#197 反省会
「では反省会を始めましょう」
「オッケー」
「イレギュラーがありましたが前半は想定通りでした。つまり攻め方としては間違いはなかったと思っています。地上に降りた船長を見て少々ポーラが舞い上がったのが誤算でしたが」
「その点は僕も同感。なんだかんだでマスター腹をくくってくれてたもんね」
「ええ、これは本当に稀有なことですが。ですがだからと言って今回の件をポーラが悪いで結論付けては意味がありません。そんな結論を出すのでしたらそもそも船長が悪いで話が終わってしまいます」
「それは一理あるね」
ないよ!
あと、どうでもいいけどお前らの反省会を俺の部屋でするなよ。
「ぜひ客観的な意見をいただきたいと思いまして」
俺、当事者だよな?
「ポーラ姉がクッキーから最高司祭並みの説法をしたって褒めてたよ。僕たちにもご教授してよ」
蒼龍教の最高司祭は随分と浅い説法なんだな。
それはさておき、もういいじゃないか、引きこもりを無理に外に出さなくても。
「役に立ちませんね」
「二言目にはそれって芸がないよ」
俺の部屋に押しかけてきてその言い草ってひどいぞ。
「でまあ僕は思ったんだけどさ、僕たちってだいぶマスターの言葉の裏を読み取れるようになったでしょう」
とレーティアが怖ろしいことを言いだすとカグヤが真顔で頷く。
「そうですね、船長の余力をはかるのに必要ですから」
「面倒くさいの一言でも『口癖』『諦めているけどダメ元で言ってみる』『できればしたくない』『本気でイヤな時』の4パターンあるじゃない」
「そうですね」
てかそんな分析されたのか!
額面通り受け取れよ!
「そうしたらいつまでたっても何もしないじゃないですか」
とカグヤが正論を吐く。
そんなものは知っている、だけど人間は引きこもりたい生き物なのだ!
「船長だけですよ」
「マスターだけだよ」
俺の熱弁を軽く流す管理頭脳ども。
「でまあ話を戻すね。それと同じようにマスターの『大丈夫』にもパターンがあるのではないかなって」
「それは新解釈ですね」
「『とりあえず反射的に言う』『本当に問題ない』『結構ダメな場合』『大丈夫かどうかも分かっていない』があるんじゃないかなと思うんだよ。でもってポーラ姉があちこち動き回った時に一応マスターに確認した時に言った『大丈夫』は大丈夫じゃなかったのだと思うんだ」
「しかし大丈夫ではないのに大丈夫って言うのはおかしくありませんか? 辛いとか言えば済むだけの話なのに」
「そこはいい歳の大人がポーラ姉が楽しそうにしているのに水を差すことを言えなかったってことではないかな」
「船長がそんな気を使いますかね?」
「意外とポーラ姉にはまだ少し見栄を張ってると思うんだよ」
「なるほど、確かに船長はなんだかんだ言ってもポーラに甘いところがありますしね。今回の件でも地上に降りてくれましたしね」
「うん、だからマスターはポーラが落ち着くのならと黙って付き合ったんだと思うんだよ。誤算があったとしたらブラック生活から脱出し、一年以上も引きこもっているからストレスの限界値を読み間違ったんだと思うんだよ。自分ではこれくらい大丈夫と思っても体が先に限界を迎えたんじゃないのかなと」
「しかしそれだと自覚症状があってしかるべきです。スーツから受けるバイタルも正常値でしたから前日まで体に異変はなかったのです。体に異常が出るストレスならまずは何らかの自覚症状や言動や行動から発見できるはずです」
「そこはブラック企業勤めのスキルなんじゃないかなと。なんだかんだでマスターは我慢強いんだよ。腹をくくってからは『面倒くさい』の一言もなく付き合っていたからね」
「なるほど、その考察には無理がない気がします。……そうなると『面倒くさい』にはもう1つのパターンがあって、面倒くさいと言わなくなったら限界の前兆と言うことでしょうか?」
「その可能性はあると思うんだ」
と2人は議論を交わす。
こいつら何やってんだろうね。
白ウサギが気を使ってビールを持ってきてくれたので手酌で飲み始める。
「で船長、実際どうなんでしょうか?」
てか、引きこもりを外に出して失敗したからの反省会であって、そのアドバイスを当事者に聞いてどうするんだ?
そのアドバイスからまた外に出す作戦を立てられるのなら自分で自分の首を絞めることにならないか?
「いいではないですか。たまには地上もそこまで悪いものではなかったでしょう?」
「今度はちゃんとラッキースケベを演出するからさ」
もう面倒くさいから出て行けよ。
「これはダメ元ですね」
「ダメ元だね」
うるさいよ!
平成最後の更新となりますw
昨日まで3日連続の飲み会で思ったほど執筆時間が取れず。
明日からは仕事なのでそれまでの時間にどうにか少しでも。




