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#21 反省会と今後の予定

「だからすごいことなんですって」


 部屋に戻ろうとしたらカグヤに引き止められ、せめて少し休憩を提案したら食堂で話すことになった。

 前回のように二人用のテーブルの対面には立体映像のカグヤが、移動式モニターに数値が入った表やらで熱く説明してくれる。

 

 ピンクウサギよ、とりあえずビール。

 あと枝豆を。


「元の上昇率の法則は不明で45m級だとどうなるかはわかりませんが……必要ないですよね?」

「まあ今のままで十分なんじゃないかな」


 ビールを飲みながら答える。


「ですよね。現状でも最優秀ですし、40%でさらに倍の加速時間と推測されます」


 ってことは1000秒か。16分強か。

 50%や60%でも余裕で行けるからさらに拘束されるのか。

 暇潰しがいるな。


「次回からはそこまで暇にはならないと思います」

「そうなのか?」

「ええ、それが今回船長を引き留めたことにも関係します」


 ビールのお代わりを頼もうとしたらカグヤに止められた。

 緊急の勉強会らしい。


「今回はワイズに通じるゲートを隠す意味もあり、世間的に発見されているゲートまでは航行しますが、本来はゲートアウトしたらすぐに向かう先の惑星にアポイントをとります」

「そうなんだ?」

「ええ、無許可で星系内に侵入すると攻撃されます」

「なるほど、自衛のために不審船は迎撃か。まあ仕方ないわな」

「ええ、ですのでこちらも敵意がないことを証明するためにアポイントをとってもらいます」

「……俺が?」

「はい」

「そういうのは管理頭脳の役目では?」

「惑星側からしてみれば未登録の宇宙船ですし、船長の方が対応しないと不審に思われますよ」

「カグヤなら見た目人間と同じだろう?」

「そうですね。でも実体がないので、到着後向こうで直接会って対応となると、相手は管理頭脳に対応させたのかと思いますよね。あと長時間の加速中の場合そっちで忙しいのですが」


 なるほど、そういうことなら仕方あるまい。

 女神様から俺より宇宙に向いている人間がいるのに、俺が選ばれた要因の1つはコミュニケーションだったしな。

 対人スキルは年単位で引きこもりをしている人と比べたらましな方だろう、たぶん。



「ではこれから向かう惑星について説明します」


 星系、惑星の画像を表示させる。


「惑星名はZ3-J。いわゆる辺境の惑星となります。立ち寄る宇宙船が少ないですが、星系内で自給自足はできています。自星からの宇宙進出者も最近はおらず、他星の文化は珍しいものとして扱われます」


 Z3-Jって記号みたいな惑星名だが、まあ文化の違いだろう。

 あえて口に出すまい。


「立ち寄る宇宙船が少ない理由は?」

「単純にゲートの利便性が悪いせいです。Z3-Jから最寄りのゲートは大翠という惑星がある星系なのですが、そこは大翠からしたら遠いほうのゲートとなり20日はかかります。そこからゲートアウト後Z3-Jまで10日といったところでしょうか」

「往復で2か月か。確かに長いが、うまみがあれば行くと思うけど?」

「おっしゃる通りです。Z3-Jでは売れるけどZ3-Jのものは売れないという感じですかね」


 確かに2か月かけて片道が空荷だと二の足を踏むな。


「もう一つのゲートは惑星ワイズと。なるほど辺境にもなるわな」

「実のところこの星系のそばには3つ目もあるのですが。そこも今のところ宇宙進出のできない惑星です」

 

 よほど運がない惑星ということか。

 そうなるとZ3-Jから定期便という形で大翠と輸出入ってことか。

 

「いえ、Z3-Jの住人はあまり自分から宇宙に出ようという人がおらず、いたところでゲート突入適性や宇宙で往復2か月耐えられる適性持ちが少なくて。稀にいたとしてもお隣、さらに隣と違う星を見てしまうとそっちに居ついて帰ってこなくなる傾向があります」


 田舎者が上京したら帰ってこないっていうやつかな?


「ですので簡単に金銭が稼げると思います」


 金があるに越したことはないしな。

 船の維持費とかもいるだろうし。

 

 そういえば金の心配をしていなかったんだが、この船の金銭事情ってどうなってんの?


「船の維持に関しては当面はワイズから積んだ資材がありますので自前で修復が可能です。ただお金ということで言うなら無一文です」

「そうなのか?」

「正確にいうならワイズでなら使える貨幣はありますが、他の星では使えません。換金しようにもそもそも滅んだ星なので貨幣基準が違います」


 金属の価値とか他星の貨幣というコレクター性を求められないと売れない、そもそも宇宙に出るような惑星は貨幣を使っておらず管理頭脳が管理する電子マネーだという。


「ですので惑星間が密接な通商貿易をしている場所では統一した貨幣になっていますが、基本的にどこの惑星でもそこで金を稼がないと何も買えないどころか入星する際にとられる手数料すら払えません」


 のんびり宇宙の旅がいきなり世知辛くなってきたな。


「人間の作った管理頭脳程度ならハッキングして電子マネーくらい増やせなくもないのですが、初めて行く惑星でいきなり大金持っていたらどうなります?」

「人から譲り受けた……では通らないかな?」

「誰からというのが証明できればいけるんですけどねぇ」


 肩をすくめる。

 まあ危ない橋を渡ることもあるまい。

 宇宙に出て最初の惑星で犯罪者というのもスペースオペラの展開になくはないかもしれないが、俺には向いてない。

 地味に堅実にが俺のモットーだ。


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