#241 ケーキ談義 前編
「船長、ケーキはいかがですか?」
といつものように引きこもっているとカグヤがいきなり言ってくる。
俺にか?
そんなのはニーナやポーラに食べさせろよ。
あの子達が地上に降りて何だかんだで5週間は経っている。
そろそろ帰るという連絡があったが、ニーナは今回はずいぶんと頑張っているな。
「食べ物が気に入ったのと、景観のよいホテルから外をずっと眺めているそうです」
なるほど、それなら温度変化はなく、匂いも気になるまい。
いやだが、1人ホテルから出ずに窓から外を眺めるって放置子のように思われないか?
大丈夫か?
「まあレーティアもいますし、時々はご飯を食べに外に出てますから」
いやまあ大丈夫ならいいんだが。
しかしそれは地上に降りて成功と言えるのだろうか?
まあいいや、それでなんでケーキなんだ?
「ピンクウサギが帰って来たときに食事のレベルが下がったと言われないようにレシピを見直しておりまして」
この前のテツジンの件でラーメンを絶賛したものだから、プライドを刺激されたか、はたまた危機感か、レシピどころか調味料から見直しているという。
何もそこまでしなくともと思うがな。
ピンクの作る食事は十分にうまいんだから。
あと人間には作るものとの差異があった方がニーナは地上に降りる目的ができていいのだと思うんだがな。
「それは手を止めてよいという理由にはなりませんし」
そんなもんかね。
それで今はケーキの研究していると?
「ニーナに食べてもらうスイーツも日々品質の向上せねばなりませんから」
そうですか。
しかしケーキか。
「お嫌いですか? それともなにか持ちネタが一つ二つありますか?」
ネタって。
……まあ、あるけどさ。
「振っておいてなんですけどあるんですか?」
たまたまあった。
まあこの手のは人生経験をいかに小ネタにすることができるかってだけで。
日々あった何気ないことや疑問に思ったこと、はては自分の不幸を笑い話として構築することで話題の引き出しを増やさなければならない。
「何のためにです?」
人と円滑に話すためかな。
生前、総務なんかしているととにかく人に会うからな。
自社、他社問わずひっきりなしで、初対面の人も数多くいる。
そんな中黙っていては仕事にならない。
相手がしゃべる人なら相づちをうち、しゃべらない人ならとにかく話しかける。
そうでなくとも総務というのは嫌われているし、さらに人事はなおさらだ。
生産性がないのに毎日座ってパソコンを叩くだけで給料がもらえる部署だと思われていることが多い。
しかも楽であるという印象すら持たれている。
そんなことない、つらいんですよ、これがまた。
無駄飯ぐらいだの、現場は忙しいのにアレしろコレを提出しろって言うだの言いますが、しかたないじゃないですか、会社の規定なんですよ、法律なんですよ!
いずれAIに仕事を奪われるだのよく陰口を叩かれたが、しかたないじゃないですか、まだ奪われてないのだから。
皆さんは社外への仕事お疲れ様です。
でもね、総務だって社内の皆様へのサービス業みたいなものなんですよ。
いないと給料の計算すらできなくて支払えないんですから、そんなの困るでしょう?
と常々思っていた。
現場は忙しいのに人事は人を補充してくれない。
――したいのは山々です。ただ給料が安いから募集をかけても来てくれないんですよ、クレームは経営陣に言ってほしい。
人がいないから残業で対応しているのに、残業をするなという。
――国の働き方改革に言ってください。
こんな会社潰れてしまえ。
――同感です。
だからまあ少しでもこちらから会話して面白いことをいって相手を和ませ、悪い人じゃないと思わせなければならない。
僕は悪い総務部ではないよ、的な。
そうすることで円滑に仕事ができるというものだ。
そうでなくとも上からは理不尽なパワハラを毎日受けまくっている。
そのうえ現場から嫌われると八方ふさがりである。
ならば例えピエロのように無様な姿をさらそうとも笑いさえ取れればそれでいいじゃないか。
自分が少しでも楽に仕事をするくらいなら恥くらい晒そう、ああ晒してやるさ!
俺の生き様を、むしろ死に様をみろ!
「なかなか壮絶です。よくそこから詐欺師になりましたね?」
お前が言ってるだけで俺は自分のことを詐欺師とは認めていない。
「まあそれでも話術はそこで磨かれたと。そしていろんなタイプの人に会うから対応力も磨かれたと」
まあそうだな。
「つまりブラック企業の総務部は詐欺師育成機関ということでしょうか?」
全国の総務部勤務の方に謝れ!
まあ特殊なのは俺だけだよ、きっと。
引きこもりが人事なんかするからおかしいことになるんだよ。
いかに早く帰って引きこもろうとしか考えてなかったからな。
他の人は違うんじゃないかな?
自分のことが手一杯で他人の分析まではしてないけどさ。
とまあ話が逸れたが、生きるためには自分の不幸すら笑いのネタにすべく日々努力はしていたと。
幸いにも俺は運が悪いからな、そういう不幸の種には事欠かなくて。
「いえ船長、話が逸れたままです。ケーキの話をしてたんですよ」
総務部のことを書いてたら勢いがついてケーキのことまで辿りつきませんでした。
皆さんはどうかわかりませんが、総務部が嫌いな方がいらっしゃいましたら少しは優しくしてあげてくださいw
悪い総務部ばかりじゃないんですよw
さて困ったことになりまして、パソコンが壊れました。
画面の下半分が見えません。
もしかしたらドラゴンの呪いかもしれません。
ストックのほうはバックアップできたのですが、予備のパソコンではWordがなくて投稿できません。
今、友人宅で投稿しています。
仕事でも使うのですぐにでも買い換えたいのですが、先立つものの関係で最短で月末になります。
申し訳ありませんがしばらく休ませてください。
6/30には再開したいのですが、パソコン次第とさせてください。
いま調子よく新章を書いていただけに執筆も厳しい状況で残念です。
本来ならその新章と同時に公開しようといま投稿準備中の作品があります。
今日から先駆けて投稿しようかと思います。
親子愛がテーマのファンタジーで、異世界転生でもなく、作風も今風でなく、文体も違い、女の子が主人公とこの小説の読者層とかけ離れているかもしれませんので「読んでください」とか「義理でブックマークしてください」とは言えません。
ただ私が言えることは、その作品は日下部船長が女神に拉致されて数か月たった地球が舞台ですとしか。
ええ、地球の話ですよ。
ファンタジーですよ。
地球のドラゴンはそんなことして大丈夫なのか?
それについては新章で書く予定です。
もしも興味があればご覧ください。
ファンタジー・パニック!
https://ncode.syosetu.com/n7240fo/
両方読んだ方が「はぁ?」とか「ええ~」とか「台無しだ!」とか思ってもらえるように頑張りますw




