#138 竜玉を封印せし螺旋の檻 10
本日で番外編も含めて150話です。
よくここまでやってこれました。
応援してくださった方ありがとう、ということでサプライズ。
本日2話投稿します。
まずは1話目。
で、俺に連絡してきたと?
画面に申し訳なさそうに頭を下げるポーラと後ろで暴漢を拘束しているレーティアと白ウサギ。
「すみません。商材を手に入れられなくて申し訳ないところにこんな厄介ごとまで持ち込んで」
いや、商材はどうでもいいんだが。
レーティアには逃げ帰れと伝えたのに、なぜか逃げずに連絡が来た。
まだ艦橋にいたのですぐに連絡を受けたのではあるが、……また厄介そうなのを。
「厄介ですか?」
カグヤが不思議そうに言う。
「船長がいつも通り、煙に巻けばすむことでは?」
相手が話が通じる相手ならな。
この手のは通じないぞ。
「そうなのですか?」
俺も人事として毎月何人も面接してきた。
ブラック企業だけに他の会社で使ってもらえないレベルの人間も大量に見てきて、採用してきた。
そうなると自然とダメな人を見る目は養われるというものだ。
一目見て違和感を感じ、一言話してダメだと評価する、そんなレベルの人間がこの世にいる。
総務部長に「あいつはダメだ」と進言しても人手が足りないからと採用し、たった数日で山ほどトラブルを作り逃げていったことがある。
そしてなんであんなのを採用するんだと現場からクレームがきて、総務部長は現場の教育が悪いと怒鳴り返す。
実に修羅場だった。
そんな中、俺はどうせ問題を起こしてすぐいなくなるだろうと社会保険も雇用保険の手続きもギリギリまで保留しておいたので被害が少なかった。
いつものように即手続きをしていたら解約手続きをする羽目になったことだろう。
「彼女はそんなタイプだと?」
うむ。
正直関わりたくはないのだが。
「キャプテン、申し訳ありません。でもせめて話だけでも聞いてあげてください」
そもそも話が通じるのか?
聞いたところで向こうがこっちの話を聞かないのが一番の問題なんだよ。
さっきから連れてけだの会いたいとかしか言わないではないか?
白ウサギが拘束してなきゃ暴れるんだろう?
おまえらもう警察に引き渡して帰ってこいよ。
「ですが、この方必死ですので」
それは必死と言うのでなく壊れていると言うべきだと思うがね。
でカグヤ、情報は調べられたか?
「はい。この女性の名はベルベット。彼女は2年前にこの星に訪れたレオンと名乗る宇宙船乗りと恋仲になったようですが、仕事に行くと宇宙船に乗り、そのまま戻ってきてないようです」
その辺は予想がつく。
問題はスパイラルのせいで戻ってこれないのか、
「約束したのよ! すぐ戻るって! だから待っててくれって! 一緒に連れてって言っても宇宙は危険だからって言って連れてってくれなくて! でもいつまでたっても帰ってこなくて。事故にでもあってるんじゃないかって心配で!」
もしくは戻る気が無いかだが。
「あんたに彼の何がわかるって言うの! 信じて待っててくれって言ったのよ! あんたの勝手な妄想を言わないで!」
じゃあ信じて待っててくれと言われたなら待ってなよ。
「でも、すぐにって言ったのにもう1年以上も帰ってこないのよ、心配で」
今はスパイラルでゲートが封鎖されているんだ、仕方ないだろ?
「でもすぐに帰ってくるって約束したのよ」
だからゲートが封鎖されたら跳べないのさ。
「じゃあ連れてって」
俺も跳べないんだよ。
「レオンが事故にあってたらどうするの!」
俺が君を連れてゲートを跳んでも君が事故にあう。
そんなことになったら彼氏も嘆くだろう。
「わたしはレオンのためなら死んだってかまわない!」
俺たちは巻き添えはごめんだがね。
とまあ話が通じない。
似たような問答をグルグルとまるでスパイラルのようだ。
さっさと弾かれて終わりたい。
てか学生時代に巻き込まれた友人の修羅場を思い出し胃が痛くなるんですが。
そんな時、カグヤがこっそりと情報をくれる。
向こうに気づかれないように画面の文字を読み進め、さらに胃が痛くなる。
救いのなさにどうしろと?
巻き込まれているのにもう詰んでいる状況ときた。
そういやゲートであったフクハラが頭のおかしい女に隣の星へ連れて行けと言われたとか言ってたな。
こいつのことか。
そりゃああいつも腹立てるわな。
「で、どうしますか?」
正直逃げたい。
俺的には相性が悪い。
「船長でもそういうのあるんですか?」
さっきも言ったがまだ学生の頃の友人の修羅場に巻き込まれてひどい目にあったからな。
少々トラウマで。
「お得意の口八丁で丸め込めなかったのですか?」
その当時はまだ得意ではなかった。
社会人で得たスキルだからな。
「じゃあリベンジですね」
遠慮したい。
「でもなんらかの決着をつけないとポーラ帰ってきませんよ」
無理やり連れ帰す手もあるが、このことがしこりとなってストレスを感じるかもしれないとカグヤが脅す。
そんなこと言われてもなぁ。
あの時は素直に正直に話してこじれたからなぁ。
この手の視野が狭くなって人の言うことを聞かないタイプをどうすればいいって言うんだよ?
20時までにはもう1話投稿します。
最近忙しくて執筆がサボり気味だったので自ら追い込むためにストックを放出。




