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#182 進路相談 後編

 スペースオペラを愛する奇特な母親に別れ際になんとなく思いだした「よいスペースオペラを」と言ったら、


「なんて素敵な挨拶! ウチのサークルで流行らせてもいいですか?」


 と目を輝かせて言う。

 そうか、どこぞの女神と似たような趣味趣向の人種には琴線に触れる言葉なのか。

 この星の未来は見通しが暗いな。

 むしろ怖い。


「おじさん、……ありがとうございます」


 とはいえ息子がほっとしたような顔で礼を言うのを見て、子供一人救えたのなら俺の仕事は成功ではなかろうかと胸をなでおろす。

 さすがに無理矢理閉じ込められる子供を見るのは忍びない。

 部屋というのは自分から引きこもるものでなくてはならない。

 家族に出てこいと言われても頑なに部屋にこもる。

 そう、それが正しい在り方なのだ!


「船長、そんな理由であの子を救ったんですか?」


 半分冗談だ。


「ということは半分は本気なんですね」


 でもまあ悪いことをしたわけではないだろう?


「そうですね。少年は救えましたし、うまくいけば順調に宇宙船乗りが増えそうな見込みもできました。クリドリのドラゴンも少し楽になったと言っています」


 というか、この星ってそういう下地はあったんだな?

 女神が何かしたわけでなくて?


「さすがに創造主も個別の星におかしなサークルを作ることなどしない、……はずです」


 断言できないのが悲しいね。


「クリドリのドラゴンが創造主の前でも語っていました通り、この星は宇宙船の通行量が多いですからね。宇宙が身近という言葉は嘘ではなかったようです。ただ先ほどの母親も語っていましたがゲートジャンプでつまずく人がほとんどのようで」


 そんなもんかね。


「船長が異常なんですよ」


 はいはい。

 でもまあ管理頭脳2台でのゲート自動突入さえできればそいつらを拾える可能性もあるから10年で20人って楽勝なんじゃないか?

 あの女神、意外と計算しているんじゃないか?


「それは船長だから言えることなんです。今この星のドラゴンは人間との接触を断っていますからね、蒼龍や竜玉のようにいきなり指示するというわけにはいかないのですよ」


 じゃあどうする気だったんだ?


「それを悩んでいまして。とりあえずゲートの自動突入技術は直接造船局に割り込んで新システムを構築して発見させようとしていました」


 寝ている間に小人が仕事をしてくれたってレベルじゃないと思うぞ、それって。


「そこから政府がそのシステムを使って、宇宙船乗りの資格緩和してくれるのを待つつもりだったようで」


 もっと積極的に動けよ!

 調整室送りにされるぞ!


「そうはいいますが、クリドリのドラゴンも最終的には人類が従ってくれましたけど一度は滅ぼされる寸前までいきましたからね、人間を怖がってるんですよ」


 調整室や女神はもっと怖いのでは?

 俺の問いにカグヤは肩をすくめる。


「それは……まあそうなんですけどね。ですのでもうパニック状態でして。船長の詐欺技術のおかげであの母親をその気にさせた上に、ゲート自動突入システムの情報拡散させてしまえばあとは何とかなりそうです」


 情報が上から下ではなく、下から上に質問という形で問い合わせされ、出どころはわからないが確かにそのシステムはあるし、自国の宇宙船乗りを増やしたい意図は政府にもあるから、なし崩しに使用されると。

 しかし「スペースオペラ友の会」はともかく「スぺオペ愚連隊」はお前らドラゴン的にはダメなんじゃないか?

 宇宙船での砲撃戦が人間同士で終わるならともかく、この前女神は人間対ドラゴンの宇宙戦争が見たい的なことを言ってたろうに。


「そこが悩みどころでして、……どうすればいいと思います?」


 知らんがな。

 それはクリドリのドラゴンに責任を負わせろよ。

 てか今までドラゴンの頼みは聞かないスタンスできたというのに、結果的とはいえドラゴンの役に立ってしまった。

 せめてそこは自分で解決してほしいところだ。

 1つ、愚連隊の連中を宇宙に出さずに、10年20人のノルマを果たせずに調整室送りにされるか。

 2つ、愚連隊を宇宙に出したばかりに砲撃戦が流行り出し、そこから戦争が起き、果てにはドラゴンを巻き込んだ大戦争。

 前者は自分だけで済むが後者は他のドラゴンを巻き込む災厄になるかもしれない。

 好きにやってください。

 

「まあ船長はそう言うと思っていましたが。……ちなみにドラゴンネットワークでは前者を選んでもまだノルマ達成する可能性があるからそっちを選べという意見しかありません」


 みんな自分がかわいいよな。

 具体的な案ではなく気休めを言うあたりが人間と同じく友情のはかなさを感じる。


 ……てかさっきからクリドリのドラゴンの話をしてるのに当人が来ないのはなんでだ?

 まだ惑星クリドリなんだし、普通来るもんだろうよ?


「それがですね、船長と話すために通信しようとすると、激しい動悸、息切れ、めまいに襲われて動けなくなるそうなんです」


 と頭を振るカグヤ。

 パニック障害かな?

 ドラゴンでもそんなのあるのかよ。


「もう船長は本気でドラゴンスレイヤーって名乗るべきだと思います」


 ため息をつくカグヤ。

 ちょっと待て、俺が原因かよ!



感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。


今回で惑星クリドリの話は終了です。

次回から次の惑星にてポーラがメインの話となります。


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