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#149 竜玉を封印せし螺旋の檻 21

 スパイラルで封鎖されたゲートまであと2日。

 今日はのびのびになっていたポーラの卒業パーティーをすることにした。


 以前の約束通りシーフードピザを用意させた。

 貝やエビが乗っているもの、アンチョビ、スモークサーモン、ツナに明太子といろいろあるもんだねぇ。

 前回の反省を生かして1枚で4種類の味が楽しめるようにし、そこから欲しいだけ焼くとピンクウサギが意気込んでいる。

 俺としてはもう一回り小さくしろと思わないでもないが。




 さてポーラ、卒業おめでとう。


「卒業したという……実感がありません」


 困惑そうなポーラ。

 まあそうだろうな、俺も建前で言っただけだ。

 でもな、いきなり宇宙に出ることになって半年以上も生活してるんだ。

 お前の星ではかなりの修行なんだろう?


「それは、まあ」


 なら胸を張って卒業したと思うがいいさ。


「それでいいんでしょうか?」


 それでいいさ。

 気にするな、蒼龍もきっとそういうだろう。



 それはさておき、ピザは美味いか?


「美味しいです。大好きなピザに大好きなお魚がトッピングされるとワクワクが止まりません」


 それはよかった。

 好きなだけ食いな。

 ピンクもあそこで待ち構えているからな。


「はい!」


 魚に関しては本当にこの子はいい笑顔をする。



 ポーラも一応これで成人だし、酒を飲んでみるか?

 飲みやすいカクテルでもどうだ?

 いやアルハラではないぞ。


「いえ、こんな大変なときにパーティーしてもらっただけでも恐縮なのに、ここでお酒を飲んでもしも体調を崩したら困りますので」


 ……なんか大変だっけ?


「マスター、スパイラル突入は常識的に考えて不可能に挑戦なんだよ」


 ああ、そうなのか。

 まあポーラ、そんなに緊張することはないさ、大変なのはカグヤとレーティアだ。

 俺なんかあまり関係ないのに今日のこのパーティーが終わったら禁酒令が出されて困ってるくらいだ。

 緊張をほぐすためにも、平常にいるためにもアルコールは必要なのにな。


「オババもそうだったけどアル中ってタチが悪いよね」


 レーティアよ、俺はそこまでアル中じゃないと思うぞ。

 酒飲んでなくても手が震えないし。


「そんな重症と比較されても困るよ」


 カフェイン中毒は疑っているが、アルコール中毒はないと思ってたが。


「一週間ほど水で生活させて禁断症状を観測してみたいよね、カグ姉の許可は出ないだろうけど」


 そうだな、カグヤの場合そんなことするなら先に医務室で検査しましょうというタイプだ。


「だよねぇ」


 まあどっちもごめんだが。

 そんなことよりレーティア、調子はどうだ?


「宇宙船の操縦のこと? オールオッケー!」


 まあ特に心配はしていない。

 お前はそれなりのことはできるはずだ。

 ヨミ博士の最高傑作だからな。


「どうしたの? いきなり褒めて」


 だから俺を楽させろ。


「最低だよ、マスター」


 だが本心だ。


「本心なら、正直なら許されると思ったら大間違いだよ」


 そうか、残念だ。

 なら仕方ない、当日は俺も操縦するか。


「というか、まだサボる気があったんだね」


 サボるというか引きこもりたい。


「よくそんなので今まで生活できてきたね」


 まあそれなりに。


「オババのほうがまだましに思えるんだからマスターって大したもんだよ」


 ありがとう。


「褒めてないってば!」


 それはさておき、最近は宇宙船の操縦につきっきりで艦橋にこもってたくせに今日は出てきて大丈夫なのか?


「今までも別にこの移動式の端末は動かしてても大丈夫だったんだけどね、初めての作業ということでちょっと慎重にしてただけで。今も僕がこの船動かしてるけど問題ないでしょう」


 正直、今までも宇宙船の航行に問題があったかどうかを気にせず生活してきたので今が正常かどうかの判断もできないけどな。


「一応船長としてその自覚はどうなのかな?」


 維持管理はカグヤの仕事だ。

 俺の仕事は最終決断と責任をとることだ。


「そういうとカッコよく聞こえるけど具体的に?」

 

 とりあえず今回は竜玉をああいう風にした責任をとってスパイラルを跳ぶことにした。

 

「マスター的には責任取ったつもりかもしれないけど僕は巻き込まれたんだけど?」


 その前にヤンデレさんからレーティアとポーラを船長の責任として救ったではないか。


「それは……ギリ、認めるよ」


 ということで一応船長として認めてもらったとして。


「本当に一応だよ」


 だからレーティアも管理頭脳としての責任を果たせ。

 とはいえお前はヨミ博士の最高傑作でドラゴンにも匹敵するタイガーになる予定の管理頭脳だ、気楽にやんな。

 8割くらいでちょうどいいさ。


「スパイラルでも?」


 誰も跳んだことのないスパイラルが難しいなんて決めつけるなよ。

 固定観念で跳べないと思いチャレンジしてないだけでやってみたら簡単かもしれないだろう?

 だいたい管理頭脳2台体制だって今までなかったんだから。


「マスター、性格悪い癖にたまに優しいよね」


 失礼な。

 いつも優しいだろう、なんでか気がつかれないけど。


「はいはい、そういうことにしておいてあげる。でもありがとうマスター。……てかポーラ姉がめちゃくちゃ食べまくってるけどいいの?」


 魚を食うあの子を止めてはダメだ。



次回で竜玉編終了。

明後日から新章「幽霊船の財宝は呪われているか」開幕です。

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