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#203 月の少女は希望の唄を口ずさむ 5

「現在私たちは初代の教えを維持する『解放派』と自分たちにも自由意思があり選ぶ権利があるという『自由派』で言い争っている」


 一番悪いタイミングできたな。


「いえ、そういうタイミングだったから生産性が落ちたやらで異常が発覚したと思われます」


 でもカグヤよ、ここの施設を勝手に使っているだけで管理頭脳には関与していないなら生産性が落ちることもないのでは?


「完全に分離独立しているわけではないですからね。何かするために移動するだけでも電力は使いますし、場合によってはシステムに割り込むことがあり処理も落ちます」


 そうですか。


 で、現在他の人たちは未だに言い争っているのか?


「話し合いが長引いたために初代を起こして、現在再開したところ」


 ……初代?


「そう」


 300年前の人じゃないのか?


「初代が100歳の時にここに基地を作った。そして自分のクローンを誕生させた。それが第一世代の10人。最初は自分の記憶を直接コピーしようとしたがうまくいかなかった」


 さっきカグヤもその技術は確立されていないと言っていたな。


「しかたないので初代は第2世代を作り、自分の思想を教育した。15年後、第3世代を作り第2世代に教育させつつ、惑星の人間に思想を振り撒くように指導し、15年単位で世代交代するように指示して冷凍睡眠に入った」


 冷凍睡眠に入ったというのは魂がある管理頭脳が来たら起こせってことか?


「そう」


 それまでクローンに待機させるのか?

管理頭脳にさせればいいことを奴隷として使いたくないからと自分のクローンを手間暇かけて育てて奴隷にするか。

 なかなか拗れてるな。


「かもしれない」


 頷くクローンの少女を見てレーティアが頭を抱える。


「僕、ちょっと理解できないんだけど?」

「私もです」


 レーティア、ポーラの意見はもっともだがな。


 ちなみに15年単位で世代交代っていうのはクローンの寿命と関係が?


「基本的にクローンは寿命が短い。30歳前後が限界と言われている」

「――そんな!」


 衝撃だったのかポーラが絶句する。

 自由というか、選択肢がない上に寿命まで短いとなると気の毒と簡単に言葉で済ませるレベルではない。

 自分のクローンだから何してもいいのか?

 そんなことをしている人間に管理頭脳解放と言われても説得力があるわけがない。

 そりゃあ揉めても不思議ではない、むしろ今までよく揉めなかったというべきだろう。


 でまあ、今は初代含めた解放派と自由派で争っていると。


「そう」


 どっちが優勢なんだ?


「わからない。人数的には同じ」


 多数決では結論がでないのか。


「そう」

「あれ? それっておかしくない?」


 何がだ、レーティア。


「20世代と21世代は10人ずつなんだよね? それに初代足したら21人と奇数になるから多数決で決まるんじゃない?」


 問題が問題だけに多数決で決めてもしこりが残るだろうが、長引けばそういう対応も必要だろう。

 何か理由があるのか?

 もうすでに1人亡くなったとか。


「指摘通り総数は21人。でも1人は中立にさせられた」


 させられたという言い回しが気になるが。


「何も出来ない落ちこぼれだから発言権をもらえなかった」


 クローンなのに落ちこぼれとかあるのか?


「クローンの寿命を伸ばすために遺伝子を改良をしていた。今までうまくいかなかったがこの度、21世代では1人成功して寿命が100年を越えると予想されている」


 3倍か、それは凄いではないか。


「だけど寿命が長いだけで、他のクローン体より頭脳が劣っているし、手先も不器用で料理や掃除もまともにできない。だから何も仕事が与えられず、発言権も与えられない。ただ毎日この場で待機させられている」


 てかお前のことかよ。


「そう、私」


 ちなみにお前さんは何歳だい?


「9歳」


 いくつのころから落ちこぼれ扱いされていた?


「わからない」


 お前さんの寿命が長いと判明したころじゃないのか?

 俺の問いに少し考え、


「……かもしれない」


 ならこの子は本当に落ちこぼれと差別されていたのか怪しいものだな。

 単に嫉妬されていたのではないだろうか?

 さて厄介な話がさらに厄介になりそうだ。

 

 ちなみにお前さんはずっとここで1人で何してたんだ?


「歌っていた」

 

 そういえば通信繋いだ時もなんか歌っていたな。


「歌は好き。現実にはない希望がいつもある」


 なるほど、そういう考えもあるだろう。

 辛い現実から逃避するのも必要なことだろう。


 逆に言えば現実が辛いと宣言しているようなもんだがな。


 今さらだがお前さんに製造番号以外に呼び名はあるのか?


「名前は記号。だから私たちは番号で呼びあう」


 そうか、でもな人間っていうのはその記号に意味を見いだす生き物だよ。

 そして道具にすら名前をつける生き物だ。

 だから数字だと呼びにくい。

 0217ならニーナと呼んでもいいだろうか?


「……かまわない」


 少し考えた後に了承する。

 そうか、じゃあお前さんは今からニーナだ。


「ニーナ、……ニーナ」


 何度か口にだし、少し表情が和らぐ。


 なあ、ニーナ。

 そこから出て、俺たちと宇宙を旅する気はあるか?


GWが終わりましたね。

私は10連休ではありませんがリフレッシュはできたかなと。

あとは明日からの仕事が忙しくなければなと祈るところです。

先月のように突発的に休むこともあるかもしれませんがご容赦ください。

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