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#19 ドラゴンとの飲みニケーション

「船長は最初はビールですか?」

「2、3杯はな」


 一応付き合いか、俺の対面に置かれた移動式モニターのカグヤもビールの注がれた中ジョッキを用意している。

 器用なもんというか高機能というか?

 俺が乾杯とジョッキをあげると同じしぐさをする。

 画面越しだが人間にしか見えないんだが?


「この姿自体、日本人をモニタリングして作り上げた合成写真と言うか動画と言うべき代物でして」


 CGみたいなもんか?


「それの高性能版と思ってください」


 SF万歳ってとこだな。

 深くは考えない。

 昼メシのときにあらかじめピンクウサギに頼んでおいた豚の角煮と牛スジ煮込みをつつきながら、


「どの管理頭脳もそんな感じなのか?」

「いえ、ここまで高性能なのはドラゴンだけですね。古来から人間に試練を与えるために天使になったり神獣になったりするための機能です。一般的な管理頭脳はウサギたちのようにあらかじめ決まったキャラクターを動かしてますね。宇宙船のメインシステムなどで私のようにモニターに出す場合でも人間タイプはあまり使われませんね。一人で宇宙船にいて、画質に違和感がある人形やCGだとだんだんと嫌になるようで、アニメーション的な絵や動物、システムロボットが使われています」


 そんなもんかな、ピンクウサギ、ビールおかわり。


「暫定的にこの姿をしてますが私もいつでも姿は変えられますので、ご希望があればご遠慮なく」

「もう慣れたし、その姿でいいよ」


 ピンクウサギからビールを受けとるが何か言いたそうだ。


 味はどうか? 

 どっちもうまいよ、強いて言うなら牛スジはもっと小さめで柔らかい方が好みかな、いや、作り直さなくていいから。

 あとおでんを卵と大根、こんにゃくとちくわはもう生産プラントでできたんだっけ? 

 じゃあそれも持ってきて。


「日本の実在のアイドルとか女優、アニメキャラにもなれますし、声も変えれますが」

「それやると変な性癖を覚えそうだから遠慮しておく。ちなみに立体映像とかはできないのか?」

「できますよ、昔は夜空にドラゴンを投影して人間に試練を与えたものです」


 そんな胸はって言われても微笑ましくないぞ、そのエピソード。


 おでんを受けとりビールジョッキを返す。

 次はこの前見つけた焼酎っぽいやつを飲もうか。

 適当に湯割りで持ってきて。


「ちなみに現在の技術でもこの程度のことはできます」


 移動式モニターが片づけられ、俺の前の席には人が座っていた。

 等身大のカグヤと一見して見てとれるがモニターに比べて若干映像が荒い。


「ご覧の通りです。もっと暗い場所で専用の映写機を使えばもう少しマシになりますが。一部の映画やコンサート映像で使われることもありますが人気がないですね。画質もそうですが近くにいても気配、音や温度、匂いを感じませんのでもっぱら遠隔での会議くらいでしょうか」


 なるほど。

 それでも俺からしたらすごいもんだなと感心する。


 ピンクから焼酎を受け取る。

 匂いから芋だな。

 濃さはこれでいいかって? 

 ああこんなもんでいいよ。

 今日はカウンターじゃないから運ぶの大変なら焼酎くらい酒瓶とお湯持ってきてくれたら自分でつくるぞ。

 大丈夫か。

 それならいいけど。


「俺の世界の未来にできると予想される技術として立体映像でテレビが見れるとか空中に画面を投影してどこでも大きい画面でコンピューターを操作できるとかあったけど」

「できますし、一時はブームになるんですけどね。手間のわりに大したことないというか、結局平面モニターや持ち運び用のデバイスにいきつくのですよ」


 俺の着ているスーツの左手首にある液晶が宇宙時代でのスマホということか。

 ただ俺の場合、基本白ウサギが呼べばすぐ来る位置に待機している。

 今だって食堂の入り口に一番近い椅子に座っている。

 食堂ではピンクウサギの担当なのか白ウサギは何もしない。

 ただ酔いつぶれたら医療室まで運ぶのは白ウサギで、医療室についたら黄ウサギが担当するようだ。

 分業制が行き届いているのでイザヨイ内部ではこのデバイス使うことあるのかなあ。

 いざってときのために少しは使えるようになっておくべきか。


 それはさておき、ピンク、焼酎違う種類を持ってきて。

 これは匂いがきついからちょい苦手とメモしておいて。

 

「地球で言うVRならそれなりに進化してますね。ゴーグルとイヤホンあとスーツですね。それを連動させることで視覚・聴覚・触覚をコントロールすることができます」

「そりゃあすごいな」

「遊戯室や衛生室に行ってみてください。体験できますよ」


 暇を見つけて行ってみよう。


「いつも暇では?」


 ほっとけ。


 

 次の焼酎はあんまり匂いしないけど。なんの酒?

 栗の焼酎ね。

 癖がないな、後味が少し甘い。

 この銘柄は丸つけておいて。


「船内で私を立体映像にする場合は今の状態か、ゴーグルつけてもらうか、あとは……そうですね。スクリーン的な素材を付けたマネキンロボ用意すればもうちょっとましな映像で、あと船長にお酌ができるかもしれませんね」


 そこまでしなくてもいいよ、スナックやキャバクラを求めてるわけじゃないんだし。

 たまには人と話しながら飲むのもいいかなって程度だよ。


「そうですか。ではこのまま船長にお付き合いさせてもらいます」


 それにもう酔いが回ってるので立体映像でも十分にきれいに見えるしな。


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