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#137 竜玉を封印せし螺旋の檻 9

今回はポーラ視点となります



 私ポーラはレーティアさんと白ウサギさんと一緒に惑星グルドニアに降りています。

 レーティアさんは初めての異星で私的にはパール、ゴール、フィ=ラガに続いて4つ目の惑星です。


 初めて降りたときに、この星はどこか故郷のマイタンに似ているような気がしましたが、6週間たった今では似て非なるものだと感じるようになりました。


 例えば掃除です。

 蒼龍教では掃除することは修行の一環です。

 もちろん管理頭脳がする方が丁寧で綺麗になり、もっというならば楽です。

 ですがそこを人の手ですることに価値がある、そう思われています。

 心をきれいにするためには、磨くためには積極的に掃除をすることを推奨されます。


 この星でも同様の考えから国民に掃除を義務付けられています。

 我が故郷でも掃除を嫌う人は確かにいます。

 ですがこの星ではほぼ全員がしぶしぶ、嫌々おこなっています。

 

「建前から意義を見出せないんだよ」


 不思議に思っているとレーティアさんがそう言います。


「ポーラ姉のところみたいにみんなが同じ神様信じている方が宇宙では稀なんだよ。でもって信じている神様の教えだからマイタンではみんな掃除をする、それが当たり前。この星では竜玉は神様ではないんだよ。管理頭脳の親玉としての認識で、それに従うことが効率がいい、従わないと恩恵が受けれない、だから仕方なくするって感じみたいだよ」


 マイタンでは掃除をしなかった場合、先生に叱られ諭されるくらいですが、それによってなにか生活に困るというわけではありません。

  

「しなくてもいい奉仕作業を勝手に割り当てられて強制されるからみんな嫌がるんだろうね。マスターが嫌いそうな星だよ。もっともこの星に来る前に会ったフクハラって人も嫌がってたようだからみんなそうなのかも」


 私はお掃除することが好きなのですが。

 星によって文化が違うと船長もよく言っていますがこれもそういうことなのでしょうか?




「この星は竜玉が私生活に干渉するせいかな? あまり工芸品だのの手作業で作る文化ってのが盛んではないね」


 なにか商材をと歩き回っていますが特にピンとくるものはありません。

 どこでもこれくらいなモノなら買えそうです。


「竜玉から健全な精神はまず肉体からということでスポーツは推奨されているけどその他文化はぱっとしないね。芸術的なものもあるけど人間の主観だからね、僕だとわからないんだけど」


 私もその辺はさっぱりです。

 こうなると貴金属が良さそうなのですか?


「貴金属も一通り見たけど相場的には安いとかはないね。カグ姉の話だとイザヨイのコンテンツは結構売れているようだけど、大量に買えるほどの金額はどうかな?」


 そうなるといよいよ購入すべきものがありません。

 キャプテンになんと言いましょう。


「別にマスターは気にしないと思うけどな。次、頑張れって言うよ」


 優しい方ですからきっとそう言ってくださると私も思います。

 ですがその優しさに甘えていいのでしょうか?


「いいと思うよ。まだ宇宙に出て間がないポーラ姉に必要なのは経験だもの。マスターは結果ではなく経験を積ませようと思ってるだけだよ。それに今回は不可抗力だよ」


 レーティアさんの言葉に白ウサギさんも頷いています。

 ……仕方ないのでしょうか。

 何もできてない私です。

 何とかしてお役に立ちたかったのですが。


「あのね、ポーラ姉。新しいゲートを発見して跳んだ人が何もできてないって言うのはおかしいよ。宇宙に出て半年の人が歴史に名を残したんだよ。大したもんだって。そういう意味ではマスターより全然上の功績なんだから」


 そんな、あれは偶然で。

 キャプテンだって惑星パールでの皇位継承できっと名を残しています。

 

「マスターもそりゃあ功績があるかもしれない。でもポーラ姉だって功績はあるんだよ。僕的にはその功績を認めて、今回この星ではバカンスに専念してもいいんじゃないかと思ってるよ。マスターだってゆっくりすることが第一って言ってたじゃないか」


 そう言っていただけるのはありがたいです。

 とはいえこの星は少々滞在にはむいてないようですし、用事がこなせないならイザヨイに戻ろうかなと思っています。


「もうちょっとバカンスしようよ」


 十分大地は堪能しました。

 それにこの星はいつ出て行けと言われるかわかりません。

 もう船に戻りましょう。


「でもさ」


 あとこの星のお魚はいまいちです。

 鮮度があるわりに素材をいかしきれていないというか技法が足らないというか。

 ピンクウサギさんの料理が恋しいです。


「そういうことなら、まあ」


 私の主張にレーティアさんはなぜか肩をすくめます。

 白ウサギさんにホテルのチェックアウトと荷物を取りに行ってもらい、レーティアさんが宇宙港までの交通機関の予約を始めたときに、


「ねえ、あなたが宇宙から来た人?」


 いきなり女性に声を掛けられます。


「ねえ、惑星ガーランドに連れてってよ!」


 私より小柄な黒髪の女性が長い髪を揺らしながら鬼気迫る顔で私に言います。


「お姉さん、ちょっと待ってよ。確かに僕らは宇宙船乗りだけど船長ではないんだよ。僕たちにその権限はないし、惑星ガーランドは今スパイラルで封鎖されている。どうやってもいけないんだよ」


 レーティアさんがかばうように私の前に立ちます。


「そんなの知らない! わたしは行きたいって言ってるのよ!」

「そんなこと言われても無理なものは無理なんだよ」

「いいから連れてってよ!」

「だ~か~ら~」


 なぜか女性は隣の星に行きたいようですが、レーティアさんの言葉に聞く耳を持ってくれません。

 そんな押し問答をし続け、激高した女性はカバンからナイフを取り出します。


「いいから連れて行きなさい! 刺すわよ! 本気よ!」


 震える手でナイフをレーティアさんに向けます。


「お姉さん、僕は移動型の管理頭脳だ。そんなのでは傷はつくけど特に機能に損傷は受けない。もっとも刺される前に逃げることだって可能だ」

「そんな嘘に騙されない!」


 女性は聞く耳を持たずにレーティアさんにナイフを持って駆け寄りますが、


「きゃ!」 


 ナイフを持つ手を握り、そのままひねって女性を転ばします。

 

「ポーラ姉は離れて!」


 やりすぎではと助けに行こうとしたらレーティアさんに止められます。

 そうこうしていると白ウサギさんも駆け寄ってきて私の手を引きます。


「なんでよ! なんでみんなわたしの邪魔するの! わたしは彼に会いたいだけなのに!」




明日まで19時の予約投稿します。

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