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#187 水着回

 こういうのをなんて言うんだっけ?


「白い砂浜、青い海、きらめく水面は果てなく広がり、潮の香りが高揚感を誘うとかは?」


 誘われないな。

 なんで俺ここにいるんだろう?

 俺にリア充的なイベントは向かないんだけどな。


「マスター、本当に往生際が悪いね。ここまできたら素直に楽しもうよ」


 と、スク水を着たレーティアに言われる。

 俗に言う旧スク水というもので、胸にはひらがなで「れーてぃあ」と書かれていて芸が細かい。

 なぜそのチョイス?


「日本人ってコレが好きなんじゃないの?」


 人によるとしか。

 しかし自称ハタチとはいえ、見た目ロリのこの子に際どい水着を着られるよりはこっちの方が正解だとは思うぞ。


「とりあえず素直に誉めてよ」


 きっとイザヨイの中なら誉めてたよ。

 たぶん地上の重力が俺を押さえつけるんだ。


「いや同じ重力なんだけど?」


 いや空気からして重い。


「気のせいだよ」



 白ウサギが持ってきたアイスコーヒーを受け取りパラソルの下で飲む。

 海なんて中学以来だな。

 1年以上も青ウサギ指導の元、トレーニングしてきたおかげで中年太りは解消され、人様に見られても恥ずかしくないレベルになった体で海パン姿になっている。 

 まさか30年ぶりの海水浴が他星の海とは人生本当になにが起こるかわからないものだ。



 しかしこのビーチ、人がいないな。

 シーズンオフなのか?


「違うよ、プライベートビーチ付きの別荘を借りたんだよ」


 ……それは豪勢だな。


「本当だよ、お金かかってんだからね」


 まあそうだろうな、でもなんでわざわざ?


「マスターのせいだよ!」


 俺の?

 なんでさ?


「僕はせっかくの水着回だからエキストラ雇ってポーラ姉をナンパさせて、マスターに助けに行かせるイベントとかするつもりだったのに!」


 レオンの件が片付いたタイミングでそれはやめておけ。

 あとあの子は格闘技してて俺より強いはずだから助けは要らないと思うぞ。


「あとナイスバディなコンパニオンを雇ってマスターにラッキースケベイベントと思ってたのに!」


 ……それは少しは興味があったが。

 知り合いにされて気まずくなるのはご免だが、知らない人ならオーケーなんだが。


「でもカグ姉に止められたんだよ。『船長は初めて地上に降りたんだから今回はそれでよしとしましょう。ここで何かイヤなことがあったら地上嫌いになります。せっかく降りたのだから[まあまあ良かった]までいかなくても[思っていたほど悪くはなかった]と評価してもらうようにしましょう。ですので極力、人に会わないようにして、トラブルを回避してください』だって」


 さすがはドラゴンと言うべきか、あいつは俺のことを理解しているな。

 正解だ。

 確かにここで揉め事が起きたらそれを理由にどうせ面倒事が起きるなら宇宙船のほうがマシだと言い張ったことだろう。


「だから人の集まる浜辺から離れた場所の別荘をわざわざレンタルしたんだよ」


 人の多い場所は当然ながら海の家やら貸しボートやらの施設が充実しているという。

 この星は宇宙船の往来が多いので地上のリゾート地は繁盛しており、出会いを求める人はこぞってその浜辺に行くらしい。


「宇宙は孤独だからね。人と触れ合いたいんだよ」


 軟弱なことだ。

 俺なんかいまだに人と話したくないぞ。


「本当に特殊だよね」


 ほっといてくれ。


「そんなマスターの為に、この貸別荘に至る道にはウサギたちを配置して、入ってこないようにしているんだよ」


 おお、まさかそこまで徹底しているとは。


「だからしばらくここで海を楽しんでよ。半月ほどたったら山に行こう」


 いや、もうそこの貸別荘で引きこもるよ。


「ポーラ姉もいるんだってば! ずっと海ってわけにもいかないでしょう?」


 別行動でもいいんじゃね?

 

「せめてポーラ姉の精神が安定するまでは一緒にいてあげてよ」


 俺の精神も心配してほしいもんだがな。

 初めての地上だぞ。


「正直マスターはもっと雑に扱っても平気だと思ってるよ」


 それがバレないように生きていきたいもんだがな。




「あ、あの……お待たせしました」


 相も変わらずレーティアと不毛な言い争いを続けているとようやくポーラがやってくる。

 ……ほう。

 ポーラのことだから露出の少ないワンピース(スク水ではない)かフリルが多いセパレートタイプかなと思っていたら白色を基調としたビキニを着て登場した。

 思った以上に出るところは出ているスタイルで、10代の若さ溢れる肉体が目を引く。


「よく似合ってるよ、ポーラ姉。ねえ、マスター」


 ああ驚いた。

 良く似合ってるよ。

 とてもかわいい。


「――――!」


 ポーラは顔を真っ赤にして体を隠すように縮こまる。


「やっぱり、無理!」


 無理って。

 まあ俺ら以外に誰もいないんだから気にせず泳いで来い。


「誰もって、……でも」


 真っ赤な顔で俺を見る。

 とりあえずにっこりとほほ笑むと、


「お、泳いできます!」


 とポーラは海に走っていった。


 そこまでセクハラ視線を送ったつもりではないのだが、悪いことをしたかな。


「最低だよ」


 まあ最初だけだよ。

 しばらくしたらすぐ慣れるよ。


「そんなもん?」


 そんなもんだ。


「なら一緒に泳いで来たら?」


 それはレーティアに任すよ

 俺はお前らの肢体を楽しみながら酒でも飲むよ。


「いや、それセクハラだから!」



今日はとてもいい天気でした。

一年の半分以上を共にしているコタツを片づけました。

布団を干すときの青空を見てとても心地よかったです。


私に宇宙船生活は無理かもしれませんw

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