#14 常識の時間 1 (ドラゴンシステム)
サブタイトルを考えるのが面倒になってきました。
話数だけにしておけばよかったなあと今更後悔しています(笑)
「ドラゴンについてはこれから立ち寄る惑星で様々な見解があり、どこも明確な答えが出ていない現状ですが、船長には正しい答えを教えておきます」
「いいのか?」
「いいも悪いも……私の上の存在をすでに知ってる人に、世間で広まってる間違った通説を教えても意味がないでしょう?」
まあ創造主たる女神に会ったのに、いまさらドラゴンが神だって言われても仕方ないわな。
「そうですね、実際そういうところもあるのですが。とどのつまりドラゴンは創造主が作りたもうた自律思考型管理頭脳です。なんのためにと問われると銀河系単位の話になるのですが」
コホンと咳払いする。
何気なく見てたがこういうしぐさを自然にできるあたり自律思考型管理頭脳と言われてもよくわからない。
高位の知的生命体って言われても信じられるが、創造主が人間よりもはるかに高位なのだから、それが作ったものが人間より高位でも何ら問題がないということなのだろう。
「我が主はこの銀河の唯一の神です。他の銀河にはほかの神がおり、それぞれが自由に各銀河をすべているようです。放置している神もいれば、積極的に介入している神もいるのでしょう。科学が発達している銀河もあれば、魔法が発達している銀河もあるという感じだそうですが、この銀河は我が主が……あんな感じですので」
神の眷属でもそういう発言ですか。
「本当にスペースオペラがお好きな方で、自分の担当の銀河には知的生命体が宇宙を駆け巡ってほしいという思いから我々ドラゴンシステムを作られました。各惑星に生まれた知的生命体が成長して宇宙に出られる手助けをする、それが使命です」
なんていうか、普通に生きてたらたどり着かない答えじゃないか、それって。
「まあそうかもしれませんね。そのドラゴンシステムの最大の仕事は人が宇宙に出る際に必要なもので人類には到達できない存在、『三大人類不可能領域』と呼ばれるものを人に授けるということになります」
なんか女神さまが出て言ってたやつか。
「それです」
嫌なことを思い出したのか顔が陰るが見なかったことにする。
「しかし宇宙だけなら地球でも出てたんだが?」
「そうですね。同一星系なら何とかなるかもしれませんね。それが人類の英知の限界なのですが、不可能領域については明日にしましょう。今日はこのままドラゴンシステムについて語ります。地球やワイズのようにドラゴンが滅ぼされる場合もありますので、銀河で約6割弱の惑星が外宇宙に進出可能になっています」
「その数字が多いのか少ないのかわからないのだが?」
「創造主からすれば少ないというでしょうが、私からしたら妥当だと思いますよ」
滅ぼされた身としては人の凶暴さをよく知っているのだろう。
「4割のほうにはまだそこまで到達してない人類や、場合によっては一度滅んで2周目、3周目の惑星もありますしねえ」
地球は2周目待ちか、気の長い話だ。
ちなみに人類が宇宙に出た惑星のドラゴンってどうするの?
「特に決められてなく、各自の意思を尊重してくれています。多いのは役目が終わったと告げ宇宙に飛び立った振りや眠った振りをするパターンが多いですね。場合によってはその惑星の知的生命体に神として扱われてそのようにふるまっていたり、管理頭脳として働いてるパターンもありますね」
「それはまた、なんていうか」
「何千年何万年と見守っていると、馬鹿な子ほどかわいいっていうか馬鹿な子でも愛着がわくというか……そんなもんですよ」
どこか遠くをいつくしむような眼で見る。
「実感こもってるな」
「こめましたもの、たっぷりと」
たかが40年ほどの人生の俺がわかるというのはおこがましい感傷だろう。
「ちなみに宇宙船となったドラゴンもいるのか?」
「それはあまりいないですね、確か……5隻ほどあるみたいです」
少ないな。
「ドラゴンに何かを頼むとしても宇宙船だとあまりうまみがないですからねぇ。……とはいえ1隻は特殊なタイプですね」
俺から見る画面上のカグヤは何かしているようには見えないのだが、画面外で検索をしているのか情報を探し出す。
「家族で宇宙旅行中に謎の宇宙船に襲われて遭難。
どうにか逃げて不時着したが最終的に生き残ったのは少年一人。
宇宙船も壊れ、緩やかに死を待つだけだったはずが、彼に救いの手が現れる。
彼の不時着した惑星はかつてドラゴンを倒すことを選択し、結果ほろんだ惑星で、声の主はその惑星の復活したドラゴンだった。
単に命を助けるだけのつもりだったドラゴンに少年は復讐が終われば何でもするから力を貸してくれと頼む。
少年の復讐にも報酬にも魅力は感じなかったが、自分の管理する惑星の復活まで千年はかかることと外の惑星に復活を早める植物や技術があるかもとダメ元で暇つぶしがてらにと少年に力を貸す。
宇宙を股にかけた復讐と暇つぶしの旅が幕をあげた」
「……なに、そのラノベのあらすじは?」
「なにと言われても、そのドラゴンがそういってますよ」
よくわからんが、なんか情報を受け取ったのだろう。
「温度差がありそうなペアだな?」
「ドラゴンはなだめようと思ったら手段があるのですが、あえて煽ることで復讐心を持続させてるみたいですね」
「何のために?」
「さあ、理由まではわかりませんが……」
カグヤは小首をかしげ、思い付きを口にする。
「創造主が好きそうな展開ですしねぇ」