#156 幽霊船の財宝は呪われているか 6
さてカグヤ。
「なんでしょう」
通信が終わってカグヤを呼ぶ。
「一応言っておきますが、不思議なことに幽霊も禁則事項なのです」
そうでなきゃいいと思ってた。
てかスペースオペラの世界でなんで魂だの幽霊だのに巻き込まれるんだろうか?
それはオカルトの領域ではないのか?
そもそもよくよく考えたらこの世界、設定がおかしい!
女神がいる時点でスペースオペラを名乗っていいのか!
あと管理頭脳の名称がドラゴンってのもおかしくないか!
「それに気がつくのに1年近くかかりましたね」
1年で済めば御の字だろう。
てかなんだかんだでもう俺の死後1年か。
俺もそろそろ化けて支社長だの副支社長のところに出ていくべきだと思うんだが。
それはさておき今回は幽霊はそんなに関係ない気がするが。
「そうなのですか?」
予想だがな。
「うかがっても?」
その前にレーティアに幽霊について聞いてみよう。
「何? 忙しいんだけど」
画面で映ったレーティアは2本ラインが入った黄色ヘルメットをかぶり、腕章をし、タブレットをもって現場に立っている。
いや、その格好必要なのか?
「マスターの趣味に合わせたんだけど?」
趣味というかなんか見慣れた姿ではあるが。
よく見たら作業服を着た緑ウサギもヘルメットかぶってるんだな。
安全な作業している気になるのが不思議なもんだな。
「でしょう。で何か用?」
ちょっとお前的に幽霊について聞きたくて。
「幽霊? なんでまた?」
なんかこの辺、幽霊船がいるらしい。
でもって宇宙的には幽霊ってどういう扱いなのかなと思って。
「空想上のもの。人間の恐怖が作り出した幻。非科学的なもの」
存在しないという認識か。
「この前日本の文献で見たよ、幽霊の正体見たり枯れ尾花って」
OK、ありがとう。
作業に戻ってくれ。
「は~い」
と手を振って画面が消える。
ということらしい。
「いえ、一般論くらいは知ってますよ」
いや、幽霊船のことだよ。
「はい?」
幽霊船の正体見たり枯れ尾花、でいいんじゃないのかなと。
「適当ですね」
そうは言うがカグヤよ、竜玉の対応して、スパイラルまで跳んだんだぞ。
少しは休んでも罰は当たるまい。
本当に罰を当てれる存在はこの際無視しよう。
「船長の精神状況を見る限り、……まだ余裕そうですが?」
ブラック企業勤めが長いからな。
休み明けでも「疲れている」から始まり、週末には「死にそう」だからな。
疲れていない状況などなかったから、宇宙に出て1年足らず、ようやく体から疲れが取れ始めたところだ。
「今頃ですか?」
ブラック企業で蓄積された疲れを甘く見るな!
ちなみに精神は未だに疲れが取れる気配すらない!
「自慢げに言わないでください」
とあきれられる。
「まあどのみちイザヨイの修理が終わるまでは何もできませんから、通信の対応以外はゆっくりしていただいてもいいのですが」
その通信もキャンセルしたいんですが。
「それくらいしてください」
電話が鳴りやまない状況がクズノミヤ思い出すんですけど。
電話が終わったと思ったら次の電話。
終わったらメールを返信しつつまた電話。
辛い日々だった。
「それよりはマシでしょう?」
まあ多少は。
とはいえ知らない人と雑談って気をつかうんだぞ。
「大丈夫です、船長はちゃんとできています」
カグヤよ、できるからといってしたいわけではないのだと。
「はいはい、わかってますよ~」
子供をあやすように言わないでくれるかな?
「いろいろ船長と話すバリエーションを増やそうかと」
まあいいけどさ。
「でも船長はやっぱり少しくらい疲れていたり、追い込まれている方がいい仕事をすると思いますよ」
その時点でブラック体質だよな。
「で、幽霊船の正体ってなんでしょう?」
さぁ?
「さあって、さっきはしたり顔だったじゃないですか!」
いや、幽霊というオカルトではないよというだけで。
「じゃあ何が枯れ尾花なんですか?」
なんだろうかね。
「船長、少しは真面目に応えてください」
というがな、さっきのやつが幽霊船を見に行って、「言えない」って言うんだぞ。
「そうでしたね」
まあつまりはろくでもないことがあるんだよ。
関わり合いにならないに限ると思うんだよ。
「つまらない選択ですね」
賢い選択といってほしい。
オカルトよりSFに従事すべきだと思うがね。
「創造主やドラゴンと関わっていてなんですがね」
それを言うな。
でもな、SFでもオカルトでも根っこは同じなんだと思うんだ。
「といいますと?」
なんだかんだで一番怖いのは人間だというのが俺の持論だ。
「深いですね」
まあ死んでから女神が一番怖いと認識を改めたがね。
作中ではこの星についた時点でだいたい11か月経過しています。
ちなみにポーラが宇宙に出てから7か月過ぎたあたりです。