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#164 久方ぶりの団欒

「ではクリドリを目指すということで」


 まあ仕方あるまい。


「キャプテン、ありがとうございます」


 なぜ人は進行方向に落とし穴があるから気をつけろと言ってもわざわざ踏みに行くのだろうか?

 落ちたら痛いと言っているのにどうして伝わらないのだろうか?

 

 などと思うことはあるが、当人の決断だ、仕方ない。


 痛みを知るのも人生には必要なことだろう。

 とはいえ人間という生き物は生きてるだけで傷つく生き物だというのに酔狂なことだとは思うがな。


「マスターは意外とポーラ姉のこと気づかっているんだね」


 レーティアが俺のことをどう思っているのかは知らんが、それなりにな。


「あまり他人と接したくない引きこもりだと思ってるから意外で」


 その評価は何ら間違っていない。

 だから引きこもらせろ。


「働いてよ」


 働きたくない。


 それはさておき、傷ついたポーラのフォローと強行にレオンを無視する決断で心にしこりが残るポーラのフォロー、どっちが楽かと考えた結果だ。

 誉められるほどのことではない。


「本当に誉められないってば」




 さてここからゲートまでは14日かかるという。

 ということは久しぶり引きこもりタイムではないだろうか。


「何だかんだでずっと引きこもっているじゃん」

「宇宙船の修理中くらいは船から降りてほしいところです」


 邪魔しないように部屋でじっとしておく覚悟だったのに何故か非難を浴びる。




 さて久々にポーラと食事をする。

 地上に土産の干物で思い出したが佃煮や甘露煮などはどうだろうかとピンクに作ってもらった。


「これ甘くて、あと少し辛くて癖になる感じです。小さくて骨や頭まで食べれるんですね」


 そうだろう。

 鮎、ワカサギ、小女子、とりあえずビールくれるか。

 

「マスター、下戸なんでしょう?」


 言われると思った。

 方便です。


「お酒飲めないからワインに興味もないし、呪いを怖がってるから積極的にワインを手放したいと思われたかったんでしょう」


 カグヤのいう通りです。

 だからビールください。


「しかたないなぁ」


 しぶしぶレーティアがビールを持ってくる。

 

「……キャプテン、とても美味しいんですけど、……なんといいますか、少し味が濃くて、これだけだと……」


 酒のつまみでもいいけどご飯のおともって感じだしなあ。

 こればっかし食べても腹が膨れないし、何か他にも頼むといい。


「……そうですね」


 ポーラは真剣な表情で佃煮と向き合う。

 何を食べようか、何が合うか考えているのだろう。



 さて前にも聞いたがこの辺では宇宙船の通行量が多いということだが、これから先もそんな感じか?


「クリドリは1つしかゲートはありませんが、その次の惑星には3つあります。ちなみにテクノシアも3つありますのでこの辺は通行量が多いですね」


 三つ子星もああいう感じのゲートだともっと通行量があってもよさそうだが。

 通貨も統一されているし。


「あそこはゴール、シール、パールを結ぶ定期便で手いっぱいで外に回れないというのと、その周りの惑星が交易船をだす人材が少ないせいでイマイチですね」


 今後は変わるかね。


「この辺の人たちがいずれはそこまで行くとは思います。通貨の統一は便利ですからね。多くの宇宙船が立ち寄るのではないでしょうか」


 フクハラはもうシールくらいにはついて腕時計を売っただろうか?

 それなりに儲けられるだろうからしばらく三つ子星に滞在するかもな。


「あの人律儀そうだったから、まずマイタンに手紙届けてくれるんじゃないかな」


 レーティアの意見も一理ある。




 さてクリドリのことも聞いておこうか?


「レオンさんはまだ滞在しているでしょうか?」


 ポーラの問いにカグヤは首を振る。


「半年以上前にカジノに借金を返してクリドリに向かったそうです。すでにいない可能性が大ですね」

「一般的な船乗りなら半年くらいいても不思議ではないのでは?」

「そこはジャンルが違えども同じ詐欺師の意見を聞くべきかと」


 だから俺は詐欺師ではない。


「僕はペテン師を推すよ」


 やかましい!

 てか同じ意味じゃね?


「それはさておき、どう思います?」


 そりゃあ、状況やタイミング次第だろう。

 上手くいってれば長く滞在できるし、ヤバそうな気がしたらすぐ逃げるだろう、と言いたいが俺の友人なら逃げ足も早いが保険もかけるタイプだ。

 相手がまだ疑っていないなら、もう一度帰って来て搾取できると思うだろう。

 そうすれば長い宇宙生活で立ち寄れるオアシスになってくれる。

 それならばボロがでないうちに短いサイクルで星を離れるかな。


「というのが専門家の意見です」

「なるほど、説得力があります」

「さすがマスター、同族は同族を知るってやつだね」


 やかましい!



 クリドリの基本情報を一通り聞きながら酒を飲む。

 厄介事はなさそうかな。


「いえ、ひとつある可能性が」


 とカグヤはチラッとポーラを見る。

 ポーラに聞かせれない話があるのかな?

 なら後で聞くとしよう。


 じゃああとは……、


「キャプテン、わかりました!」


 どうした、ポーラ?

 嬉しそうに目を輝かせて。


「この佃煮には雑炊があうと思います」


 おい、まだ考えてたのか?

 いやまあレオンのことをずっと考えられるよりはマシなんだが。


「雑炊ではないかとは早めに気がついていたのですか、どの雑炊がいいのかと」


 そういう意味で聞いたわけではないが、まあいいや。

 この子はこういう感じが一番輝いている。

 で何があうんだ?


「フグ雑炊です。きっとピッタリです」


 そうですか。

 じゃあピンク、それをポーラに作ってやってくれ。

 俺は白米でいいや。 

 あと味噌汁もくれるか。



日常編はかれこれ35話ぶりでしょうか。

サブタイトルってどうすればいいんだったかなとかなり考えています。

明日、明後日はもう一周まわって「温泉回」「花見回」でいいかなと開き直っていますw


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― 新着の感想 ―
ポーラは宇宙適性高いな笑 流石は蒼龍が目を掛けるだけはある。 なう(2025/08/06 20:23:41)
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