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#130 竜玉を封印せし螺旋の檻 2

「船長が律儀で助かります」


 まあぶつかってないなら問題はないだろう?

 ちょっと謝って終了だよな?

 何かすることがあるのか?


「あと広い宇宙であまりすれ違うってことが珍しいですからね。挨拶くらいは」


 なるほど。

 前に一度すれ違ったのは海賊だったのでこれが初めての宇宙船乗りとの会話かもしれないな。

 さて、相手を呼び出せるか?


「艦橋にいないので今準備中です。少々お待ちを」


 まあ俺だって日頃は艦橋にいないもんな。

 いきなり呼び出して悪いことをした。

 じゃあ来るまでの間に、てかここはどこなのかわかったのか?


「はい、少し厄介な星系に跳びました」


 厄介?


「このゲートから最寄りの星の名はグルドニアといいまして」

「グルドニアって!」


 レーティアが驚く。

 なんかあるのか?


「フィ=ラガからだと遠すぎて名前しか知らない星だよ」


 遠い?


「ゲートを600個近く跳ばないとたどり着けない星なのです」


 1ヶ月に1回跳んでも50年か、それは遠いな。

 てかゲートってそんなにあることに驚きだ。

 俺の感覚で言うと日本を各駅停車の旅がいきなりブラジルについたようなもんか?


「若干違いますが、そんなニュアンスで結構です」


 遠さが厄介なのか?

 普通ならそれだけ離れると情報がなく苦労するかも知れないが、カグヤならなんの問題もないだろう?


「情報を得たうえで厄介と言っているのです。」


 そうか、聞きたくないなぁ。


「とりあえず後にしましょう。通信が繋がります」




 画面に現れたのは痩身でどこか不健康そうに見える男だった。

 どこか落ち着きがなく小刻みに揺れている。


 とりあえず名を名乗ると相手も、


「宇宙船チャンバー、船長のフクハラだ」


 ボソボソっとした声で名乗る。


「お前、どこから、どこから来たんだ? スパイラルを抜けて来たのか?」


 スパイラル?

 はて。

 この辺にスパイラルあるんだ?

 俺は新発見したゲートを跳んだのさ。

 その際、進行方向にあなたの宇宙船と接触しそうになって謝罪をと思いまして。


「新発見のゲートだと? そんなあからさまな嘘に騙されるもんか! 俺はもう誰も信じないぞ!」


 なぜか目を見開いて怒鳴りだす。


「どいつもこいつもなんだって言うんだ! 宇宙船乗りはカモなのか! 異星の人間には何しても構わないっていうのか! オレが何したって言うんだよ」


 俺もあんたに俺が何したのか教えてもらいたいもんだ。

 とはいえ何がキーになったのかは知らないが激高している相手には茶々を入れてはならない。

 死ぬんじゃないかと思うくらい顔を真っ赤にして、さらに大声で怒鳴りだすからな。

 生前、支社長で経験済みだ。


「特にこの惑星はなんだっていうんだ! 竜玉がそんなに偉いのか! なんで異星のオレまで公園の清掃をするんだ! そんなの管理頭脳の仕事だろうが! 何が街をきれいにすることは心をきれいにすることにつながるだ!」


 似たようなことを5Sだのボランティアに駆り出されたときに言われたなぁ。


「こっちだってさっさとこんな星からおさらばしたいってのに、ゲートはスパイラル中だわ、頭のおかしい女が隣の星に連れて行けっていうわ! やかましいって言うんだ!」


 なんだかんだで5分くらい喋り、いや怒鳴り続けて疲れたのだろう、肩で息をしている。

 こういっては何だが、怒鳴ることに慣れていないな。

 感情に任せて言うのは結構だが、時々黙って睨むとか机をたたく、物を投げつけるそういったことを挟まないとそりゃあ長くは持たない。


「船長はそういう修羅場にはなれていますよね」


 と相手に聞こえないようにカグヤは言う。

 まあそれはさておきどうしたものかな?

 とりあえずぶつかりそうになった負い目から黙って聞いてはいたんだが、反論するか、はたまた……。




 フクハラ船長、俺もあんたと同じだ。

 俺は自分を信じろと真顔で近寄ってくるやつは詐欺師だと思っている。


「…………」


 肩で息をしながら俺を見る。

 とりあえず聞いてくれそうだな。



 俺も宇宙にでてからろくな目にあってないのさ。

 最初の惑星では美食家が俺の持ってるワインをよこせ、さもないと殺すと言って私設軍隊を差し向けてきた。

 次の惑星に行こうと思ったら海賊に襲われ、どうにか逃げたと思ったらそこの惑星では才能のかけらもない芸術家志望がパトロンにしてあげるから感謝しろとまとわりつく。

 3つ目の惑星では俺は何もなかったのだが、権力者に冤罪をきせられた娘を引き受けることになり、4つ目の惑星では頭の緩い王女と頭の堅い影姫の姉妹喧嘩に巻き込まれる。

 ついさっきもロリババアの遺言に俺を引きこもらせてくれない管理頭脳を押し付けられる。


 なあ、宇宙っておかしくないか?

 俺は何も悪いことはしてないぞ!

 ふざけんな、宇宙よ!



「……わかる!」


 俺の力説にフクハラ船長は大きく頷く。


「そうなんだ、オレは、いや、オレたちは悪くない。宇宙がおかしいんだ」


 そうだ、宇宙が悪い!

 創ったやつはもっと悪い!




「カグ姉、僕ディスられたんだけど」

「まあいつもディスってるからたまには黙って聞いてあげなさい。私としてはよくもまあ被害者面ができるもんだと感心してますよ」


 お前らはとりあえず黙ってろ。




「あんたクサカベっていったか。……あんたとなら分かり合える気が、友達になれそうな気がする」


 おいおい、俺はもうとっくに友達の気でいる、いやもっと深い部分でつながれそうだよ、兄弟。


「――兄弟。……オレ、宇宙に出てからこんなにわかってもらえたのあんたが初めてだ」


 俺もさ、兄弟。

 話が分かってもらえるのってこんなに嬉しいことなんだな。




 俺たちが画面越しで分かり合っていると、目を覚ましたポーラが艦橋に戻ってきて、「私がいない間にリアルBLが!」と目を輝かしている気がするがきっと気のせいだろう。



誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。


男のキャラ久々に書いたなと思ったら惑星パール以来でしょうか。

名前があるキャラだとマーロン三世以来かな。


特に重要なキャラではない……はず。

こっちでもあっちでも。

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― 新着の感想 ―
眼帯詐欺海賊女じゃない…だとΣ(゜ロ゜;) なう(2025/08/06 12:45:34)
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