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#175 復讐を誓う皇子と怠惰なドラゴン 7

「晃君、久しぶり、ナイス スペオペ!」


 ハリセンでジュメルをシバきまくる様子を見ていなきゃ、そのよくわからん挨拶を突っ込む余裕があったのかもな。

 弓は片付けられ、犬は煮られ、そしてドラゴンはハリセンでしばかれるか。

 想定外の展開だった。


「ちなみにあのハリセン一発は人間でいうなら麻酔なしで歯を抜くレベルの痛みです」


 カグヤが後ろでぼそっと告げる。

 恐ろしいな、ハリセン。

 ジュメルはもう総入れ歯になるくらい叩かれてたよな。


 あとカグヤ、お前まだ俺の後ろに隠れる気か?


「まったくどうしてこの子はこんなに捻くれたのかしら? そんな風に育てたつもりはないんだけど。ねぇカグヤ」

「ま、まったくです。不思議です! 不可解です!」


 即答するカグヤ。

 だが腕のつかまれ方から察するに育てられた覚えはないというところかな。


「反抗期の子供を持つ母親ってこんな気持ちなのかしら?」


 世の母親がしつけにハリセンで子供が横たわるまでしばいたら事案だがね。

 児童相談所や警察案件です。


 それで気は済んだのかな?


「済まない! 済むわけがないでしょう! せっかくのスペースオペラが台無しよ! だからジュメルは連れて帰って調整室にぶちこんでおくわ」


「そ、創造主! お待ち下さい! このジュメル、猛省いたしています。もう1度チャンスを!」


 ジュメルは土下座して、懇願する。

 ちなみにカグヤの俺を掴む手が大きく震えだし、振り返ると顔も真っ青だ。

 なんだ、調整室って?


「蒼龍や竜玉への仕打ちが児戯に思えるレベルが待ち構えています」


 わかった、聞かないでおこう。


「チャンスってもうあなたにできること何もないじゃない! もうあの子、晃くんの説得に従って国に帰る気になってるし、帰ったらそこに犯人いるんだから、もう復讐はスペースオペラじゃなくてタダのお家騒動になったじゃないの! わかっているの、ジュメル! スペオペを汚した罪は重いのよ! 重罪なのよ! スぺオペ毀損罪よ!」


 イヤな罪もあったもんだな。


「しかし、まだしも国に着くまでに何か起きるかも、いえ、起こします! ですので!」


 不穏当な言葉だな、おい。

 シンにこれ以上不幸な目にあわそうというのか?

 家族亡くして1人で苦労してたんだぞ、ロクなものも食わずに。

 久々にメシを食べて泣くくらい苦労している子にこれ以上何かするというのなら俺にも考えがあるぞ。


 そんな俺の言葉に女神は優しく微笑む。


「心配しないで晃君。ジュメルのせいであの子にここまで苦労かけたから、ここからは楽してもらうようにするから。……ということでいらっしゃい」


 するとモニターにワイプが現れ、ジュメルそっくりの老紳士が礼をする。


「お初にお目にかかります。これより自分が、新ジュメルとなることとなりました。現在宇宙船の管理頭脳としての機能を構築しております。シンビオス皇子は自分が責任を持って母星にお送りいたします」


 新ジュメルは見た目と言動、たたずまいも有能な老紳士といった感じだ。

 それを見て女神は満足げに頷き、


「ということで旧ジュメルはお役御免! 調整室にレッツゴー!」

「い、いや。創造主、お願いですから話を……」


 旧ジュメルの言葉に耳を傾けず、女神は首根っこ掴んで軽々と放り投げる。

 すると空間に穴が開き、悲鳴を残して旧ジュメルが吸い込まれて消えていった。


 もうなんと言えばいいのやら、突っ込みが追いつかない。

 とりあえずこのやり取りはSFというよりはファンタジーだよね?


「じゃあ続いてカグヤだけど」


「は、はい! 私は日々船長のお世話に全力を尽くしています! 船長には快適な生活を提供しつつ、またスペースオペラをしていただく環境を整えています。甘やかすだけではなく適度にストレスを与えることで自堕落にならないに気を使って今までやって参りました。その甲斐あって、確かに船長は自他ともに認める引きこもりですが、それでも要所要所は締めてくれています。想定外の展開で話をまとめていますが、それでもそれなりにスペースオペラになっていると思います。創造主の思い描く展開とは少し違うかも知れません! ですがこれはこれでありなのではないでしょうか? 私的にはスパイラルの突入手順は満点だと思っています」


 そう言うことは堂々と胸張って言ったほうがいいと思うぞ。

 あととりあえず俺の背中から離れろよ。

 お前、蒼龍の時は……、あの時は体なかったのか。

 あの時もモニターの隅で震えていたと。

 そして今は俺の背中に隠れていると。

 しかしだんだんと可哀そうになって庇護欲が沸くのが不思議だ。


「もう、カグヤったら。私はあなたを叱責しに来たわけじゃないのよ」

「本当ですか?」


 俺の腕を握るカグヤの手はさらに力がこもる。

 女神の言葉を額面通り信じていないのだろう。

 まあ旧ジュメルがああなったばかりだからな。

 そりゃあ疑心暗鬼にもなる。


「あなたは人間のために自ら滅ぶことを選択した優しいドラゴンだったから、最初はちょっと不安だったけど、なんだかんだで晃君をうまく誘導していると思う。確かに私の思い描く展開ではないけど、だからといってスペースオペラには変わりない。予想通りのことばかりってつまらないからね。私はいまとってもワクワクしているわ。だからカグヤ、これからも頑張ってね」

「はい! 船長を引きこもらさずにスペースオペラしてもらうように頑張ります!」


 やなこったい。

 当人を前になんて言い分だ。



女神無双は次話も続きます。


もしもこの話が20時の予約投稿だった場合、私はまだ今日は家に帰っていないのでしょう。

そうなると明日の投稿できないかもしれません

場合によっては土曜まで投稿できないかもしれません、ご容赦ください。


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― 新着の感想 ―
ジュメル……(-∧-)合掌・・・ なう(2025/08/06 22:26:24)
[一言] 恐ろしいな、ハリセン。
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