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#169 復讐を誓う皇子と怠惰なドラゴン 1

ポーラ視点となります。



 私、ポーラはクリドリの大地に降りたっています。


 キャプテンの予想通りレオンさんはすでにこの地を去っていましたが、まだ1ヶ月前とのことなので今すぐ追いましょうと提案しましたが却下されました。

 イザヨイの補給と1つキャプテンには用事があるということなので少し地上に降りるように指示されました。


 地上に降りること自体は好きなことですが、今回は気が乗りません。

 早く次の惑星に行きたくて仕方ありません。


 ですが地上に降りることも体調管理だと言われては仕方ありません。

 ただキャプテンに言われるのは少々腑に落ちないところでしたが。


 せっかくですのでレオンさんの被害者の方にお話をうかがおうと思っていたのですが、まだ被害届が出ていないようでどこにいらっしゃるのかわかりません。

 白ウサギさんに調べてもらっていますがもう少し時間がかかるそうです。


 ですので私は現在、海岸沿いのカフェで海を眺めています。

 故郷の海とは違って、整えられたリゾート地です。

 煌めくライトブルーはとても美しく、波打ち際を眺めているだけでなんとも幸せな気分になります。


 大地に足を踏みしめて、高い空、広い海を眺めることがこんなに幸せだとはマイタンにいたときには思わなかった感情です。


 どうしてキャプテンは降りなくて平気なのでしょうか?

 引きこもりという存在は本当に人知を超えています。

 私がマイタンの閉鎖環境適応テストで最高値でしたが、キャプテンと比べるとお粗末です。

 キャプテンのような方こそ最高司祭になるべきだと思いますが、絶対に嫌がりますよね。




「すまない、貴女が最近来た宇宙船乗りだろうか?」


 砂浜でもお散歩しようかなと思っているときに私に話しかけてきた人がいます。

 日に光を浴びて輝く肩まで伸びた金髪、海と同じ色をした碧眼の中性的な方です。


「まずは自己紹介しておこう。我が名はシンビオス・F・マーラ。惑星フォースフルの第一皇子である」


 皇子……ですか?


「そうだ。だが過度にかしこまる必要はないぞ」


 そういう意味で聞いたのではないのですが。


 ああ、失礼しました。

 私の名はポーラ・アラカルトと申します。

 宇宙船イザヨイのクルーをさせてもらっています。


「クルー? 船長ではないのか」


 はい。

 現在船長は所用があって船に残っております。

 御用がおありでしたら取り次ぎますが?


「お願いしよう。だがその前に貴女にも聞いておこう。紫の船体に黄色の稲妻の模様がある船に心当たりは?」


 申し訳ございません。

 他の船の外装を興味を持ってみたことがありません。

 あとそんなに宇宙船と出会ったことがなくて。


「隠すとために……いや、すまない。1クルーに聞いてもわからんな。船長と話させてもらおう」


 白ウサギさんにとりあえず連絡をとってもらうことにしますが、また厄介ごとを持ち込んだとキャプテンに思われるでしょうか?


 お役にたてないだけならまだしもお荷物状態ですので少しはなんとかしたいのです。


 シンビオス様はその宇宙船を探してどうなさるのですか?


「復讐だ!」


 はい?


「我はその為だけに生き恥を晒している!」


 シンビオス様は端正な顔を歪ませます。

 復讐とは穏やかではありません。

 いったいなぜ?


「我が王家にはゲートを跳ぶという儀式がある。それができぬ者は皇位継承の資格を得られぬ」


 エクレアさんのところも大変でしたが、どこの星も皇位継承にはいろいろあるのですね。


「我はこの度その儀式に挑むことになった。船には我のほかに、立会人に皇帝である父上、そして第二継承権をもつ妹が見学をかねて付き添っていた。儀式自体は順調だった。我は問題なくゲートを跳ぶことができた」


 それはおめでとうございます。


「だが問題はその後だった。ゲートアウト後に紫の宇宙船が現れ、なんの前触れもなく砲撃をしてきた」


 そんな!


「運の悪いことに我が宇宙船は儀式用で内装、外装は豪華だが武装の類いはなかった。パニックになりつつも逃げるしかなかった」


 なんてことでしょうか。


「無我夢中で宇宙船を動かし逃げた。とはいえ宇宙船はかなりダメージを受けていた。ゲートさえ跳んで自国の宙域にさえ戻れば救助がくる、そう思ってもう一度ゲートを跳んだ、はずだった」


 どうなったのですか?


「わからない。そこで出会った管理頭脳の話だと未発見のゲートをたまたま跳んだのではないかと」


 私もたまたま未発見のゲートを発見しましたのでその可能性がゼロではないことは知っているつもりですが驚きです。

 でも助かってよかったです。


「助かったのは我だけだ。父上も……妹もすでに身罷られていた」


 そんな!


「だから我は誓った! なぜ、我らを攻撃したのかは知らぬが王家に仇なした報いを受けさせないとならぬ! 必ず殺してやる!」


 お気持ちはわかりますが、だからといって復讐とは穏やかではありません。

 ご家族がそんなことを望んでいないと思います。

 それに復讐は何も生みません、ただ憎しみの連鎖が続くだけです。


「うるさい!!」


 シンビオス様は声を荒げます。


「そんな綺麗ごとのお題目はまっぴらなの! なぜ憎んではダメなの! 家族殺されてなかったことにしろというの!」


 そういう意味ではありません。

 もちろんその方も報いを受けるべきです。

 ですが……。


「もういい、黙れ! 所詮貴様にとっては他人事だ! だから綺麗事が言える!」


 シンビオス様は冷たい目で私を見ます。

 正論だからと言って受け入れてもらえるわけではないというキャプテンの言葉を実感します。

 ですがどうすればいいのでしょうか?

 私にできることは……。


「あ、ポーラ姉もいる」


 私が立ちすくんでいると後ろからレーティアさんの声が聞こえます。


「なんだ、お前は?」

「初めましてシンビオス様。僕は宇宙船イザヨイの管理頭脳レーティアと言います」


 鼻白むシンビオス様にレーティアさんが言います。


「管理頭脳? お前がか?」

「ハイ。とはいっても僕はサブです。メインの管理頭脳はシンビオス様の管理頭脳と同種の性能を持っています。珍しい共通点ですのでウチの船長がぜひ皇子にお目にかかりたいと申しておりまして。本当ならこちらが出向くのが筋なのですがウチの船長は極度の引きこもりで宇宙船を降りることができません。よかったらご足労願えませんか? ダメでしたら通信でもかまいませんが」


 レーティアさんの言葉にシンビオス様は少し考え、


「よかろう。案内せよ」


 と了承します。


「ありがとうございます」


 レーティアさんはお辞儀をした後に私のところにきて、


「ポーラ姉はマスター曰く、たぶん相性悪いだろうから地上でそのまま休ませておけって言われてるんだけど」


 キャプテンはどうしてわかるのでしょうか?

 でもだからといって、このままお別れなどできません。

 どうなるのか気がかりです。

 あとキャプテンがどういうことを言うのかということも。

 だからご一緒します。


「そう? まあ別にいいんじゃないかな。厳命されたわけでもないし」


 ありがとうございます!



本日から新シリーズが始まります。

タイトルに復讐とありますがそちらは重くはなりません。

むしろ比重が高いのは後者の方かと。

過去最多のドラゴンたちが登場します。


さていつも誤字報告してくださっている方、本当に感謝しております。

ただ今シリーズにおきましてシンビオスの口調がたまにおかしいと思うかもしれませんが仕様です。

シンビオスについては無視してください。

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