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#216 その正義は届かない 5

「反乱した時の対策って、……管理頭脳がなければいいのではないですか?」


 いや、それでは話が一足飛びすぎます。

 それは反乱が周知の事実になってその対策の最終手段でしょう。

 現在、管理頭脳は人間の生活に密着しています、依存していると言ってもいい。

 そんな状況下でいきなり管理頭脳を破壊する思想はテロリスト扱いされるかもしれません。


「…………」


 似たようなことを言われた経験があるのだろう、悔しそうな顔をする。


 ですので、もしも管理頭脳が暴れるようになったらそれを即座に鎮圧できる体制を秘密裏に結成すべきです。


「ですが管理頭脳が暴れた場合、人間には対処できませんよ」


 ええ、ですから反乱を鎮められる管理頭脳を作っちゃいましょう。


「ちょっと待ってください! 管理頭脳を止めるのに管理頭脳を使うと、それが同調した場合どうするのですか? 被害が倍になりますよ」


 ええ、ですので人間に反乱しない管理頭脳を作ってみてはどうでしょうか?


「そんなことできるわけが、だって管理頭脳なんですよ。人間に牙を剥くに決まっています」


 それはどうでしょうか?

 人間だって犯罪を犯すような悪い人間もいれば、ライラ博士のように未来を憂う人間もいる。

 管理頭脳だって自我を持ったとしたら人間に牙を剥くものもいるでしょうが、それでも人の役立つために立ち上がる管理頭脳がいたって不思議ではありません。

 むしろそれこそが自我なのではないでしょうか?

 皆が同じような方向を向くなどありえない。

 きっと人間を守護する管理頭脳だって現れるはずだ。


「しかしそんな管理頭脳があらわれるなんて……」


 管理頭脳はすべて悪と考えるほうが間違っています。

 俺の星ではそういうコンテンツが多くあり、心優しい科学の子に始まった系譜の正義の味方が星を護ってくれています。

 きっとそんな管理頭脳は現れます!

 さあ、あなたはその正義の管理頭脳の母になるべきではないでしょうか!


「そんなことができるとでも?」


 できるできないではありません、するかしないかです。

 口先だけで管理頭脳が危険だという人間の言葉に何の力があるとでも?

 そのために必死で何かをした人間にしか奇跡は起こせません!

 あなたが本気で星の未来を憂うというのならば、まずは行動すべきなのではないでしょうか?




「相変わらず詐欺師ですね」


 ライラ博士をどうにか説得して通信を切った直後、カグヤが白い目で俺を見る。

 言いたいことはあるかもしれないが、とりあえず俺は頑張った。

 まずはねぎらうべきだと思うぞ。


「お疲れ様です。ピンクウサギにおつまみを用意させています。食堂でビールでもいかがですか?」


 そう言うことなら受け入れよう、だけど棒読みで言うなよ。


「つい」




 生ビールを一気に飲むと一仕事終えた気分になる。

 そしてつまみに出されたレバーの唐揚げを食べてみる。

 人生で初めてのものだったが臭みもなくとても美味かった。


「ピンクウサギが地球のレシピを探しつつ、船長の好みを考えてチョイスしたそうです」


 そうか、ピンクとも長い付き合いになるがこいつは本当にすごいやつだ。

 ああ、こういう未知の美味いものを食うことが幸せというのだと思う。


「船長の幸せの為にこの星の未来が危うくなりましたがね」


 そうかな?

 とりあえず管理頭脳の破壊からは目を背けれただろう?


「ですが戦う管理頭脳の製造をそそのかしたではありませんか。戦闘兵器を作るのは重罪ですよ」


 一番説得力があるかなと思ったんだが。

 管理頭脳にも権利を認め、法律を作り、罪を犯したら罰するようにすればいいという流れに持っていくのとどっちがいいのかなと思ったんだが。


「またおかしなことを考えますね、船長の頭はどうなってるんですか?」


 引きこもることが脳の8割を占めているかな。


「最悪ですね。ですが法律を作ったところで結局罪を犯した管理頭脳を拘束する管理頭脳がいるので、結局戦闘兵器を作る流れになるのでは?」

 

 まあそうかもしれないな、個人が作れば犯罪で国が作れば軍隊か。

 しかし管理頭脳を破壊するという発想自体がテロリスト予備軍なんだから、ライラ博士が別に捕まっても問題ないだろう。

 そもそも頼まれたのは話をして、できれば思想を穏便にということだったはずだ。

 とりあえず表面的には落ち着くのではないだろうか?


「影で草の根運動やら戦闘用の管理頭脳を製作する可能性がありますがね」


 可能性を語るのならばそんなことができずに寿命が尽きる未来だってある。

 最悪の未来ばっかり語るもんではないよ、カグヤ。

 世の中には目標があっても達成できない人間は腐るほどいる。

 悲しいことだが人生ってそういうものだ。

 世の中、上を見ればキリがない。

 だからほどほどに生きることが一番なのさ。

 美味い酒と肴があればそれなりに幸せなもんだよ。


「あまりに特殊すぎて素直に同意できません」


 そこが人間とドラゴンの種族差かな。


「まともな人と引きこもりの差では?」


 そういう風に言うとライラ博士がまともな部類に聞こえるぞ。

 

「じゃあまともな人と特殊な(引きこもり含む)人でしょうか」


 それならば否定できないな。


「しかし相変わらずよくもまあこう人を騙せるものです。これなら別に月でレーティアにしかできないとか言ってましたけど、船長、実は何とかできたのではないですか?」


 まあ何とかなったとは思うけどさ、レーティアの試練だったかもしれないしさ。


「まあその可能性は確かにありましたが」


 あとはレーティアがする方が早かったのは確かだと思う。

 結局のところ、あの叔母と姪は用心しすぎて余計なことをしているだけだ。

 そんなのを相手にするのはそりゃあ骨の折れる作業だよ。


 俺が楽できてしかも早いならレーティアにさせるのが一番だろう?


「そういう言い方しなければ、もう少し船長の信頼度も上がるのですけどね」


 もうカグヤに対しては今更な気がするよ。

今回の悩んだタイトルとして「石橋を叩いて壊す」「転ばぬ先の杖で藪をつついて蛇をだす」だったりしますw



さて個人的なことですが、昨晩から体調を崩しております。

明日、場合によっては病院に行くつもりです。

今日のでこのシリーズが終わりで、ストックもありましたので投稿しましたが、明日は投稿できないかもしれません。

ご容赦ください。

長引くようでしたらTwitterで報告します

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今からかも知れませんが、お大事になさってください。 なう(2025/08/07 15:19:11)
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