔で俺を見る後輩。

 それがどうした?


「ケーキ、食べないんですか?」


 好きこのんでは?


「クリスマスと誕生日はケーキを食べていい日でしょう?」


 それ以外でも食ってもいいと思うぞ。

 よしんば各ご家庭の事情で子供の時はそうかもしれないけど、いいおっさんだぞ、俺たち。

 稼いでるんだから好きな時に食えよ。

 と俺の言葉に、それはそうだがこの時期だけしか食べれないケーキがあるとか、そういうのをカタログを見て選ぶのが好きだなどと言われた。

 まあ人それぞれ色々あるわなと納得した次第ではある。


「で、どうしたんですか?」

 

 どうしたもこうしたも、その場はそれで終了だよ。

 それから数週間後の話に飛ぶのだが、外回りに出た時のことだ。

 たまたまケーキ屋が目についた。

 金に余裕もあったし、お土産とこれからの忙しい季節の陣中見舞いを兼ねて事務員さん用にケーキを購入した。

 もちろんついでに後輩用のケーキも購入した。

 色々悩んだがカップに入ったスフレチーズケーキを人数分。

 帰ってから早速女性陣に配って感謝され、さて今回の本命の後輩に持っていったのさ。

 そしたらどうなったと思う?


「そりゃあ普通、感謝されるのでは?」


 俺もそう思ってたんだよ。

 いや感謝されたいという欲求があったわけではないが、ありがとうの一言くらいはあってしかるべきかとは思ってんだよ。


「なかったんですか?」


 むしろ怒られた、というか蔑まれた?


「……何でです?」


 こんなみすぼらしいのはケーキじゃないって言われて。


「どういう意味です? 女性陣には感謝されたんだからそれなりに普通のケーキだったのでは?」


 どうにも大きさがお気に召さなかったようだ。

 後輩にとっては年に二回、クリスマスと誕生日に食べれるケーキは1人でホールで食べてよいものだったらしい。

 だからカップケーキなどはケーキのうちに入らない、彼にとってはみすぼらしいものだったらしい。

 味は同じなのにな。


「とどのつまり質より量だったのですか?」


 受け取った感じでは見た目の華やかさが重要だったようだが。


「なるほど。それでどうしたんです?」


 そりゃあみすぼらしいって言われて、それでも食えとは言えないからスゴスゴと持って帰ったよ。

 自分で食べてもよかったんだが、近くにいた若い女性社員にもう1つ食べるかって聞いたら、


「私を太らせる気ですか!」


 って怒るくせにしっかりと持って行った。


 ということで女性の気持ちどころか、男性の好みどころかすらわからない俺がケーキを食べて一体何の助言ができようか、という話である。


「でもそれって味は関係ないですよね?」


 それはそうだが、ピンクが作る以上ある程度の品質は保証されているだろう?

 そうなれば俺にとっては甘いものなどだいたい同じだし。

 見た目の華やかさとかも関係あるんじゃないかな?


「なるほど。しかし長々と聞いてきましたが、船長って訳のわからないことに遭遇しすぎではないですか?」


 そのよくわからないことの最たるがこのスペースオペラじゃないのかな?




パソコンが壊れるというのは本当に厄介ですね。

ここ数日かなりバタバタとしていました。

心配してくださった方、アドバイスをくださった方ありがとうございます。

活動報告にも書いていますが、結局一番金銭負担のない方法にしました。


パソコンを買い替えるだけの余裕が欲しい。


何日も引っ張るような話でもないのに結果的に引っ張ってしまったケーキ回。

ほぼ実話ですが、いまだにクリスマスケーキを買わないくらいであんなに奇異なものを見る目で見られたのかがわかりません。

クリスマスにケーキを予約しなくても別にそこまでおかしいことではないと思っていたのに、世の中というのはいろいろなことがありますね。

ウチの船長ではないですが、パソコン買うことに躊躇しない貯蓄があれば引きこもりたいところですw

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― 新着の感想 ―
[一言] 本当に人としてナニかが欠落した人ばかりだったんですね…周りには… どんなものでも頂いたら感謝するのが日本人としての常識かと思っていたが… 特異点かなにかだったのかな?w
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