表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

232/316

#220 カラオケ回

「ねえマスター。日本人ってカラオケが好きだって聞いたけど?」


 レーティアよ、その入り方は以前も聞いた面倒事の始まりの気がするぞ。



 地上からポーラとレーティアが帰ってきたので惑星ラフェスルから出航した。

 ニーナは故郷との別れである。

 何らかの感傷が湧いて然るべきではあるが、表情からはうかがい知ることができない。

 ニーナ的には月のプラントを出た時点で終わった話かもしれない。

 その時はポーラにベッタリだったからうまくフォローしたのだろう。

 ポーラもいきなり故郷から旅立った身だから俺のフォローよりも的確だろう。

 いやまあ俺もいきなり宇宙船に乗せられた気もするけど。


 そもそもこの船に宇宙に憧れて旅立ったというヤツがいない気がするな。

 それでスペースオペラを求められるのだから俺の苦労はいかほどのものだろうか?

 ここは少し引きこもって一度よく考えてみるべきではないだろうか?

 幸いにもポーラが帰ってきてからニーナの手が少し離れた。

 ちょうどよいタイミングだろう。


 という事で引きこもろうという考えになったのだが。


「残念ながらちっとも同意できる要素がなかったよ」


 と、ウチのタイガーとは相変わらず通じあえない。

 不思議でしかたがない。


「こっちのセリフなんだけど。で、話戻すけどカラオケは好き?」


 大嫌いだ。

 日本人がすべてカラオケが好きだと思うな!

 俺には嫌いなものが山ほどあるがカラオケは俺的嫌いなものランキング30位で同率でパクチーとカエルとが並んでいる。


「比較対象がアレなんでいまいち伝わってこないけどさ、嫌いならもういいよ」


 とレーティアがあっさりと引き下がる。

 ……いいのか?

 俺はこれから社会人時代の飲み会での二次会、三次会での苦労について語る予定だったんだが。

 山ほどあるぞ、長いぞ。


「いや余計にいらないって。……今までと違って本気で嫌いだっていうとこを察したからさ。僕もカグ姉もマスターが本気で嫌がることはさせないよ。それでストレス貯めたら意味ないじゃん。今までは本気じゃなかったから食わず嫌い的なものもあるからとやってもらっていたけど、本気でイヤならもういいよ」


 そうなのか?

 あっさり引き下がられると何か罠があるのではと疑ってしまうぞ。


「難儀な性格してるよね。ニーナが歌が好きだっていうから日本的なものを作ってマスターもついでにと思っただけだからさ。……じゃあ僕たちで楽しんでくるよ」


 とさっさと出ていくレーティア。

 ここまで拍子抜けするくらいにあっさりと俺の要望が通るものだから逆に不安になるな。

 しかし一言二言で俺の本気度がわかるとは高性能すぎないかウチのタイガー。

 そりゃあ女神に目をつけられるわけである、かわいそうに。

 今後の展開に少々不安もあるが、まあとりあえず引きこもろう。




「お父さん」


 ほどなくしてニーナがやってくる。

 どうした?

 ……というか、これはレーティアの姑息な手口か!

 子供にねだらせて俺を引っ張り出そうとするとは、あのタイガーなんて姑息!


「違う」


 ニーナは首を横に振る。


「レーちゃんは行くなって言った」


 そうなのか?

 じゃあなんでまた?


「ニーナは歌が好き」


 知ってるよ。


「お父さんは……嫌いなの?」


 ニーナは恐る恐る聞いてくる。

 これは俺が嫌いならば、自分が歌が好きなことで何らかの不興を買うとでもと思っているのだろうか?


 そんなことないぞ、ニーナよ。

 俺が嫌いなのはカラオケというみんなで歌う行為が嫌いなのだ。

 いや最近は一人でも歌えるらしいが。

 とにかくカラオケという行為が俺にはあわないってだけだ。


「…………」


 俺にとって歌とはアニメの主題歌だったり、クライマックスシーンでかかるものを聞くものである。

 ただ歌うのは趣味じゃないが聞く分には好きだぞ。


「そうなの?」


 そうだよ。

 オタク文化では歌は欠かせないものだ。

 そんな中で育った俺が熱いアニソンを聞いて燃えないわけがない。

 この前も10数年ぶりに新作が出るというゲームの情報があって、特に興味がなかったんだが、それでも昔を思い起こすような主題歌に涙し、ヘビーローテーションで聞きまくったもんだ。


 あと俺の国では歌や楽器での演奏やらは音楽という。

 音を楽しむという意味だ。

 ニーナにとって歌うことが楽しいのだろう?

 俺にとっては聞くことが楽しいのさ。

 人それぞれ楽しみ方が違っても仕方ない。

 だけど楽しんでいるならば何の問題もない、そうだろう?

 

「そう、かな?」


 そうさ。

 ポーラが魚が好きなように、ニーナが甘いものが好きなように、人間ってのはみんながみんな同じではない。

 クローンのお前たちだってそうだったろうよ。

 人には好き嫌いがあり、それはしかたのないことだ。

 だからニーナは歌うことを楽しんできなさい。

 参加はしてやれないがお前が楽しむことは俺も嬉しい。

 だから歌ってきなさい。


「……わかった」


 納得したのかニーナが部屋から出ていく。

 

 ふう、なんて気を遣う。

 この件は終わったと思って油断した時にニーナの来襲とはなんと恐ろしい。

 おちおち引きこもりもできやしない。

 というかニーナのような子供にいつも通りやっていいものかと気をつかう。

 2パターン用意しなければならないとは子育ての大変さが身にしみる。

 まったく世の中ままならないね。


この船長はまじめに子育てをしている人に謝るべきだと思います。


さてあと5話でストックが終わります。

そろそろ尻に火が付くというべきか、まだあわてるような時間じゃないと余裕でいるべきでしょうか?

だいぶ調子は戻ってきたのですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ほんとだよね…この船長は謝った方が良いと思う! というわけで作者代わりに謝って!!笑 なう(2025/08/07 19:10:49)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ