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#155 幽霊船の財宝は呪われているか 5

 引きこもる。

 その道のりのなんたる遠いことか。

 未だもって道半ばである。

 祈りたいところではあるが祈る相手がああである。


「しかし竜玉による入国不許可とは、そんなのがあるとは、本当にあの管理頭脳はよくわからないな」


 現在、グルドニア出身の船乗りとの通信中。

 カグヤいわく、俺はこの星ではいま時の人なのだそうだ。

 跳べないスパイラルから現れた男として注目されているらしい。

 マスコミはともかく、政府機関と同じ船乗りくらいは対応してくれとカグヤに言われ、現在しかたなく対応中。



 しかし竜玉にグルドニアの星の住人は付き従うものかと思っていたけど、そうでもないのか?


「そりゃあ、言うこと聞かないと色々面倒になるからきくけどさ、アレしろコレするなって面倒だろう」


 なるほど、不満はたまっていると。

 なんでも彼は特に宇宙に興味がないが適性があるということで宇宙船乗りにさせられたという。


 任期が終わったらボランティア免除、スポーツ大会免除で生活できるのが最大の魅力らしい。


 こいつに竜玉の新しい姿を語ってやろうかと思ったがやめた。

 どうせすぐ知ることになるのでインパクトがあったほうがいいだろう。

 それにしても竜玉の未来は暗いな。

 まあそうなってもらわないと困るんだが。

 土下座するドラゴンがまた出てくる可能性があったし、そういう意味では目論みは成功したのかと。


「もうじきスパイラルは収まって、久々に国に戻れるからのんびりしたいのだけど、……こうなると早めに新ゲートを跳べと言われるかな?」


 かもな。

 あっちですれ違ったヤツがフィ=ラガからシール方面に行ったから逆に行くといい。

 もしくはシールからゴールに行ってパールではない方に跳べばいい。


「なるほど、とりあえず儲けのある方に行くべきか」


 そうだな。

 まあ働くといい、俺は休むぞ!


「鬼か!」

 

 というかスパイラルの足止めでしっかり休んだんだろう?

 俺なんか動きたくても船の修理中だよ。

 こっちはスパイラルがあるなんてまったく想定外だったよ。


「そりゃあ災難だったとしか言いようがないが、まあこっちはおかげであのスパイラルさえおさまったら安心して跳べるな」


 だといいけどな。

 実際は向こうもスパイラル中だったわけで、同じように消えて行ってるかどうかなど確認する術もない。

 とはいえ余計なことは言わずに黙っておこう。


「情報をもらってばかりだと悪いからこっちからも情報を提供しよう」


 それはありがたい。


「あんたはこの星域の幽霊船の噂は聞いているか?」


 幽霊船、そういう噂があることはグルドニアにつく前に会ったフクハラから聞いてはいたが、あいつも詳しくは知らなかった。

 俺は首を振り、教えを乞う。


「この星域の第6惑星、大きい輪がある星なんだが、そこの輪にいるはずがない宇宙船が観測される」


 そこまでは聞いていた通りだ。

 でそれは何なんだ?


「ここからがこの辺の船乗りの暗黙の了解となる、『言えない』だ」


 ……知らない、わからないでもなく、「言えない」ね。


 地上からは観測しにくくても、宇宙船の通行が多い場所だからちょっとそこまで確認に行ってくれという依頼は出せるだろう。

 そんなのがなくても暇を持て余している宇宙船乗り、幽霊船の話を聞き、ちょっと暇つぶしがてらに探しに行くやつは山ほどいるだろう。

 それでも「言えない」か。


「こういう言い方をすると興味を持って軽い気持ちで行こうとするかもしれないから一応忠告しておく、行かないほうがいい」


 一つ質問させてくれ。

 お前は行ったのか?


「……行った」


 なるほど。

 情報ありがとう。

 近寄らないことにしよう。


「こういっちゃあなんだが、物分かりがいいな」

 

 俺は知らなくてもいいことは知らないでおけるタイプの人間だ。

 知ってしまったがゆえに面倒をしょい込んだことはいくらでも思い出す。

 例えば会社の裏帳簿。

 例えば公文書偽造。

 例えば支社長の不倫。

 例えばパワハラ、セクハラ現場。

 だから知らないでいいことは知らないままで、気がつかないほうがいいことは気がつかないでいこうと思う。

 それが長生きのコツだろう……いや早く死にましたが。


「……なんかいろいろあったんだな? いや物分かりがいいならそれでいい。でもなんかあんたなら幽霊船でもうまくやれそうな感じだぜ」


 そんなこと言われても困るが。

 俺は地味で堅実がモットーなんだが。


「そうなのか? 小賢しく、でも大胆にって感じがするよ」


 初めて聞いた評価だな。

 そして褒められたような気がしない。


「あんたならどっちでもやれるだろうってことさ。天国と地獄があそこにはある、幽霊船だけにな」


 物騒なことだ。

 近寄らない方向でどうにか行こう。

 カグヤがスペースオペラ的にはどうなんでしょう? という目で見ている気がするが気がつかないふりをする。

 さっきも言ったがそれが長生きのコツだからだ。


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