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#188 リハビリ患者のボヤキ

 海でポーラとレーティアがはしゃぐ姿を見ること数時間。

 眼福と彼女たちを眺めたり、ボーッと海を見ていて過ごしてはいたが、いかんせん暑い。

 ここ1年、温度が一定に管理された宇宙船にいたものだから太陽の下、こうをジリジリと肌を焼かれる感覚がつらい。

 スーツを来ていれば温度管理されるからまだ楽なのだが、海で半裸はつらいな。


「自然を全身で感じることが更正の第一歩ですよ」


 と端末からカグヤが言ってくる。

 てか更生って。

 引きこもりは病気じゃないぞ。


「生活習慣的には病気と認定してもいいかと。早く立ち直ってください」


 ひどい言われ方だ。

 てかお前はイザヨイ待機のままか?


「メンテナンス中ということもありますが、搭乗員はともかく管理頭脳が宇宙船からいなくなるなど普通はありませんしね」


 俺も残りたい。


「もう酸素は抜いていますよ」


 いま思ったのだが全区画で一気に空気を抜くことはあるまい。

 メインユニット抜いている間は俺はサブユニットに行けばいいのでは……あれ?


「どうかしましたか?」


 あそこに庭園あったよな。あそこは空気を抜けないだろう。


「もちろん抜きませんよ」


 ああいうとこほど虫がいるだろうよ。

 あそこをスルーするなら俺だってスルーして居座らせろ!


「気が付くのが遅かったですね。もう庭園以外の空気を抜きましたので手遅れです」


 くそ!

 地上の重力のせいか頭の回転が遅い!


「あり得ない言い分ですね。まあのんびりしてください。レーティアから聞いたでしょうが地上ではトラブルを回避するように全力でフォローしていますから」


 リハビリ患者扱いの気がするよ。


「そうですね。手術した患者にお粥、いえ重湯を提供するレベルで気を使っています」


 なあ、その気遣いを別の方向に向けてくれないか?




 日が落ち、貸別荘でバーベキューをすることになった。

 俺は正直バーベキューは昔から苦手なのだがポーラが準備すると張り切っている。

 まあ仕方ないかと諦め、椅子に座って様子を眺める。

 俺みたいな引きこもりにこういった外でするリア充イベントは向いていないのだが、その俺がまさか女の子とこういうことをすることになるとは不思議なもんだ。


 ポーラは水着の上にパーカーを羽織っている。

 だいぶ見られることに慣れたようで生足を見られるくらいは気にしないようだ。

 ちなみにレーティアはスク水の上にエプロンとさらにマニアックな姿になる。

 この子はいったいどこを目指しているのだろう?


「キャプテン、どうぞ!」


 ポーラが串にささった肉を持ってくる。

 暑い中、炭に火がついたグリルの前で、外で食べることに何のメリットがあるのだろう、と心の底からそう思うのだが、思いつめた表情でこっちを見ているポーラを前にそんなことも言えず、一口食べて美味いとお世辞を言う。


「よかったです! どんどん焼きますから」


 顔をパーッと明るくしてそう宣言する

 いや、そんなにいらないけど。

 あと自分も食べなさい。


「はい!」


 ちなみに肉と野菜ばっかりだけど魚はないのか?


「えっと、焼きたかったんですけど……やったことがないので失敗すると恥ずかしいので」


 ああ国では戒律で食えなかったからそりゃあ焼いたことはないわな。

 貝とかなら置くだけでいいんじゃないかな?

 とはいえレーティアすら口出しせずにポーラに任せている以上余計なことは言わないでおこう。




 さてポーラの様子がどうにもおかしい。

 いちいち俺の反応をうかがうようになっている。

 おかしい。

 基本、恋愛フラグは断ち切ってきたつもりだし、どちらかというと娘のように接してきたつもりであった。

 特に意識される要素はなかったはずだ。

 今回は助けに行ったが、別にさっそうと登場したわけでもないし、カッコよく助けたわけでもない。

 レオンみたいな価値観に振り回されて混乱しているだけだと思いたい。

 

 


「あの、今日は、助けに来ていただいてありがとうございます」


 焼くのをレーティアに任せてポーラは食べ始める前に俺にそういう。


 あいよ、まあ気にすんな。


「ですが、あれだけ反対されていたのを私のわがままで強行したというのに、キャプテンは苦手な地上にまで降りてくれて助けてくださいました」


 そこまではまあ予定通りだったんだけどな。

 その後にまさか足止めされるとは。


「あの、カグヤさんには私からも早く帰れるようにお願いしますから」


 無駄だと思うけど頼むよ。

 

 それはさておき、少しは気持ちの整理ができたか?


「……そうですね。あの人は悪意はなかった気がします」


 それは同感だ。

 根本的に悪いことをしたとは思っていないんだな。

 まず場が盛り上がればいい、それが最初にあったのだと思う。

 それから自分が中心に笑いが起きればいい、自分が楽しければみんなも楽しいはずだと思うようになり、だんだんエスカレートしていったんじゃないかな。

 場当たり的なというか、瞬間的には面白いけど、長くあのテンションでいられるとだんだん疲れてついていけなくなるんだよなぁ。

 10代なら怖いもの知らず、20代なら大人になり切れてないとまだ笑いで済むが、30代40代になっても変わらずあの感じだと同世代はついて行けない。

 少年のような心を持った大人と、子供のままの大人では意味が違うのだよ。


「正直なところ、どうすればあの人を悔い改めさせれるのかも、被害にあった人をどうすれば救えるのかまださっぱりわかりません」


 だよな、俺だって結局先送りだしな。


「ですのでこれから考えていこうと思っています」


 そうかい、まあボチボチやんな。


「はい。ですのでキャプテン……」


 とポーラが真っ直ぐ俺を見つめ、少しためらった後に、


「待っていて……くださいね」



祝というべきかまさかの200話です。

見切り発車で始めてよくここまで続いたなと思いながらも、読んでくださる人が予想以上に多いので調子に乗った結果でしょうかw

ブタもおだてりゃ木に登るとはよく言ったものです。


これからもまだ書く意思はありますので応援してくだされば嬉しいです。


謝辞やら今後の予定はこの下の「作者マイページ」からの「活動報告」や、そこにリンク張ってるツイッターでつぶやいたりしています。

興味のある方はご覧ください。

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