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#201 月の少女は希望の唄を口ずさむ 3

「ラララ~、ララッララ♪」


 ドラゴンたるカグヤの能力をもってしても隠し部屋へのアクセスに苦労した。

 そして映し出されたモニターには1人少女が鼻歌を歌っていた。


「ララ、ララ、ラララァ~♪」


 短く切り揃えられた銀髪を微かに揺らしながら気分よさげに歌っている。

 年の頃は10歳前後というところか。

 まあいまだに寿命200年の不老長寿の人類の歳の見分けがつかないのだが、さすがに子供ということくらいはわかる。

 ヨミ博士のように遺伝子異常ならお手上げだが。


 ……ところでそろそろ俺らの存在に気がついてもらいたいものだがな。




「……アナタたち、何?」


 たっぷり5分を超す熱唱が終わった後、銀髪の少女はようやくモニターに気がついてくれる。

 歌っている姿を見られてバツが悪いかなと思ったが特に慌てた様子もない。


 俺は宇宙船イザヨイの船長の日下部という。

 惑星ラフェスルの入国管理局からの依頼を受けてこのプラントに立ち寄ったのだけど。


「……そう」


 少女は歌っていた時と打って変わって表情が消えている。

 無口キャラなのか、恥ずかしいのを誤魔化しているのか判断が難しいところだ。


「よくこの場所に気がついた」


 やっぱり隠してたのか?

 俺の問いにコクりとうなずく。


「普通は気がつかない。事実200年以上気がつかれていない」


 200年だったのか。

 この場所だけならともかく、食糧の密輸がよくもまあ隠し通せたもんだ。

 この星の流通システムは大丈夫か?

 即時見直すべき案件だぞ。


「偽装は完璧、らしい」


 大した自信だ。

 俺もウチの特殊な管理頭脳のお陰で気がついたんだが?


「ちょっとマスター、僕のこと特殊って言うな! 高性能とか特別仕様とかにしてよ」


 似たようなもんだろう。


「違うよ!」


 はいはい、じゃあ高性能で。

 

「…………」


 少女は俺とレーティアの会話を、というかレーティアをじっと見つめている。


 どうした?


「その子は管理頭脳?」


「そうだよ。僕はレーティア。惑星フィ=ラガのヨミ博士に作られた特別仕様の管理頭脳さ。ちなみに素体の体はゲンという腕のいい職人の一点ものだよ」

「アナタがここを発見したの?」

「ここだけでなくデータ改竄も見つけたよ」


 少女の問いにレーティアは自慢げに胸を張る。


「じゃあアナタには魂があるの?」


 少女の突然の話の飛躍にレーティアは目をぱちくりさせて俺を見る。


 はて、なんでそうなる?


 と、とりあえずとぼけてみる。


「ここにたどり着けるのは魂を持った管理頭脳だけ。そういう設定にしていると初代は言っていた」


 さて、色々気になる言い方だが、1つずつ片づけよう。

 何をもって魂というのか?


「さぁ?」


 と無表情のまま首を傾げる。

 おいおい、その言い分はどうよ。


「知らない。私たちはここにたどり着くことができる管理頭脳を待っていただけだから」


 つまりはこの場所は魂のある管理頭脳しかたどり着けないからここに来たからには魂があると?


「……たぶんそれでいい」


 適当だな。


「魂なんて存在が証明されていないものを議論するのは時間の無駄。そもそも私にはそんな難しいことはわからない。だから信じる。ただそれだけ。簡単でいい」


 ああ確かに簡単でいいな。

 そういう考えは嫌いじゃない。

 しかも結果的に正解ときたもんだからなおさらだ。


 

 よし、どうだろうカグヤ。

 そろそろ面倒くさい匂いがプンプンしてきたので何も見なかったことにして引き返すという選択は?


「船長、往生際が悪いです。というかまだ何も始まってないじゃないですか? 何のため、とか初代とは、とか聞かないと。ここでそれを知らずに終わるほうがありえませんよ」


 知って面倒に巻き込まれるくらいなら知らずにモヤモヤするほうがましだと思うんだけどな。


「あきらめてください」


 カグヤは俺の背中を押す。

 ああ嫌だ。

 やってられないとも思うがまあ逃げるのはいつでも逃げれると腹をくくろう。



 じゃあそこのお嬢さん、結局君は、……君たちか? ここで魂を持つ管理頭脳を待っていた、と。


「そう、それが初代の目的の最初の1歩だから」


 さてさっきから出てくる初代とは?


「メイ・ホワイト」


 いや、人名を言われても。

 その人がなんだって?


「惑星ラフェスル出身の科学者の名前にありますね。遺伝子工学の世界では権威だったようで。300年くらい前に生まれた人で200年くらい前に行方不明になっているとデータにはあります」


 とカグヤが惑星ラフェスルでデーターをハッキングして情報をくれる。

 

 なるほどその人がここに人が住めるようにし、魂がある管理頭脳が来るようにシステムを組んだと。

 

「そう」


 で君はその子孫ってことか?


「違う」


 少女は首を横に振る。


「私はロットナンバー0217。初代メイ・ホワイトのクローン」


 そうか、クローンか。

 SFっぽいな。


 さあ、カグヤ、そろそろ引き返そうか。


「船長、ここは喰いついて行くべき案件ですよ」


 俺の何度目かの訴えにカグヤは頑として首を縦に振ってくれなかった。



昨日は間違って完結済みにチェックを入れてしまいました。

びっくりさせて申し訳ございません。

というか感想を見て、何のことだろう? と本人が一番びっくりしましたw


まだ続きます。

心配された方、申し訳ありません。



むしろこのシリーズってどう終わらせたらいいんだろうか?

見切り発車で始めたツケを感じております。


のちに話す予定でしたが、この流れだからいいますとこのシリーズはクローンについてのネタを使うならどうなのかということに始まって、最終的にボツ案になった最終話につながる話になっています。

多分、いつも通りまともな話になりませんw


200話も書いておいて終わり方が決まってないのもどうなのかと思いますが、どうにかキリよくは終わらせたいなとは思っています。

気長にお付き合いください。

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