#131 竜玉を封印せし螺旋の檻 3
なるほどこの惑星グルドニアには惑星ガーランドに行くゲートしかなく、それがスパイラルという現象でゲートが覆われ使えなくなっていると。
「そうだ。もう1年以上になる」
グルドニアは孤立していると。
「ああ、オレはあの星から出られなくなったんだ」
そしてその惑星は「竜玉」と呼ばれる管理頭脳の意思決定力が強くて人間はそれに従って生活していると。
文化の違いと一言で片づけるにはいろいろ突っ込みどころがあるんだが、まああとでカグヤに聞こう。
「オレはあの星は息苦しくて、スパイラルが治まっていないか、もう一度見に行こうとしていたらクサカベさんにあったんだ」
そうか、つらかったな、兄弟。
でもお前の不運もこれまでだ。
なぜなら俺と出会ったからだ。
どうだ兄弟、新発見のゲートを跳んでみたら?
「そりゃあ本当にあるなら願ってもない」
あるさ。
この先はフィ=ラガって惑星につながっている。
「フィ=ラガって……めちゃくちゃ遠いとこだぞ、そこへか!」
ああきっといい儲け話になる。
購入希望リストもやろう、行ってみな。
「おい、情報をくれるのか!」
ああ、こういう時は助け合おうじゃないか、兄弟。
「兄貴!」
フクハラは熱い瞳で俺を見る。
そしてそれをキラキラした目で見るポーラには気が付かないふりをする。
「ありがてぇよ、兄貴。あんた宇宙一いい人だ!」
そんなことないさ。
最初にいったろ、自分を信じろと真顔で言う奴は詐欺師だと。
だから俺のことも信じるんじゃないぞ。
「兄貴、かっこいいぜ!」
そんなことないさ。
その証拠に一つ頼みたいことがある。
「なんだ、俺の持ってるこの辺の情報ならもちろん出す」
それもありがたいが、届けてもらいたいものがあってな。
「なんだい?」
手紙、ビデオレターっていうのか、それをこの先のフィ=ラガ、パール、マイタンに届けてほしい。
「そりゃあ別に予定がある旅じゃないけど、なんでまた?」
悪いな、うちの娘たちの友達や家族がいるんだ。
ちょいと事情があって離れてるからな、チャンスがあるなら手紙くらいって思っていてな。
俺にできることってそれくらいだからな。
「兄貴、あんたマジいい人だ!」
そんなことはないさ。
ただの自己満足のおせっかいさ。
で、頼まれてくれるかい?
「お安い御用だ」
だそうだ。
ポーラ、レーティア、手紙を書いてこい。
「ありがとうございます!」
時間があるときに少しずつ書いているので、今日の分を追加で書いてくると慌てて出ていくポーラ。
「僕も送るの?」
ああ、ヨミ博士に新しいマスターはとてもいい人ですと伝えてやりな。
「……まあいいや、詐欺師だよって伝えておくよ。……でもありがとう」
そういってレーティアも艦橋を離れる。
で、悪いが少し時間くれるか。
「気にしないでくれ兄貴。オレはあんたのためだったらいつまででも待つぜ」
だんだん重くなってきたな、こいつ。
「兄貴! 腕時計が売れるのか!?」
待ち時間に情報をすり合わせているときにそんな話になる。
持っているのか?
「ああ、オレの惑星ではそういう機械式の小物が盛んで、腕時計やら懐中時計を交易用に持っているんだが、この辺では売れなくて」
なら惑星シールに行くといい。
そして俺の名を出して王子に売りつけな、高値で買い取ってくれる。
その金でパールやゴールで宝石を買えばいい。
それをよそにもっていけば高値で売れる。
「なんだよ、その錬金術!」
稼いで来い、兄弟。
「いいのか? 兄貴の稼ぎが」
俺のことは気にするな。
「……オレ思うんだ、神様がいたらあんたのような人だって」
涙ぐんでるところ悪いが、それは本気で勘弁してくれ。
いいかよく聞け兄弟、この世に神はいない。
いるのは神のフリした悪魔だ!
自分の趣味のためならようやく社畜という地獄から解放された善良な人間を、宇宙という地獄に叩き落とす悪魔だ。
いいか、兄弟もう一度言う。
この世に神はいない。
信じるな、祈るな!
それが長生きのコツだ。
「兄貴が何言ってるのかよくわからないけど、わかったよ」
わかってくれたならそれでいい。
1時間後、ポーラとレーティアの手紙を受け取ったフクハラがフィ=ラガへのゲートを跳ぶ。
そういや事故をしかけたことを謝罪しなかった気がするが、まあ気にしてないようだから一件落着ということで。
「船長、私思うのですが」
どうした、カグヤ?
「人に信じてくれって言って騙す詐欺師って3流なんですね。1流は自分のことを信じるなと言って騙せるんですね」
ちょっと待て、俺が何を騙したと?
今回はただ話していただけではないか?
「あそこまで心酔させてよく言いますよね。普通数時間であそこまで人を懐柔できませんよ」
人聞きの悪い。
人徳と言ってくれないか?
「私は思うんですが、自分を信じろという人と同じくらい、自分に人徳があるという人を信じてはいけないと思います」
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