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#235 血は水よりも濃い 6

「でもおじさん、トークがおかしいね。ちょっといいよ、マジでいい」


 おかしいかなぁ?


「おかしいよ、変だよ。でもそこがいい! やっぱ人間笑いがなきゃ。つまらない、くだらない、オチもない。そんな男に比べたら全然いいよ、胸張んなよ!」


 この世の中、笑い以外にも大事なことは山ほどあるぞ。

 でも君にとってはそれが最上級の誉め言葉なんだろうということは理解しているつもりだ。

 ここは素直にありがとうと言うべきかもしれないがな。


「なになに? アタシのことをわかってるよって感じは? なんでなんで?」


 君の親父と性格がそっくりな友達が俺にもいてな。

 子供のころからの付き合いだったんだが、似たようなことを若い時に言ってたなあと思ってな。

 懐かし過ぎて気分が悪いくらいだ。


「……親父と似てるって言われるの好きくない」


 正確には俺の友達と似てると言っているわけだけどな。

 話を振られたらボケろ。

 ボケられたらツッコめ。

 オチをつけろ。

 いじられたらおいしいと喜べ。

 ネタは拾え。

 勢いには乗れ。

 等々、なかなか辛い日々だった。


「……? 普通のことじゃない?」


 周りが芸人ならな。

 普通の学生がそんなことを求められても困るんだよ、それも同級生に上からな。

 金をもらってるわけでも、笑いを取ろうという覚悟もない素人にバラエティーの司会者のノリで来られても対応できないって言ってんのさ。


「でも楽しいじゃん」


 瞬間的にはな。

 だけどずっとはきついのさ。

 見ている分には楽しいかもしれないけど、エスカレートしてもっともっとと要求されたら普通の人間は対応できないし、耐えられない。

 ああいうのは訓練された芸人のお仕事です。

 ただ笑われているように見えるけどあれも大変なんだよ。

 素人が司会者ぶってやるものではありません。


「じゃあなに? つまんない話を聞いてろって言うの?」


 程度の問題かなと。

 ある程度のボケやツッコミを求めても強要してはダメかなと。

 人間には向き不向きがある。

 くれぐれも自分が司会者としてまわして、お前たちをアタシが面白くしてやっていると思ってはならない。

 ノリが悪いと思われたくなくて、皆が君にしぶしぶ付き合ってくれているのだということは忘れてはならない。

 独りよがりだと最終的には誰も付き合ってくれなくなるよ。


「…………」


 心当たりがあるのかアヤノは眉を歪ませる。


「なによ、結局おじさんもアタシに説教したいの!」


 おっとそんなつもりはなかったんだがな。


「でも結局そうなってるんじゃない、この子みたいに直接的じゃないからわかりにくいけどさ!」

「いえ、私も説教というわけではなくて」


 まあポーラは聖職者にしては人をたしなめる術が下手ではある。

 相手をイラつかせることもあるがそもそもが経験不足なのでしかたない。

 それなのにいきなり高難易度にぶつかっていくからタチが悪い。

 向上心は認めなくもないし、差し当たって目についた問題なのかもしれない。

 だがまずは地道にスライムでレベルアップするべきなんだよ、レベル1桁でドラゴンが倒せると思うなよ。


 それはさておき、俺が君に連絡を取ったのはミナヅキさんに伝言を頼まれたからでな。


「シゲシゲに?」


 そんな名前だったかな?

 てか嬉しそうだな?


「そ、そんなことないもん!」


 ああそうですか。


「で、シゲシゲがなんだって?」


 君の後見人になるってさ。


「……何よ、いまさら」


 優柔不断の塊みたいな感じがしたから悩んでいたんだろう。

 君とも少しギスギスしていたと感じていたようだから余計にだろう。


「ギスギスって! シゲシゲが悪いんじゃない!」


 そうなのか?


「シゲシゲ、お母さんしか見てなかったのよ! 私の顔見てお母さん思いだしてずっと泣きそうな顔するんだもん。いっつもそんなんだったら近寄れないじゃない!」


 ああなるほど、そういうことか。

 ならシゲシゲが悪いな。


「でしょう!」


 じゃあ断るか?

 シゲシゲが腹をくくったようだったが、あんな性格だしすぐには変わるまい。


「――それは……、でもどうせあと1年は誰かに保護者してもらわないといけないんだから、それならシゲシゲのほうがマシって言うか、都合がいいって言うか」


 と若干顔を赤らめながら言う。

 ……あんなのがいいのか?


「あんなの言うな! シゲシゲだっていいところあるんだから!」


 誠実そうではあった。


「そう真面目なの、馬鹿がつくくらい真面目なの」


 時計職人としての腕もいいらしいな。


「そうよ。マイスターの称号だって夢じゃないんだから!」


 よくわからんがラーメンの「大将」みたいな称号かな?


 だけどひ弱そうだよな。

 俺と話してても倒れそうだったぞ。


「あれは儚げとか表現してよ」


 優柔不断だったな。


「ちゃんとしっかりと考えてるのよ」


 あと面白みはないんじゃないか?

 ボケもツッコミもできまい?


「そりゃあ、まあねぇ。……でも人の魅力ってそこじゃないでしょう!」


 手のひらがひっくり返ったな。

 まあいいや、あばたもえくぼっていうしな。


「ちょっと待ってよ、アタシは別にシゲシゲのことなんかなんとも思ってないんだからね!」


 いや、ここでツンデレされてもさ。


ポーラのニーナに対しての件ですが、今後のネタであるので放置しようかと思っていたのですが、よくよく数えてみたら9話先のことですので少しフォローを。

この世界の常識ではポーラの行動は別段おかしいことではありません。

船長の日本人的な感覚がかなり過保護となります。

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