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#190 イザヨイへの帰還

「地上の風土病ではありませんね。やはり少しはしゃぎすぎというか、スケジュールがタイトでしたかね」


 別荘の寝室か、もしくは病院に運ばれるかと思ったがイザヨイ内の隔離部屋に運ばれる。

 ここは宇宙船内で空気感染する恐れのある病気になった場合に使われる部屋で、空気管理が別の系統になっているため今回酸素を抜いていないのだという。

 一応今は医療ポッドに寝てはいるが、客室のように生活するための一通りの設備はある。


「とりあえず熱は下がったようで安心しました」


 地上でレーティアと黄色ウサギの応急処置後、白・黄色ウサギに運ばれイザヨイへ搬送、そしてここでの医療行為で体調は回復しつつある。

 しかしまあ宇宙港も倒れた人が運ばれるなどびっくりしたのではないか?

 地上の病院行けとよく止められなかったもんだ。


「よくありますからね。地上の病院にかかると高いから節約の為に自分の船の医療ポッドに入るということは」


 宇宙を旅する以上、医療ポッドは下手すると地上のモノより高機能な場合もある。

 緊急性を有しない場合は戻った方が安上がりになるらしい。

 今回の場合はポーラはパニックになっていたが、発熱のみで緊急性はないという判断と、俺は地上より宇宙船のほうがのんびりできるだろうという判断からイザヨイに搬送された。


「ポーラはよほど船長と遊べるのが嬉しかったのでしょうね。あれこれと動きまくってましたね。レーティアのフォローが追い付かないくらい暴走するとは予想外でした。申し訳ございません」


 カグヤが殊勝に頭を下げる。

 まあポーラはちょっとはしゃぎすぎてた気がするがな。

 俺が熱を出したと知って青ざめて泣きながら謝ってたが、まあ気にするなと言っておいてくれ。


「了解しました」


 レーティアも落ち度はないから叱ってやるなよ。


「叱る気は元よりありません。今回の地上でのトラブル回避は問題はありませんでしたし。ただ病気は想定外でしたので後で反省会はします。やはりいろいろと検証しておきませんと」


 ほどほどにな。


「船長はしばらくゆっくりとしておいてください。お酒以外でほしいものがあったら何なりと言ってください。ネット環境も整えていますので不自由はないと思いますが」


 あいよ。

 てか流石に病人には優しいな。


「私的には船長を評価していますよ。3日持たないかなと思っていたのに5日も頑張ってくれましたからね。リハビリにしては上出来ですよ」


 リハビリ扱いかよ。

 てか3日で帰ってもよかったのか?


「船長が本気でイヤなことを無理にさせるわけないですよ」


 なるほど。

 俺は口ではイヤだイヤだと言ってはいるが面倒事を避けるタメのポーズである。

 甘えといってもいい。

 ケツを叩かれたらしぶしぶ動くが、やってみたら楽しいということも多々ある。

 その辺まで計算づくというのはドラゴンとは本当に恐ろしい。


「その恐ろしいドラゴンから恐れられてるドラゴンスレイヤーに言われると複雑ですね」


 お互いさまということで持ちつ持たれつといこうではないか。

 とはいえ俺が一方的に持たれかかっている気もするがな。


「そんなことないですよ。船長は創造主の対応をしてくだされば。あとできれば創造主から私を守ってくださればありがたいです」


 一番めんどくさいことを頼まれた。




 現在この場にいるのは俺の白ウサギと医療用の黄色ウサギのみだ。

 カグヤは酸素のない艦橋にいるのだという。


「そちらに行ってもいいのですけど、狭くなりますしね」


 まあ確かにな。

 あとウサギどもは俺の用が済めば隅っこで待機しているから人形がいるようなもんだが、人の姿をしたカグヤにいられると妙に落ち着かない気分になる。

 そういった意味ではモニター越しがありがたい。

 最初に俺が宇宙船乗った頃はこんな感じだったな。


「そうですね。あれから1年と半年が経過しました。色々なことがありましたが船長はあまり変わりませんね」


 そうか?


「ええ、本当に変わりません」


 というか今までブラック企業で働いていた人間がまさか予想もしていなかった宇宙に来たんだから、最初は常識の違いに戸惑いまくっていた気がするが?


「最初から適応力が半端なかったですよ。なんでこんな感じで大丈夫なのかと私は随分悩みましたもの。もうちょっと戸惑って、生活に慣れるまでひと悶着あると思ってましたもの」


 どうにも俺の戸惑いとカグヤの予想には大きな隔たりがある。


「ここまで宇宙空間でのストレス適性が高いとは思ってませんでした。一般的に人をいきなり宇宙船に乗せたら数日で精神の変調が起こるという検証もあるくらいですかね」


 まあ正直宇宙船に乗っている感覚はなかったがな。


「それが適応力が高いということですよ。まさか船長が二日酔い以外で本格的に医療設備を使うまでに1年半かかるなんて思いもしませんでした」


 そうはいっても俺、地上にいるときも病院なんて滅多に行かなかったけどなぁ。


「環境が変わったら少しは身体に変調を感じるモノなんですけどね」


 地上に降りるまですこぶる元気だったしな。

 むしろ少々何かあっても生前のクズノミヤよりましと思うと何でも耐えられると思うんだ。

 いや、まあ今回は耐えれなかったけど。


「まさか船長にとって地上での休息がブラック企業で働くこと並みの苦痛とは思いもしませんよ。本当に船長っていまだにデータ不足で解析不能ですね」



感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。


予約投稿なので今頃酒を飲んでいるはずです。


場合によっては明日も飲み会になるかもしれません。

そうなった場合は予約が間に合いませんので投稿を休むかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 統計的に、万人に良いことが特定個人には害悪なんてよくあるしな。 カグヤの地上強制、ポーラの魚好きや正義感。それらは結局レオンと同じになってないかな。 自分はいいと思った。自分が好きだから、楽…
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