#146 竜玉を封印せし螺旋の檻 18
さてどうするかと思ったが竜玉があんな悲惨な目にあったんだ。
「船長のせいですがね」
まあ俺も約束を守るべきだと思うんだよ。
「約束?」
うむ、しょうがないのでスパイラルを跳ぼうかと思っている。
「スパイラルを! 跳ぶ気なの! マスター、本気?」
まあ仕方ない。
人助け、いやドラゴン助けだろう。
「恩着せがましいですね、あんなことをさせておいて」
カグヤの口調にトゲがある気がするが、たぶん俺のせいではないはずだ。
まあ全員いることだし少し打ち合わせをしようか、シメのうどんを食ってからな。
「スパイラル跳ぶっていうのに緊張感がないね」
「本当に困ったものです」
「カグ姉はいいの?」
「レーティア、覚えておきなさい、船長の指示に最大限従うのが優れた管理頭脳です」
「自殺行為でも?」
「船長の言動、行動、指示を鑑みて、不可能だと判断したらもちろん拘束しますよ」
「僕、今までマスター見てると拘束してないほうがおかしいと思うんだけど」
「まだギリギリ、本当に紙一重ですが大丈夫だと判断してるんですよ、現に今まで何とかなってるでしょう」
「それは運じゃないの?」
「運も実力のうちですよ」
そこのドラゴン&タイガー、俺の悪口なら聞こえないようにしろ!
「わざとですよ」
「聞こえなきゃ意味ないじゃん」
うるさいわ!
ポーラとうどんを食べ終わったので打ち合わせを開始する。
「私はスパイラルというものは近寄らないものと教わっていますが」
「そうですね、回避できるのにわざわざ近寄ることはありません」
ポーラの疑問にカグヤが答える。
「そもそも宇宙における自然現象で惑星における台風や竜巻に似ていますが、スパイラルは移動することはありません。近寄らなければ何の問題もありません」
ちなみに今回のようにゲートを封鎖するように現れた場合は?
「そもそもそういう事例が少ないのですが、普通は近寄りません。船長もシミュレーションしていましたが、まともに跳べるものではありません。手動でなく管理頭脳の自動運転でもあの螺旋の渦はまっすぐに航行できません」
じゃあどうするんだ?
「もちろん、待ちます。自然発生したスパイラルは半年もすれば収まるはずですから」
だがここにあるのは1年以上発生し続けているスパイラル。
俺の予想が正しければもう一つのゲートにも発生し、この星域は封鎖されることになるだろう。
いつまで?
そりゃあ女神次第になるだろうが、最悪俺が跳べるまで、もしくは跳ぶことにチャレンジしひどく失敗して人間には無理だと判断するまでではないだろうか。
なんて嫌な女神様だ。
そりゃあ竜玉もあんな頭のおかしい格好をしてでもなんとかしようと思うというものだ。
「ですから竜玉の件は船長に責任が」
ということでとりあえずスパイラルに挑戦してみようと思う。
一応聞くが反対は?
「キャプテンの判断に従います」
「まあダメ元でいいなら一度跳んでみるのも面白そうだよね。滅多にできないことなんでしょう?」
「竜玉をあんなにしておいて逃げるとなると各方面から私が責められます、何がなんでも跳んで欲しいところなんですけど」
少々引っかかる意見があるが、とりあえず全員賛成ということで話をすすめよう。
さて問題は方法なのだが。
「何か方法があるの? 弾かれてゲートまでたどり着かないんでしょう?」
うむ、シミュレーションで何度やっても無理だった。
「じゃあどうするの?」
発想を変えてみよう。
何もゲートに対して真正面から進入することもあるまい。
スパイラルが台風と似た性質というなら真上から、台風の目から進入すればいいだろう。
「はあ?」
「船長、お忘れかもしれませんがゲートは球体ではなく円なのです。感覚的には輪に近いのです。その輪の中に船体をきれいにくぐらせることで跳ぶことができるんですよ」
知ってるよ。
だけど普通に跳んだら近づけないだろう?
台風の目なら穏やかだっていうし、スパイラルも似たようなものじゃね?
「……スパイラルの目に進入するという頭のおかしい行為をしたという事例がありませんので何とも言い難いのですが、下降気流は発生していますが、確かに穏やかであると予想されます」
少し言葉にとげを感じたが気にすまい。
それなら突入しやすいだろう。
目の上空、10キロメートルから突入すればいい。
「ですがそれですと円の面に対して平行に進みます。それではゲートを通過できません」
もちろんそれくらいは俺も理解している。
だから直前で船体を90度動かし、面に対して垂直にしよう。
「船長、直前とおっしゃいますが、いきなり船を90度回頭させるのって結構大変なんですよ。それをゲートに突入できる程度のブレ幅でするっていうんですか? それも手動で?」
まあさすがに俺には難しそうだが、カグヤならできるのでは?
「……無理とはいいません。難易度が高いですが、可能にするだけのスペックはあると思います」
さすがはドラゴンだ。
「ですが船長、お忘れですか? 私はゲート突入の際に亜空間共振波を出すためにリソースをとられるんです。だからこその手動運転なんですよ」
心配するな、忘れていない。
「じゃあどうやれと?」
決まってるだろう。
ゲート突入作業はレーティアにさせる。
感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。
竜玉編もクライマックスに向かいます。
22話で終了です。