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#186 陰謀

 忌々しく照りつける太陽の日射しは俺の身体を攻撃するように降り注ぎ、生温い風が俺の頬を撫で嫌悪感を誘う。

 宇宙船に慣れた体にはなんと苦痛な環境だろうか。


「ねえマスター。そこは柔らかな日射しとか、心地よい風と表現するところではないかな?」


 なあ、レーティア。

 そんなことを思う人間が1年以上も宇宙船で引きこもれると思うのか!


「逆ギレしないでくれるかな? 降りたら少しは考えを改めるかと思ったんだけどな」


 降りたくなかった。

 俺の聖域に引きこもっていたかった。


「ポーラ姉の為だったんでしょう」


 レオンに会いに行くことをあきらめさせるというのが最善策だったが、次善策としては早急にフォローするのが正解と言う意見はカグヤに言われなくてもわかってはいた。


 しかし俺が地上に降りる必要性があっただろうか?

 レーティアに助けに行かせてすぐ連れ戻せばいいのではと言うと、


「絶対に降りない船長が行くことに価値があるんですよ。するとびっくりして頭が真っ白になるでしょう。すると話が早いですよ」

「僕が行って意固地になってそのままホテルについていったらどうするんだよ!」


 と脅される。

 確かにポーラの身は案じている。

 あんな話の通じない男に振り回されたあげく弄ばれ、心身ともに傷つく様を見たいかと言えばノーである。


 だからポリシーを曲げて地上に降りて、ポーラを救いにいった、そこまではいい。


 だがイザヨイに戻れないというのは卑怯じゃないか?


「搭乗員がいないなんて久々だからね、そりゃあ宇宙船の空気を抜くよ」


 レーティアの話だとどんなに対策しようとも入荷の際、害獣・害虫がまぎれるという。

 もちろん入り込んだ場合の駆除対策もしているのだが、一番効果が高いのは一度宇宙船の酸素を抜き、一定時間待つ。

 それでも抜けきらないわずかな酸素で生き延びる虫に対して殺虫剤を充満させる。

 効果が出るまで待ち、その後クリーニングして酸素を注入する。

 その期間は1ヶ月だということだ。


 ――謀られた!


 このままポーラ連れて帰るつもりがなぜこうなった!

 引きこもりを外に出して何が楽しいというのだ!

 誰にも迷惑かけずに引きこもっていただけなのに。


「いや、じっと居座られると大掃除もできないんだって」


 大掃除より大事なモノだってあるだろう?


「そりゃああるだろうけど、マスターの引きこもることはそれに入ってないよ」


 くそ、この管理頭脳とは話が合わない!


「僕もなんでこんなに話が合わないのか本当に理解に苦しむよ」



 さて現在俺たちは先ほどまでポーラとレオンが話していたカフェにいる。

 レオンは立ち去り、ポーラは化粧室に顔を洗いに行っている。

 この場には俺とレーティアの2人だけである。


 しかし他所の星のカフェに初めて入ったが、地球でもありそうな感じの造りである。


「そうだね、フィ=ラガでも似たような感じだったよ。結局人間が使うのに適したのってあまり変わらないんじゃないの?」


 そうかもしれない。

 テーブルに設置されたタブレットで注文すればこの店のドリンク専用の管理頭脳が運んでくる。

 そして腕の端末で支払いをする。

 なるほど、この辺はちょっとスペースオペラっぽい。


「そうかなぁ? 地球の電子マネーと同じようなものだよ」


 俺、生前一度も電子マネー使ったことないな、現金派で。

 生まれて初めての電子マネー決済が宇宙とは人生何が起こるかわからんもんだ。


「まあマスターだけだよ、そんな特殊なの」


 てか店員はいないんだな?


「そりゃあ無理に働かなくていい世界だからね。飲食業だの接待業はあまり人気がないんじゃないのかな?」


 そうだった、地上はそういう世界だったな。

 憎い、本当に憎い。

 この星の住人もだが、地球のドラゴンを滅ぼしたご先祖様も憎い!


「マスター、今日いつも以上に絡みづらいんだけど? 地上に降りて本当に情緒不安定になってる? それって人としてどうなの?」


 もう帰りたい。

 せめてホテルに引きこもりたい。


「もうちょっと頑張ってよ。これから海に行こうって言う話でしょう? ポーラ姉の水着も見れるからさ」


 あとで映像だけ送ってくれないか?


「今ポーラ姉を1人にするのは不安でしょう?」


 俺を1人にしないのも不安じゃないか?


「まあどっちも似たようなものだけど、まだマスターのほうが大人だし、今までずっと引きこもってたんだから家族サービスだと思って我慢してよ」


 と娘のような姿の管理頭脳に諭される。

 ふぅ、ホント世の中ままならないよな。


「僕のセリフだよ!」



「すみません。お待たせしました」


 レーティアとの終わりの見えない不毛な歓談に終止符を打つポーラの帰還。


「はーい、じゃあみんな揃ったから水着回に行きましょう!」


 俺の言い分もアレだが、お前のその言い方はどうかと思うぞ。



ポーラ編にて感想をたくさんいただきました。

「船長が船から降りた!」と言うために久々にログインしたという人も何人かいらっしゃいまして、そこまでか?とw

あと天変地異は起きませんw


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― 新着の感想 ―
ログインしてでも書きたくなるの理解できる笑 立った!クララが立った! くらいのインパクトとニュアンスで 出てきた!船長が出てきた! だからねw なう(2025/08/07 01:03:08)
[一言] あ~地上に降りちゃいましたNe−
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