表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

205/316

#193 常識の時間 11(趣味と娯楽 前編)

 いい歳をした社会人が趣味は何かと問われるのは正直返答に困るところではある。

 アニメ、ゲームというオタク趣味をまっとうに主張することができない隠れオタクとしては曖昧にごまかすしか方法がない。

 

 生前、採用面接をしていて、趣味の欄が「読書」ならマンガかラノベかな、「音楽」ならアニソンか声優ソングかと思ってきた人間なので他人には理解を示せるのだが、自分が理解されるとは思ってはいない。


 例えば上司に趣味を聞かれた場合、読書ですと主張するなら、「最近何読んだ?」まで用意しておく必要がある。

 無難な流行りの文芸書かビジネス書のタイトルとあらすじだけは覚えておく必要がある。


 音楽ですと答える場合は上司が聞かなさそうなジャンルを用意すべきだ。

 同僚が適当にジャズと答えたものだから、それを聞きつけたジャズ好きの支社長にジャズバーへしばらく付き合わされる羽目になったという悲惨な話を聞いたことがある。


 趣味なんてありませんよ、そう答えるのも悪手ではある。

 じゃあゴルフなんかどうだ、釣りなんかどうだと上司の趣味を押し付けられるからだ。

 それを丁重に断るのは非常に骨が折れる。

 なんで休みの日にまで上司と一緒に趣味をしなくてはならないのかと思うのだが、出世するにはそういうことをして普段からそういう会話をし、上司に気にいられなければならない。

 まあ俺には縁遠い世界だった。


 だが、俺の体験では趣味を押し付けられるのはまだマシなのだと思っている。

 最悪の場合、趣味がないと答えたら、


「ここで趣味は仕事ですと胸張って言えないからお前はダメなんだ!」


 となぜか支社長に怒られ、自分の若い時の武勇伝を一から聞かされ、最後には寝ずに働けと言われたもんだ。

 パワハラですよと真っ向から言えるはずもなく、冗談だと思うことにし「せめて3時間は寝させてくださいよ」と笑いながら言ったら説教が長引いた。

 どうも正解は「支社長を見習って頑張ります」だったようだ。

 パワハラここに極まれりなのだが、それがまかり通るのがブラック企業というものだ。




 さて、いま俺はイザヨイ、メインユニットにある娯楽室にいる。


 地上に降りて5日でダウンしたことは確かに少々みっともないと思ったので、まずはリハビリがてらたまには部屋から出てみようと思い立ったのだ。


「そうですね、まずはそこからのほうがいいですね」

「いやカグ姉、かなりハードル低くない?」

「船長が自主的になにかしようとするなんて珍しいのですから見守りましょう。こういうのが大事だと日本の子育ての本に書いてました」

「ああ、あったね」

「あと誉めて伸ばしましょう」

「オッケー」


 聞こえているよ!

 あともうおっさんだ!



 さて色々あるが一目でなにかわかるのかはビリヤードっぽいものとダーツっぽいものだ。

 ぽいというのは俺がそこまで詳しくないので例えばビリヤードの台の大きさが違うとか、ダーツ盤の数字の配置が違っていても気がつかないからだ。


「キャプテンはビリヤードはご経験が?」


 台を触っていたらレーティアからキューを渡されたのでちょいと構えているとポーラが興味津々で話しかけてくる。

 学生の頃少し、ナインボールくらいだけどな。


「私、ちょっと興味があって、……よかったら教えてもらえませんか?」


 教えてくれと言われてもな。

 カグヤが操作するとテーブルの中からナインボールの配置でボールがせりあがってくる。

 便利なもんだな、ラック使って自分で並べなくてもいいんだ。

 ラックシートの登場が便利だと思ったが宇宙はさらに先を行くな。

 チョークは? 

 そんなものが必要ないくらいのキューなのね、了解。

 手玉を受け取り、構えて突く。

 が、手玉の中心に当たらずに力なく転がり一番ボールに掠ることさえしなかった、俗にいうファールである。


 とまあポーラ、俺の腕前はこんなもんだ。

 むしろ俺が教えて欲しいくらいだ。

 適当にやったんだがスタンダードブリッジってこれでよかったんだっけかなというレベルだ。

 ということでカグヤにキューを渡す。


「とりあえず動作をインストールしてみましたけど」


 と言って綺麗な構えを取ってのブレイクショット。

 俺とは違い力強く手玉の中心を打ち抜き、快音を響かせ球を弾く。

 てかブレイクショットで9番をポケットに叩き込みいきなり終了。


「たまたまです。人間と違って手がぶれるということがないので正確なショットが打てますがブレイクショットで入る入らないは運かと」


 とはいえ、例えブレイクショットで決まらなくても、その後正確無比のショットであっという間に終わりそうだな。


「マスター、前も言ったでしょ。管理頭脳とゲームするのは異端なんだって。技術が必要なことは正確無比でできるし、思考だって一瞬で人間より深く多くのことを計算できるんだからさ」


 おっしゃる通りです。

 暇があるときに練習するかね。

 カグヤ、レーティアに教わってたらすぐにうまくなりそうだ。

 ポーラもそれで覚えて、プレイしてみようか。


「はい! 頑張りますので一緒に遊んでください」


 まあポーラに追い抜かれる未来が目に見えてるけどな。



感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。


昨日のサブタイトルの件でアドバイスをくださった方ありがとうございます。

あまり手抜きとか思われていないようなのでよかったです。

とりあえず現状維持にします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ