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#174 復讐を誓う皇子と怠惰なドラゴン 6

 艦橋に移動してメインモニターにジュメルを映し、俺とカグヤで対面する。

 

「さっきの意味を調べたよ。飛んでいる鳥を射尽くしてしまうと良い弓も蔵にしまわれ、獲物であるすばしこい兎が死んでしまうと猟犬は用がなくなり煮て食べられるんだってね。随分と物騒な言葉だね。さすがはドラゴンを滅ぼした星の言葉だ」


 まあそうかもしれないな。

 でもさ、弓や犬でそうなるんだ。

 スペースオペラに貢献できない、役に立たなくなったドラゴンにはさてどのような運命が待ち構えているのかなと。


「船長、怖いこと言わないでください!」


 長い付き合いで俺の言いたいことを悟るカグヤと対照的にジュメルは呑気な顔をしている。


「言いたいことがよくわからんな。自分に何か落ち度があるとでも?」


 シンに対して非協力的ではないか?


「不時着した宇宙船を飛び立てるように修理して、管理頭脳として制御している。破格の対応だと思うが」


 食事や生活のケアは?


「さっきも言ったがカグヤと違ってそんな命令を受けていないからね。最低限死なない程度には」


 なるほどドラゴンもイロイロいるんだな。

 カグヤみたいに世話焼きすぎても大変だが、ジュメルのように放置されるのも困ったもんだ。

 その中間がいないのかね?


 それはさておき、お前そんな考えでよく今まで無事だったな?


「だから何の落ち度があると?」


 せっかく種を手に入れたというのに植えるだけで勝手に種が芽吹くと思っているのか?

 毎日水をやって、肥料をあげて雑草抜いてとやらなきゃならない。

 特にこの種は芽吹かないし、芽吹いたところで花が咲き実になるまでどれほどの手間が必要かと。


「すまない、まったく意味が分からないんだが、その種とはどういう意味だ?」


 スペースオペラの種に決まっているだろう?

 お前が親切のつもりか興味本位かは知らないが、シンを助けたのは事実だ。

 そしてそいつと宇宙に出たというのはどういうことかわかっているのか?


「どういうことだろう?」


 ジュメルは真顔で問い返す。

 おい大丈夫か、このドラゴン。


「あまりにも察しが悪いので私も横で聞いててハラハラします」

「失敬だな、何をカグヤまで」


 お前な、どんな形であれスペースオペラの種を手に入れたんだぞ?

 それを何も手をかけず枯らしてみろ、お前の「上」はどう思う?


「まあそりゃあ……気を悪くするだろうけど、別に大事にはならないだろう? 担当区域外のことだし」


 ジュメルは何ともないような口調で言う。

 まるで現状把握できていない。

 

 ちなみに俺の横でカグヤは「ひぃ」と小さな悲鳴を上げて震えている。

 まあカグヤを責められない。

 いきなり現れた『アレ』は怖い。

 俺でもビビった。


「まあ適度に皇子の復讐心を煽って、2年ほど旅してきたからもう十分じゃないのかな? あの子には才能がない。というかあの時一緒に死んでおけば楽だったのに、生き延びてその上自ら苦しむ旅に出るなんて人間ってのは本当に愚かだね。理解不能だ。一緒にいてもまったく理解できなかった。そろそろお互い解放されるのが吉だろう」


 そうか。

 お前の考えはよくわかった。

 あとは、後ろを見てくれるかな。


「後ろって?」


 モニターのジュメルが振り向いた先には笑顔の女神が(ただし額には怒りマーク付き)立っている。


「――ひぃ!」


 いきなりの登場に腰を抜かすジュメル。

 少し前から後ろにいたんだけどね。

 


「ねえ、ジュメル。私はあなたの行動を評価してたのよ。私の指示にはないのに遭難者を拾って宇宙を旅をする、なんて素敵なんだろうと」


 穏やかな口調で女神は話し出す。


「そんなドラゴン、今までいなかった。ようやく私のスペースオペラ愛がドラゴンにも伝わってきたんだと喜んだものよ。その子が新たなスペースオペラを開幕してくれる。それもこれから始まるのは宇宙を股にかけた復讐劇! そこにあるのは流血だろうか、権謀術数だろうか、ミステリーか、宇宙船同士の砲撃戦か、体当たりして敵船に乗り込んでの銃撃戦だろうか。裏切り、屈辱、姦計、心理戦、そして最後はどんな悲劇が待っているのかと」


 そこまで言って女神は今まで以上に笑顔になる。

 もうその笑顔が怖い。

 てか悲劇確定ですか?


「なのに……なのにどういうことかな? いつまでたっても何も始まらないってのは? それどころか終わるってのは?」

「そ、創造主! でもそれは……」

「それはもこれはもないのよ!」


――バシーン!


 どこから取り出したハリセンでジュメルの頭を叩く。

 ずいぶんと良い音したな。


「私のときめきを返せ!」


 そして再びハリセンで叩く。

 

 映画館の予告で好みのスペースオペラのプロローグを見せられ、期待して公開初日に見に行ったらスペースオペラのスの字もない駄作を見せられた感じだろうか?

 はたまた無性にラーメンが食べたくてラーメン屋に入ったらハンバーガーを出された感じだろうか?


「その例えはどうかと思いますが、創造主はかなりご立腹のようです」


 それは見ればわかるんだけどさ。

 てかカグヤ、俺の後ろに隠れるのやめないか?

 あと腕を掴むのはこの際許すが、もう少し力を抜いてくれるかな?

 ちょっと、いや、かなり痛いからさ。



当初、今回出てくる予定はまったくなかったのですが、プロット作ったのが先月の体調を崩していた時に作ったせいでしょうか?

なんか降りてきました。


どうせ出てくるなら200話記念で出てくればとも思ったのですが、まあ半年突破記念ということでしょうか?


とっとと退場すればいいのにあと3話くらい居座りますw

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― 新着の感想 ―
振り返るとそこに奴がいた…… なう(2025/08/06 22:19:38)
[一言] シンが盛り上げる物語であって、漂流の先で子孫が復興するパターンもあるのにたかが数年でその芽を摘むのか
[一言] 〉「あまりにも察しが悪いので私も横で聞いててハラハラします」 だ、だよね!? これまではともかく。はっきり言葉にした時点で女神の意思に沿う気はないってことになるし。 しかもここはテコ入れ船長…
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