表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

172/316

#160 幽霊船の財宝は呪われているか 10

 レーティアの工程管理の甲斐もあってかイザヨイの修理は3ヶ月あまりで終了した。

 そのころちょうどポーラも帰ってきたので出航の準備を始める。


 カグヤが心配していたポーラの心理状態は表面上はうかがい知れない。

 レオンに騙されて混乱している女性、もしくは今なおレオンを信じている女性に会いに行き、何を話し、何を感じたのかはわからない。

 まあポーラが言わない限り知らないふりをしておくのが大人の対応だと思う。

 あからさまに様子がおかしいならともかく、魚をうまそうに食い、この星で食べた干物が美味かったと語る彼女の様子を見る限り、当面は放置してもよいだろう。


 この星でのコンテンツの売り上げの7割は修理費に消えた。

 あまり売りに出していなかったので修理費が足りないかと不安だったが終わってみれば余裕だった。

 この星でのコンテンツ購入はやめ、食料品や生活必需品、消耗品だけ買うことにした。



 入国管理局に出発を伝えるとリアルタイムで映像を送ってくれと頼まれる。

 途中で夫人からもらった映像に差し替えるという小細工はカグヤにとっては朝飯前なのでOKしておく。



 幽霊船は成り行きに任せるとして、あとこの星でやり残したことは……そういやあの頭のおかしい役者はどうした?


「船長と会話後2日で精神に異常をきたして入院しました。まだ退院できていません」


 カグヤが淡々という。


 しかし短いな。

 あれだけ自信満々だったくせに。

 よくそれでリアルな演技をって言えたもんだな。

 それくらいで異常をきたすとゲートにすらたどり着けない。

 引きこもりを……もとい宇宙船乗りを舐めるな。


「どっちもどっちだよね」

「今回に限っては相手が無知すぎたとも言えます」




 惑星ガーランドの宇宙港を出て最短コースで幽霊船の宙域に向かう。

 

「こちら入国管理局。針路そのままの位置に幽霊船が見えるが、どうなっていますか?」


 こちらイザヨイ、送っている映像通りだ。

 幽霊船など何も見えない。

 探索機にも何の反応もない。


「バカな! こちらの観測機だと船影がみえるんだ!」


 そんなこと言われても困る。

 リアルタイムで映像を送っているだろう?

 こちらの計器には何の異常もない。

 俺の目視でもだ。

 それを疑われるならこっちだってそっちの観測機を疑う。


「いや、しかし! こちらからは見えるんですよ! よく見てください!」


 こっちは何も見えないのにいちゃもんつけられても困る。

 こっちもどうしてもと請われたからしかたなく幽霊船の噂の場所に来ただけだ。

 俺は幽霊なんか興味もないからな。

 何もないものはない。

 それが信じられないというならここで終了だ。


「いや、ちょっと待ってくれ」


 なんか国を挙げて幽霊なんて存在しないものをいると俺に騙そうとしているのか?

 バカバカしい。

 めんどくさいこと言われるならここらで打ち切らせてもらうよ。

 そもそも無償だしな。

 とくに小難しい契約内容も存在しない。

 最低限の義理は果たしただろう。

 では失礼するよ。


 そういってまだ向こうが継続してほしいと訴えるが無視して通信を切る。




 さて眼前にはこのイザヨイと同じく40m級でコンテナ数が8つある宇宙船に数隻の宇宙船が連結されている。

 傘の中軸と骨という表現が近い。

 こんなでかいものが堂々と惑星上に回っていたら観測もされるわな。

 知らぬ存ぜぬで通せって言うのも無理があるだろうに。



「船長、夫人から通信です」


 はいよ。


「ご苦労さん、うまくやってくれたね」


 夫人が満足げに言ってくる。


 あんなのでいいのか?


「これでしばらく幽霊船の話題がのぼるだろう。たまには幽霊船のことを煽っておかないとね」


 存在を隠してないのか?


「普段は見えないように惑星の裏側にいるんだよ。たまにこうやってわざと発見されているんだ」


 何のために?


「それを教える前にとりあえず針路をそのまま進んでこの惑星の裏に隠れな。こっちは逆方向からそっちに向かうから」


 まあ確かにこの場所だとまだガーランドから観測されているか。

 いったん通信を切られた。

 カグヤ、だそうだ。


「了解です。自然な感じで進みます」


 合流するまでに情報が欲しいところだが。


「先ほど接触できました。現在解析中です」


 そうか。

 ならカグヤはそっちを優先、レーティア、操舵のフォローを。


「了解」

「OK!」


「……キャプテン、いったい何に巻き込まれているんです?」


 軽く説明したが幽霊船騒ぎに。


「でもあれって宇宙船同士のランデブーじゃないんですか?」


 俺もそんな感じはする。


 まあ幽霊はいないことはわかっていた。

 人間の仕業だと。

 ただ何が目的とか原因とまでは。

 聞いた話だとあそこには天国と地獄があるらしい。


「どういう意味でしょう?」


 なんだろう?

 俺も知りたい……いや聞かずに逃げたほうがいいのかなぁ。

 いまならまだ間に合うよな。


「この期に及んでそう言えるのってマスター往生際が悪いよね」

「違いますよレーティア、あれは覇気がないというべきですよ。もうちょっと危険に飛び込んで問題を解決するべきです」


 うるさいよ。

 てか情報はまだか?


「解析終了しました。あの船はカジノ船です」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ