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#171 復讐を誓う皇子と怠惰なドラゴン 3

「お招き頂き感謝する。我が名はシンビオス・F・マーラ。惑星フォースフルの第一皇子である」


 と童顔でこういったら失礼だろうが女の子のように見える皇子が挨拶をする。

 ここは船長室のリビング。

 俺が広すぎると使うことをやめて、現在空き部屋になっているので外部からの客室兼応接室になっている。

 現在そこには俺、カグヤ、レーティア、ポーラ、シンビオス皇子がいる。

 ちなみに俺、ポーラ、シンビオス皇子が座り、管理頭脳組は俺の後ろで待機しているのだが……お招きとは?

 それとポーラもいるのだけど?


 後ろを振り返り目線で問う。


「成り行きです」

「成り行きだよ」


 よし、後でキチンと叱ろう。



 それはさておき、自己紹介。

 初めましてシンビオス皇子。

 私はこの宇宙船イザヨイの船長、日下部晃と申します。

 ご足労頂き痛み入ります。

 あとウチのクルーが非礼を申しあげたことを重ねてお詫び申し上げます。


 と一応皇子だというのでかしこまる。


「受け入れよう」


 ほら、ポーラも頭下げなさい。


「ですがキャプテン、復讐は……」


 あのな、ポーラ。

 最近ちょくちょく言っているが、正論なら言ってもいいというわけではない。

 人間、他人に間違っていると止められても納得できずに突き進むことはある。

 お前だってそうだろう?

 俺はレオンに会うのは得にならない、泣くことになるって言ってもお前はまったく聞きもしない。

 それと同じだ。


「……シンビオス様、知らぬこととはいえ、失礼なことを申しました。すみません」


 俺の説得にポーラは謝罪してくれ、皇子も受け入れてくれて一件落着、と言いたいがそうは問屋がおろしてくれない。



 宇宙船をお探しという話ですが?


「そうだ、情報を求む」


 私が宇宙にでて一年が過ぎていますが宇宙船とすれ違った回数は少なくて、その中には該当の宇宙船はおりません。


 カグヤが出会った宇宙船の映像と場所をモニターに表示する。


「これ以外に情報は?」


 確定した情報は何も。


「不確定の情報があるのか?」


 俺の含みを持たせた言葉に反応する。


 不確定というよりは予想ですよ。


「構わん」


 皇子は即答する。

 聞くところによると2年近く、さ迷っているらしい。

 それでは藁をも掴むことだろう。


 では、一度母星に戻ることをオススメします。


「ならん! 国に戻るのは仇をうってからと誓った!」


 母星に仇がいても?


「……なんだと?」


 もちろん突発的な海賊行為という可能性もありますが、それならばその周辺で聞き込みをすれば情報の1つや2つ、簡単に手に入るでしょう。

 現時点で手がかりがないのなら母星の人間を疑うべきです。

 あなた方が死んで得する人間が儀式を利用して襲撃計画を立てたのだと。


「……しかし、……そんなことが?」


 皇子の星ではどうか存じ上げませんが俺の感覚では王家簒奪などはよくあることと思っています。

 確率はそれなりに高いかと。


「だがおめおめと戻ることは」


 犯人が母星でぬくぬくと甘い汁を吸っていても?

 あなた方の死を嘲笑っているかもしれませんし、国民は苦しんでいるかもしれません。


 まずは生存をアピールすることで国民や、ご母堂などの御家族を安心させることが第一でしょう。

 皇子の心情はさておき、皇子ならばまずは国民や政を私情より優先すべきでしょう。


「…………」


 俺の言葉に皇子は無言で考えだす。

 納得はいかないが理解はできるのだろう。


 正論と言うのはこう使うべきだ。

 ポーラのように復讐が悪いことと頭ごなしに言うのではなく、相手がそれを言われたら強硬に反論できないということから攻めるべきだ。



 いま国に帰っても奇跡の生還と喜ばれることはあれ、復讐もできない臆病者と蔑まれることはないでしょう。

 まずは生存を知らせましょう。

 そこで自分の身に何が起きたかを国民に訴え、犯人捜しをすると公言すればいい。


「――しかしそれでは!」


 いえ、話の肝はここからです。

 国で皇子の復讐を積極的に止める者が現れるでしょう。

 その中で最近大きな権力を握った人間がいたらおそらくそいつが犯人です。

 

 ですが自分から何かすることはありません。

 管理頭脳に警戒させておくだけで十分です。

 相手はすぐにボロを出します。

 

「なぜそうなる?」


 皇子たちの死亡で得た権力は皇子の生存で失われるでしょう。

 それどころか犯人捜しをされたら身の破滅です。

 そうなると再び皇子の暗殺を試みるでしょう。

 そこを返り討ちにすればいい。

 もっとも皇子自らを囮に使うことになるので大変危険ではあります。

 一歩間違うと死ぬ危険もあるでしょう。

 

「死は怖くない! 怖いのは父上や、あ……妹の仇がとれぬことだ!」


 ご立派です。

 ですが死は怖がってください。

 そうでないと囮にはなりません。

 怖がって、おびえまくっている、そう思われた方が敵は油断してやってくるでしょう。

 そこを返り討ちです。


「……そんなにうまくいくのか?」


 いかせるのですよ。

 やりようはいくらでもある。

 それに何の当てもなく宇宙をさまようよりはよっぽど高確率で成功しますよ。




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