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#150 竜玉を封印せし螺旋の檻 22

「突入準備完了しました。いつでも行けます」


 了解。

 万全な準備をしても想定外が起こるのが世の常だ。

 とりあえず必要以上に緊張しないこと。

 慌てず対応するように。


「船長は少しは緊張してほしいところです」


 ガチガチのポーラや外見からはうかがえないカグヤ、レーティアを気遣ったつもりが、どうにも俺に緊張感が見えないらしい。

 まあ、正直スパイラルに突入することにピンと来てないのだが。

 いつもいろいろ脅されるも俺的には大したことがないことが多いしな。


 とはいえ突入前にそんなことを言うわけにもいかず、粛々と準備を進める。


 ちなみにこの場にレーティアはいない。

 モニターに映っているが実際にいる場所は第2艦橋。

 そこで亜空間共振波を出す準備をしている。

 ここでやってもいいが、いろいろとすべきことが多いのでシステムを少しでも軽くするために独立してできる部分はそちらでするそうだ。




 現在、スパイラルの目の天頂方向、10キロメートルの位置に待機中。

 ヘルメットをかぶり、シートベルトをキチンとしめ、準備完了。

 では行くか。




「船長、速度を落として!」


 そうは言うがカグヤよ、ここは下降気流になっている。

 俺はアクセルを踏んでないのにスピードが勝手にでる。


「逆噴射してください!」


 逆噴射って使ったことないんだが。

 ああ、これかな?


「きゃ!」


 すまんポーラ。

 急制動にGがかかった。




 ゆっくりとゲートに向かって下降していく。


「旋回ポイントが近づきました。カウントを開始します。10、9、8……」


 可視化されたゲートの縁が近づく。


「3、2、1、船長!」


 指示されたポイントで俺はスロットルを一気に手前に引く。

 急激な旋回でもイザヨイは軋みなどの音もなく角度を変えていく。

 モニターから目を離す訳にもいかないのでポーラの姿を見られないが、Gによる影響で苦しそうな息づかいが聞こえる。


「船長、戻して!」


 カグヤの指示通り、スロットルを定常位置に戻す。

 イザヨイは勢いで落下しつつも、ゲートとほぼ垂直になる。

 微調整はカグヤに任せ、俺はスロットルを固定させたまま、次の作業に備える。


「今です!」


 モニターいっぱいに広がるゲートに向かって加速前進。

 近距離なので出力をあげる時間もない。

 一気にアクセルをべた踏みし、ステアリングを固定して突っ込む。


「ゲート進入成功! これよりすぐにスパイラルに突入すると思われます。各自衝撃に備えてください」


 カグヤの言葉に呼応するかのように画面が切り替わる。

 眼前に広がる真空の渦に身構えていると。


「――レーティア! そちらで自動操縦に切り替えられますか?」


 カグヤが叫ぶ。


「無理だよ、こっちも切り替わらない!」


 レーティアは叫んで返事をする。

 おい、何があった?

 

「緊急事態です。自動操縦に切り替わりません」


 なんで?

 いやそんなことより、どうすんだ?


「船長、針路だします。できる限り進んでください」


 おいおい、手動かよ。

 しかもスパイラル突入か。


「レーティアはシステムを再起動。ポーラは揺れます、しっかり捕まっててください!」

「OK!」

「わかりました!」


 カグヤの示す針路に進むのは、何が骨が折れるというと舵を真空にとられることだ。

 しっかり握っていてもとにかく上下左右にぶれまくる。


 おい、いっそ針路を天頂にして弾き飛ばされた方がいいんじゃないか?


「危険です! 中心部ですので船体へのダメージが大きいです」


 そう言われたら宇宙のイロハも知らない俺が我を通すわけにもいくまい。

 黙って針路に沿うようにステアリングを握る。


「再起動終了! ――カグ姉まだ無理!」


 レーティアから悲しいお知らせが届く。

 カグヤは数瞬考え、


「レーティア、今度は私が再起動します。イザヨイのすべてをあなたに切り替えてもいいですか?」

「――え?」


 急な指示にレーティアは戸惑いを見せる。


「……やれるでしょう?」


 カグヤの問いに、


「やるよ、できる!」


 レーティアは応える。



「マスター、もうちょっとまっすぐ飛んで」


 レーティアに切り替わった直後いきなりダメだしされる

 まあなるべく頑張る。

 レーティアの細かい指示に対応しながら進む。

 細かく横揺れ縦揺れに体にダメージを受ける、てかポーラは大丈夫だろうか、見る余裕がないし気遣う余裕もない、祈るのみだ。



「無理かもしれないけど出力上げれる?」


 まあそれくらいなら。

 ちゃっちゃとギアを上げる。


「なんで上げれるの!?」


 上げろと言われて対応してそれはひどくないか?


「なら50、いや40まで上げれる? それでこの針路を進んでくれたらスパイラル抜けれるはず」


 ならちょっと気張ろうか。

 針路を進みながら出力を上げる。

 ブレ幅をモニターで確認しつつ調整。

 出力が40%に達した時に、クンっとうまく気流に乗った感覚がした。


「マスター、成功! スパイラルを突破したよ!」


 そうか、でもその後の針路を出せ。

 それとも止まるのか?


「船長、大丈夫です。私の再起動完了しました。自動操縦に切り替えることができます」


 俺の問いにカグヤが答えてくれて、自動操縦に切り替わった。


 ふぅ、一息つき、ポーラ、無事か?


「大丈夫です。ちょっと怖かったけど大丈夫です」


 ならよかった。

 でも今は興奮状態だから感じないだけで、あとから気持ち悪いとか出るかもしれない。

 そういうのがあったら即医務室に行くぞ。

 

「わかりました」


 で、カグヤとレーティアだが……、


「では私がシステムを調べますので、レーティアはイザヨイのメンテナンス必要箇所をリストアップしてください」

「OK。整備用の赤ウサギ全部使うよ、あと緑も借りるね」

「緑には積み荷の確認に行かせてください。茶色とオレンジなら構いません」

「わかったよ」


 俺の指示がなくとも必要作業に入っている。

 結構なことだ。


 じゃあ俺らはとりあえず休んでてもいいか?


「申し訳ありません、船長」


 まだ駄目なのか?

 もう疲れたんだが。


「惑星ガーランドの入国管理局から通信が来ています。対応してもらえませんか」



こんな感じですが明日から新惑星の話が始まるのでここで竜玉編を終了します。

ちょいと色々やってみましたがいかがだったでしょうか?


明日からは新章「幽霊船の財宝は呪われているか」を始めます。

10話は超すと思います。

お付き合いください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ふと思い立って読み返したら気がつけたんだけど、この章は14話で伏線が張られていたのか。
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