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#180 復讐を誓う皇子と怠惰なドラゴン 12

「本当に世話になった! アキラよ、感謝する!」


 5日後、シンは先に出航することとなった。

 その間マシなものを食べたせいだろうか、妙に肌の色つやがよくなった気がする。


「ぜひ我が惑星に寄ってくれ。その時は国を挙げてこの礼をさせてもらう!」


 いやそんな大事はご免被る。

 それよりも国のゴタゴタを片づけておいてくれよ。

 いっておくけどそれには手を貸さないぞ。

 俺らが行った時にお前が囚われていると聞いても無視するからな。

 だから、自分で片をつけるように。


「当然だ! 我が悲願は我で晴らす」


 と胸を叩く。

 その意気だ、まあがんばれ。

 ピンクと黒とオレンジも頼むな、あとで迎えに行くからな。


 俺の言葉にシンの後ろで敬礼する3体のウサギ。


「こ奴らは大事に使わせてもらう。必ず返すので絶対に我が母星フォースフルに来てください。約束ですよ」


 へいへい、善処いたします。

 

「ポーラにも世話になった。その、いろいろ助かった、感謝する」

「いえ、キャプテンに比べたら些細なことです」


 数日でなにか打ち解けた感がある2人が会話を交わす。

 復讐反対派のポーラとは話が合わないかと思っていたのだが、復讐ということをさておけば同世代のせいか話が合うこともあるのだろう。


「それでも助かった、そなたにも礼をしたいのでぜひもう一度」

「はい。必ず。シン様のご無事をお祈りいたします」

「受けよう」


 ジュメルもなんとかうまいことやってくれ。


「かしこまりました」


 再会する日を心待ちしておりますと社交辞令でも言わないあたり、こいつにも警戒されているのだろうか?

 特に何もする気はないのだが。



 カグヤの話だとドラゴンネットワークは今回の件で大炎上中らしい。

 旧ジュメルと同じく滅んだドラゴンは余計なことをすれば旧ジュメルのような目にあい、何もしなくてもカグヤや新ジュメルのように宇宙船の管理頭脳にさせられるかもしれない。

 そうなると俺と出会ってひどい目にあわされるかも知れないと……失敬だな。


 またクリドリのドラゴンのように宇宙進出した惑星のドラゴンでもウカウカしていたら無理難題を押し付けられ、達成できなければ調整室送りなのかと、どうする、どうすればいいと阿鼻叫喚。

 しまいには俺のせいにされても困るんだけど。


 あんな女神という名の魔王に従っておいて、いままで何もせず、呑気にしてた方が悪いと思うぞ。

 だいたい蒼龍の時にその兆候はあったのだからお前らの危機管理能力が低すぎなだけだと。

 そもそもお前たちがちゃんと働いて宇宙にスペースオペラが溢れていたら俺が呼ばれることもなかったわけで。

 ふざけるな、ドラゴンども!

 ハリセンでシバかれたくなければ働け!

 俺は引きこもる!

 と言う主張を声を大にして言ったら、カグヤに、


「最近、船長は創造主の代行者なのでは? と思い始めています」


 失敬な!

 あれよりマシだろう。


「似たようなもんですよ」


 と言ったカグヤは随分と遠い目をしていた。




 シンの出航を優先させていたので、イザヨイに物資の搬入が完了するのはあと5日かかるという。

 その間は約束通り引きこもってもいいとカグヤが許可してくれた。

 痛い思いして女神の矢面にたった甲斐があったというものだ。


 さあ引きこもるぞと、艦橋を出ようとしたときに浮かない顔のポーラと目があう。

 

 ……どうした?


「……よくわからないのですが、キャプテンとシン様を見てたらなんか、妙な気分になりまして」


 妙とは?


「なんて言えばいいのでしょう?」


 ポーラが胸を押さえながら言葉を探すが出てこないようだ。


 なにかね?

 俺はてっきりまたリアルBLって言われるのかと思っていたけど。


「「「えっ!?」」」


 俺の言葉に三人がハモる。


「キャプテン、気づかなかったのですか?」

「船長にしては珍しいですね」

「ちょっと待って、気がつかずにあれだけ世話焼いたの?」


 ……もしかして女の子とか言わないよな?


「女の子ですよ」

「まごうことなく女の子です」

「マスターの国で言うところの男装の麗人だよ。男の娘じゃなくて残念だけど」


 ……皇子って言ってたろう?

 皇子って男だろう?


「男女問わない場合もありますけど、この場合はちょっと特殊でして。宇宙船の事故で亡くなったのは父親と妹と言っていましたが、本当は父親と兄でして」


 はて、ってことは?


「シンビオスとは死んだ兄の名前です。皇女だと舐められるかもと思い、男装し兄の名を使い、復讐を成そうとしたようです。ちなみに本当の名はシンシアと言います」


 ああ、シンはあってるんだ。

 そっか、女の子か。


「見た目、女の子でしたよ」

「しぐさとか口調でわかりませんか? 時々おかしかったですよ」

「体つきも細かったよ」


 すみません。

 皇子と聞いてから固定観念でそう思ってた。

 てか別に女の子だからってやることは変わらないし、特に問題なかったろう?


「…………」


 俺の言葉に女性陣の冷たい視線が突き刺さる。


「問題というと少し違いますが……」

「心の弱っている子に優しくしすぎましたね」

「フラグ立てまくったよ」


 具体的に何が起きたと?


「惑星フォースフルでは王族が異性とファーストネームで呼びあう関係は婚約者候補以上にしか許されません」


 そんなこと言われても知らんがな。


「あとこれはフォースフルでは一般的な常識なのですが、男性が女性に真珠を贈ることは求愛を意味します」


 だから知らんがな。

 てか贈ったんじゃないぞ、道中の路銀に使えって言ったろう。


「問題は船長はそのつもりでも相手がどう受け取ったかですね」


 と言うカグヤ。


 まあ考えてみよう。

 俺的にはシンは男と思っていたんだし、ただの親切心だったわけだ。

 シンの国の風習などまったく知らないわけで。

 ……セーフじゃねぇ?


「アウトではないかと」

「アウトですね」

「スリーアウト。てか往生際が悪いよ」

 


感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。


今回で「復讐を誓う王子と怠惰なドラゴン」編終了です、いかがだったでしょうか?

大事なことですのでもう一度言います、「復讐を誓う王子と怠惰なドラゴン」編です。

けっして「女神来襲」編とか「ドラゴンの悪夢」編ではありませんw



シンには悪いことをしましたが再登場時に頑張ってもらいましょう。

正体に関しては引っ張ってもよかったのですが、女神無双が控えていましたので印象の残るうちにと思い、こんな感じでw


さて昨日も予告しましたが次回は最短で土曜となります。

ご容赦ください。

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― 新着の感想 ―
これには女神もにっこり笑 なう(2025/08/07 00:08:51)
[一言] ナルホド、何話か前に皇女殿下でブロックゲフンゲフン
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