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#229 惑星ヤクモ

お待たせしました。

再開です。

 テツジンと別れて数日後、惑星ヤクモへと到着した。


 大将ホンガワラは死んだというが、高名な職人だと弟子がいても不思議ではなく、店自体の営業は続いているのではないかと思ってカグヤに調べさせたのだが、


「大将へ弟子入り志願者は多数いたようですが、定着した人間がいなかったようです」


 なんだ厳しかったのか?


「厳しいというか、説明が圧倒的に下手……ではないですね、弟子が実践できないそうなんですよ」


 というと?


「大将はレシピを隠すことなく教えるんですが、誰もその味を再現できないということらしいんです」


 そういうことがあり得るのか?

 個人がプロの味を再現するのには材料が違うからとか道具が違うとか火力が違うとかで再現できないというが。


「それが不思議なんですが、大将とまったく同じ材料を使って、同じ道具を使って、言われた通りに作っても同じ味にならないそうなんです」


 と困惑顔のカグヤ。

 となると気温によって麺を茹でる温度や時間が違うとか、調味料の適量が違うとか、湯切りの力加減がとかそんなことを言うのか?


「弟子たちはそう結論付けたようですね。結局天才が無意識にしていることまでは真似できないとして諦めるようです」


 でも同じレシピなら似たような味になるのではないか?

 

「それがですね、大将が作ったラーメンはめちゃくちゃ美味しいそうなんですが、弟子が作ったものは客が一口食べてわかるレベルで味が落ちるそうです、それこそ一枚も二枚もって感じです」


 そこまで味が変わることがありえるのか?

 元が美味いのならそれでも上レベルのラーメンなのでは?

 さすがに比べてカップ麺ということにはなるまい?


「そこはプライドの問題かと。大将に教えてもらった極上のラーメンが自分が作れば上のラーメンにランクダウンするというのは腕が劣ることをわざわざ宣言しているようなものです。また客からしたら極上のラーメンを食べに来たという期待感があるのに、出されたもののギャップで並のラーメンを食べたと評価されるようで」


 そいつは気の毒にというべきか。

 だからもう大将の店は閉店されたと?


「そういうことです」


 とカグヤが情報をまとめる。

 だそうだ、ニーナ。


「残念」


 と本当に残念そうなニーナ。

 テツジンのラーメンに感動したニーナはそれ以上のラーメンがあるというのならば食べに行きたいと言った。

 そのためなら頑張って地上に降りる宣言までしたというくらいだ。

 ポーラがいかにほっとしたことか。


 ちなみに俺はテツジンで満足したので降りる気はないぞ、てか降りてたまるか!


「でもさニーナ、2番目に美味しいラーメンを自称するお店は何件もあるからさ、試しに行ってみない?」

「そうですよ、ニーナちゃん。私この魚介系スープってのが気になるんですよ!」


 とニーナを地上に降ろすように興味を引くように提案をするのだが、……ポーラよ、それは逆効果じゃないかな?


 しかし宣伝文句の為に2番目に美味しいラーメンと看板を掲げるならともかく、そいつらは本気で1番にはかなわないと思っていそうだからな。


 そうなるとテツジンのマスターの心中は察するに余りある。

 天才に勝つことどころか挑むことさえあきらめた連中をさぞや嫌悪したことだろう。 

 自ら宇宙に飛び出すわけである。


 戦うことすらあきらめた人間たちのラーメンを食いに行ったところでニーナの口に合うものはないのではないかな?

 そんなのを食いに行くよりは他のモノを食いに行ってはどうだろうか?


「他のモノ?」

「例えばなんだよ?」


 ここは麺料理が盛んなんだろう?


「そうですね、ラーメン以外にもうどんやそば、パスタなど色々ありますね」


 俺の問いにモニターに料理の写真を映し出すカグヤ。

 じゃあそれら1番の店をめぐってみたらどうだろう?

 乱立している中でトップ張るくらいだから美味いだろうよ。

 ジャンルは違えどもトップを張るというのはそれなりの実力がないとできないよ。

 テツジンのラーメンとは違うが新たな出会いと感動があるだろうよ。

 うどん界やそば界、パスタ界の大将がいるのではないだろうか?

 どの世界にも天才というのはいても不思議ではないぞ。


「美味しい?」


 不味ければ人が来るわけがないさ。

 きっと美味いよ。


「……なら行ってみる」


 俺の言葉に少し考えた後にニーナは言う。

 どうにも好奇心が勝ったようだ。


「……お父さんは?」


 俺は行かないよ。

 そこまで食に好奇心がないからな。

 もちろん美味いに越したことはないが、それよりも引きこもることのほうが重要なんだよ。

 引きこもりというのはそういう人種だ、お前も本物の引きこもりになった日には俺の言い分がわかることだろう。


「お父さん、深い」


 そうだろう、引きこもりの道は深いものなのさ、覚えておくといい。


「わかった」

「いえ、船長! 子供に悪影響なことを教えないでください」


 ニーナが納得しているというのにカグヤが何故か批判する。

 見るとカグヤのみならずレーティアもあきれ顔で、


「マスター、よくもまあそんな体たらくなのにテツジンに対してこのラーメンには執念が見えるとか偉そうに語ったよね」

「レーティア、そりゃあウチの船長はそういうことを語る専門家ですもの。場合によってはグルメ評論家のように偉そうにもっともらしく語りますよ」

「テツジンが聞いたら感動を返せって言うよ、本当に詐欺師ってタチが悪いよね」


 失敬な!


前話の後、ラーメンを食べたくなったという感想をたくさんいただきました。

私はあの話を書くと決めたからラーメンを食いまくったので、もうしばらくはいいやとかつ丼や牛丼などのどんぶり物を食いまくりましたw

ですがどんぶり物の話をの予定はありませんのでご安心くださいw


明日からは新シリーズ「血は水よりも濃い」を始めます。

全9話予定です。

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