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#165 温泉回

「ねえマスター。たまには温泉に入ってみたいと思わない?」


 日課に運動を行い、シャワールームに行こうとしたタイミングでレーティアが現れる。


 温泉?

 このメインユニットにシャワールームではなく浴室があるのは知っているが、小さめの銭湯という感じのだった。

 あれのことではなく?


「この前イザヨイ修理した時についでにサブユニットに温泉を作ってみたんだ。どうかなあと思って」


 また酔狂なものを。


「日本人って温泉が好きなんでしょう? 源泉かけ流し風、檜風呂だよ」


 風って。

 しかし温泉か。


「なに、嫌い?」


 いや、昔のくだらないことを思い出した。


「一応聞いてみようか」


 俺が採用面接をしていた時の話だ。

 趣味・特技の欄に『温泉』と書かれていたんだ。

 だからなんとなく「温泉が好きなんですか?」と聞いたら自信たっぷりに「ハイ」と言ったんだ。

 まあ人となりを知る雑談だと思って「よく泊りで旅行とかされるんですか?」って聞いたんだよ。

 そうしたら「旅行にはいきません」って言うんだよ。

 なら近場の温泉に行ってるのかなと思って聞いてみたら「行かない」って返事されて。


「何言ってるのか意味わかんないんだけど? 温泉が自分の家にあるお金持ちってオチ?」


 そんな金持ちがウチに面接に来ることはないけどな。

 それはさておきちょっと惜しい。

 そいつは入浴剤で温泉の素を入れるのが趣味だということだった。


「それは趣味が温泉と言えるの?」


 だよな~、俺もそう思ったんだよ。

 だから入浴剤が趣味なんじゃないのかなと俺も突っ込みを入れたんだが、○○社の△△という入浴剤は硫黄が入っていて本格的だとか、××は天然湯の華がはいっているとか、コスパ最強は□□だとか熱く語りだしてな。

 主張が終わった後に無駄だとは思ったんだが、本物の温泉は入ったことがあるのかと聞いたら、


「他人と同じ風呂に入りたくない」

「わざわざ高い金を出して遠くに行く価値があるのか?」

「ニュースで源泉が偽物だったという話も聞いたことがある。なら温泉の素でも同じだろう」

「秘湯? わざわざ? なんで?」


 という感じだった。


「何言ってるのか理解できないんだけど?」


 高い金出して遠くに行く価値があるのかのくだりだけは同意したが。


「引きこもりとはジャンルの違う言い分の気もするけど?」


 まあそれはともかく、正直なところ趣味・特技に書くのは間違っていると思った。


「むしろ温泉に謝れ、って感じなんだけど。その人どうしたの? 不採用?」


 何度も言うが弊社クズノミヤ、万年人材不足です。

 面接にさえくれば採用です。

 それが少々の性格に、言動に、行動に難があろうともです。

 いや、俺は止めたんだよ。

 でも部長は聞き入れてくれず、1週間後には入社手続きだ。


「それで働いてくれたの?」


 3か月後に温泉ソムリエになるっていって辞めたよ。

 別に働きながらでも取れそうな資格だったんだがな。

 あとそいつに温泉ソムリエにはなる資格はないと思ったよ。


「……本当にくだらないことを聞いたよ」


 いまだに温泉と聞いて真っ先に思いだすのがそのエピソードなもので。


「難儀な人生送ってるよねぇ。で、温泉行くの?」


 まあたまには行ってみるか。

 白ウサギ、替えの服もって来てくれ。




 サブユニットに新設された温泉にやってくる。


「日本の旅館風にしてみました」


 旅館でよく見かけられる扉の前に立つ。

 宇宙船の中にここだけこういう扉だと違和感を感じるべきだろうが妙にマッチングしているのが不思議だ。


「最近は外国人客向けに旅館も和洋折衷取り入れてるから、そこに宇宙が入ってもなんとかなるもんだよ」


 ……まあいいけどさ。

 ところで質問がある。


「なに?」


 男湯、女湯ののれんがないのだが中でさらに入り口があるのか?


「そこまでスペースがとれないから混浴だよ」


 なるほど、では脱衣場も男女兼用か?


「そうだよ」


 ではこの扉を開けるとポーラが着替え中で、


「キャァー! キャプテンのエッチ!」


 とモノを投げられる展開か?


「日本のコンテンツで見たよ、ラッキースケベだっけ」


 お前は変なこと知ってるな。


「まあ少しは日本のことも知っておかないとマスターにツッコミ入れられないでしょう」


 まあそこはありがたい。

 人間適度にボケとツッコミが必要だからな。

 でどうなんだ?


「残念なことにポーラ姉は着替え中ではないよ」


 そうかい。

 でもそれは残念ではなく幸いというのだ。

 それならば入るかと思い、手を伸ばして踏みとどまる。


「どうしたの、マスター」


 着替え中ではない、すでに湯船につかっているとか言わないよな?


「なに、その用心深さ。ポーラ姉は今礼拝堂で掃除してるよ」


 そうか、なら俺が入っているときに侵入してくるパターンがあるな。

 白ウサギ、お前はここで待機。

 誰もいれないように。

 手を挙げて了解してくれる白ウサギとあわれむように俺を見るレーティア。


「ラッキースケベは男の夢じゃないの? それともマスターはBLなの?」


 女の子が好きです。

 でもこんな閉鎖空間で揉めて気まずくなりたくないのでゴメンだ。


「ポーラ姉はたぶん泣くけど許してくれるよ」


 泣かしてどうするよ。



 さて自衛ができたので風呂に入るか……、


「どうしたの?」


 この中にカグヤがいてラッキースケベという展開は?


「用心深いねぇ。カグ姉は現在艦橋。ドラゴンネットワークしているんだって」


 そうかい。

 よし、今度こそ入るか。


「なんで温泉入るのにこんなに警戒するのかな」


 俺が聞きたいわ!




 ようやく中に入り脱衣場にてスーツを脱ごうとし……、おい、レーティア。

 なんでついてくる?


「背中流そうかと」


 あのな、レーティア。

 ポーラ、カグヤとお前では、10代前半のお前が一番ヤバイ。

 ロリの裸は通報案件だ!

 

「だから僕、ハタチだって。それなら問題ないって書いてるコンテンツたくさんあったよ」


 そんなエロゲの建前を言われても。

 てかやったのか?


「一応ロリババアを知っておこうと思って。日本人って頭おかしいよね」


 言わんとすることはわからんでもないが、とりあえず出ていけ。



温泉回とは言いましたがサービス回とは言っていません!


レーティアはこのサプライズがしたいために前の星で主人公に下船してほしいと訴えていました。

レーティア的にはサブユニットに来ないよう気を使いつつ、それでも体調管理に気を使って部屋から出そうと、そうでなくてもイザヨイの修理で忙しい中気を使っていたというのが裏話です。


何もしなくても主人公はサブユニットに行くこともないというカグヤの意見が結果的には正解でしたが。

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