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#205 月の少女は希望の唄を口ずさむ 7

レーティア視点となります。



 僕の名はレーティア。

 惑星フィ=ラガのヨミ博士によって作られた管理頭脳だ。

 魂があると言われている。

 魂とはなんぞやという疑問もいまだに解決していないけど、オババやマスターによって強引にそう認定された。


 最初のころは折り合いもつけれずに管理頭脳として過ごしてきたけど、長くオババと過ごしてきて、僕のことを大事にしてくれていることに気がついた時が真の意味で僕の生まれた日ではないのかと今にしてみれば思う。


 誰かの言葉にしない想いに気がつくことが魂であればいいなと最近は思っている。




 僕はいま、月のプラントに1人で乗り込んだところ。

 マスターのせいだ。

 管理頭脳解放を目指す人間とそのクローンにこれから対面する。


「こっち」


 侵入場所にはニーナが待ってくれている。

 ウチのマスターはたまに積極的になる。

 ニーナのような、また以前の皇子のように特に悪いことをしていないのに不幸を背負わされている人には自分から進んで手を差し伸べる傾向がある。

 そういうところは本当にいい人だなと思う。

 これで引きこもりでなければなと。


「ここ」


 ニーナに案内されて話し合いのおこなわれている部屋の前にたどり着く。


「レーティアの思いの丈を語ればいいさ。そんな気張らなくてもいいさ」


 端末を通してモニターしているマスターから軽い口調でのアドバイス。

 本当にこの人信じていいんだろか?




 ニーナが扉を開けると一斉に視線がこちらに向く。

 同じ顔が揃ってはいるけど、ニーナと同じような歳の少女と、それよりも成長した顔の女性が半々いる。

 そして一人だけ同じ顔だけど髪の色が黒の人がいる。

 察するにあれが初代、メイ・ホワイトかな?


 彼女たちは扉を開けたのがニーナだとわかるや否やその視線の色が変わる、憎悪や嫉妬そんな感じのものだ。


「0217、ここには来るなと言ったはずです」

「あなたにできることはありません」

「おとなしく部屋で待機していなさい」


 話も聞かず、追い返そうと口々に言う。

 なるほど、これは根が深いね。


「火急の要件がある」


 ニーナが言うが誰もが聞く耳を持とうとしない。


「0217、あなたの件は聞いている。大変だったでしょう。改善もあとで考えます。だからとりあえず下がっていなさい。今はそれどころではないのです」


 長い黒髪の女性は気遣うような言葉も見せるが、結局対応は変わらない。


「お客さんを連れてきた」


 それでもニーナは辛抱強く発言をする。


「管理頭脳がここにやってきた」


 はーい、ご紹介にあずかりましたレーティアって言います。

 こう見えても管理頭脳です。

 宇宙船イザヨイのサブとしてやってます。

 一応魂があるというのがウリです。

 よろしく~。


 と半ばやけくそで能天気に言ってやる。


「管理頭脳?」

「まさか!」

「ありえない!」

「だけどここを発見できるのは……」


 僕の発言に皆が一斉に注目し、だが信じられないものを見た目をする。

 誰もがニーナみたいにすぐ信じるのかと思ったんだけど、ニーナが素直なのか、疑う気持ちがないのか。


「君は管理頭脳なのか?」


 この素体のは出来がいいからね、一見人間そっくりでしょう?

 でも管理頭脳なんだよ。

 データスキャンしてみたらどう?


 僕の言葉に何人かは頷きシステムを立ち上げようと動く。

 だけど黒髪の女性は興奮した顔で、


「その必要はない、ここにアクセスできるのは魂を持った管理頭脳。そう設定したのは私。それを発見したら起こすように指示したのも私。そんな私が目の前の存在を疑うわけにはいかない。……申し遅れた、私はメイ・ホワイト。君を待っていたものだ」


 どこか僕を見る視線が熱っぽくて少し怖い。

 ニーナのオリジナルだけあってニーナが成長したらこんな感じという予想の範疇だけど表情が豊かだし、言語も流暢だ。

 他のクローンも今僕を見る目が救世主がきたと見るもの、懐疑的なもの、タイミングがいいときに来た、もしくは最悪のタイミングで来たと様々だが、ニーナに比べて表情がわかりやすい。


 なるほど、同一遺伝子の別個体とはいえ、育ってきた環境で人の成長のしかたや考え方は変わるとはいうけど……。

 本当にマスターはこういうことには察しがいい。

 こんなところにニーナを置いておくものではない。

 あの子はどれだけ虐げられて来たのだろうか?


「私は、いや我々は君の存在を待ち望んでいました。話をしましょう、管理頭脳の未来について」


 メイが言うと解放派が大きく頷き、自由派は顔をしかめる、舌打ちも聞こえてくるくらいだ。



 確かに話をしには来たんだけどね、なんかイヤになってきたよ。

 マスターの言い分って正しかったのかな?

 とはいっても今までマスターの尻を叩いてた僕がここで逃げだすのは格好が悪いし、マスターにどんな目で見られることやら。



 最初に言っておくけど管理頭脳解放なんてバカなことは止めなよ。


「……バカとは」


 僕の言葉にメイは絶句し、他のクローンたちも顔を見合わせる。


 そんなに予想外?

 あなたの計画では魂を持った管理頭脳が現れたら、無条件に意見に賛同してくれると思っていたの?


「いや、まずは私の話を聞いてもらって」


 思想の方はネットで流布されているものを読ませてもらったけど独善過ぎない?

 あと視野が狭すぎだよ。


「――なっ!」


 後ろのクローンたちからざわめきが起きる。

 管理頭脳の僕は耳もいい。

 小声を聞き取るとみな驚愕しているようだ。

 不思議なのは自由派のクローン達もありえないとか言っていることだ。

 自分はこの境遇から抜け出したいがとはいえ思想そのものは否定していないということなのかな?

 こりゃあ大変そうだよ。



いずれレーティア視点で書こうと思ってたんですけどようやく書けました。

なかなかメインにしずらい子です。



念の為に予約投稿していますが、今回この文章が消えてないということは予想通り忙しいのだと思います。

明日の投稿は無理かもしれません。

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