#135 竜玉を封印せし螺旋の檻 7
ポーラが地上に降りて2週間がたった。
久々に魚から解放された俺は肉中心の食生活をしている。
昨晩は一人焼き肉だ。
カグヤが焼くことをしようかと手を挙げたが断る。
俺は焼肉は自分で食べる分は自分で育てたい派だ。
タンに始まり、ハラミ、ロース、カルビと食べ、……ホルモンも食べたい、ミスジやイチボ、ザブトンある?
ええい、たまには贅沢しよう。
あとライスも持ってこい!
「船長、ビールはもういいんですか?」
カグヤ、よく聞きなさい。
焼肉に一番あうのは白米です。
焼肉限定でライスは飲み物となる。
「船長、それは錯覚です。固形物はよく噛んで食べてください」
とカグヤの制止も気にせずに調子にのって食いまくり、ただいま絶賛胃もたれ中。
「船長、もうお昼過ぎてます。まだダメなら医務室行ってください」
たかが食いすぎの胃もたれで医務室行くのもなあ。
ほっとけば直るよ。
ちなみにこの2週間で何度か事務総長から連絡が入っている。
「ただいま船長は地上に降りれないことがショックで病に臥せっております」
と対応させたら事務総長は神妙な顔で「お大事に」といってすぐに引き下がるという。
なるほど、惑星が見えるのに降りれないというのは重度な鬱になっても不思議ではないというのか。
そしてそれを命じた手前、向こうも強く出れないと。
なるほど、なかなかいい手だな。
しかしこうなるとピンピンしているのはダメだろう。
ということでカグヤ、引きこもろうと思うんだが。
「ダメです」
取り付く島もなかった。
カグヤの忠告を無視して医務室に行かずにダラダラと艦橋で過ごして、夕食の時間になった。
ここでまだ腹が減ってないなどと言うと医務室に強制連行されそうなので、無理して軽めに食うことにする。
ピンク、うどんを。
かけ、ざる、ぶっかけから選べ?
胃を温めたいからかけか
いやここはぶっかけだ。
うどん少な目、大根おろしを山盛りで。
「船長、いまだに胃が戻ってないことは察してますから素直に医務室行きましょう」
あっさりとばれてしまった。
山盛りと言ったら本当に山できた大根おろしはうどんよりも多いのではないだろうか?
まあいいかとそのまま食べたり、めんつゆにつけたり、すだちをかけ、うどんに絡めてすする。
ポーラとレーティアはどうしてる?
「街を色々探索しているようです。特にトラブルはありません」
そうかい、ならよかった。
コンテンツの売り上げのほうは?
「驚くほど好調です。倍の値段など関係ないくらいの勢いで売れています」
よほど娯楽に飢えているのかね?
「この星の交易船はすべて他惑星に出払っているようです。本来ならとっくに帰ってきてもいいのですが、おそらくこのスパイラルのせいで隣の惑星に足止めを食っているのでしょう」
ああこっちがスパイラルだと対応するゲートもスパイラル中だとかいってたな。
それはお気の毒に。
「ちなみになぜ一番近くの惑星フィ=ラガのコンテンツを出したのか理由があるのですか?」
嫌がらせかな。
隣だからいずれは自分とこの交易宇宙船でもすぐ行けるだろう。
安く簡単に手に入るものを高値で買っていたと思うと腹が立つだろう?
「まあそうでしょうね?」
国民の怒りが事務総長や竜玉に行けばいいなと思って。
「なるほど、そういう嫌がらせですか」
あとどんなに長くいてもワイズのコンテンツは出す気がないぞ。
ワイズのコンテンツはこの船独占のコンテンツで、惑星内で楽しむことはできるが他の宇宙船がそれを買って他の国で売れないよう設定をしている。
つまりこの星ではいま他星で流行っているコンテンツが見れない。
そして今後、例えばフィ=ラガから入手する新しいコンテンツにワイズのコンテンツから派生したものがあった場合、元ネタのオリジナルが手に入らないということだ。
長い目で見たら地味な嫌がらせになるだろう。
「船長、実はかなりご立腹でしたか?」
まああの事務総長の言い分にはな。
竜玉の指示だから情状酌量の余地はあるとはいえ、あの話の持っていき方はキレられても文句言えまい。
「ちなみに船長が逆の立場ならどう交渉しましたか?」
……そうだな、入国させずにコンテンツだけ設置してもらおうと思うからダメなんだろう。
もうここは国が一括でコンテンツを買い取る。
もしくはコンテンツの物々交換というわけではないが惑星グルドニアが100個のコンテンツ出すので100個のコンテンツをください、的な。
「なるほど、それなら対等な取引になりますね」
まあ釣り合うかどうかが賭けだがな。
「それでも一方的でない分相手を怒らすことはないですかね?」
入国禁止の時点で怒るんじゃないか、俺以外。
「そうでしたね」
さて、少し腹に入れて胃を動かしたせいか少し食欲が出てきたな。
大根おろしの効果かもしれないが、これで何とかなりそうだな。
ピンク、今度はかけうどんをくれ。
トッピング?
天ぷら、肉、きつね、月見。
……素うどんで。
ネギと天かすを若干多めに。
カグヤ、他に聞いておくことあるか?
「たった今、竜玉から通信が入りました。つなぎます」
食堂のモニターに現れたのは青色のボールに目玉と口を書き、手足をつけた……ゆるキャラである。
……これが何だって?
「私が竜玉よ! この国のドラゴンよ!」
……なぜゆるキャラ?
「うるさい! 最近はこういう格好が国民に愛されるのよ!」
……そうですか。
まあいろいろあるよな。
「本当にそうですね。船長は引きこもりですが私の姿に文句言わないだけでも評価すべきことだったんですね」
「うるさい!」
ああ、悪い。
で何の用だ?
「さっさと出ていけ! と言いたいところだけど、蒼龍が話をしたいって言ってるわ! とりあえず通信に出なさい、そしたらしばらく滞在させてあげる」
そう言い放ってゆるキャラ、もとい竜玉は消える。
そしてすぐに、
「――日下部よ、聞いてくれ!」
蒼い龍が画面に現れる。
よし、とりあえず通信に出たな。
カグヤ、切れ。
「了解」
なにか蒼龍は言っていたが画面は黒くなる。
よし、これでしばらく滞在できるんだろう。
なにせ通信に出ろと言われただけで話をしろとは言われてないからな。
「詭弁ですね」
ここはそういう国なんだろう?
「事務総長はそういってましたね」
なら問題ないだろう。
さてうどんを食うかな。
ピンク、七味くれ。
あと天かすはもうちょっと多いほうが好みだ。
明日も19時に予約投稿となります。
人気?キャラの再登場です。
竜玉のほうはまあこんな感じでw