#126 宇宙空間での危険予知
では女神の差し金だと仮定しよう。
「仮定ですめばいいんですが」
希望を持っておこう。
仮定で済む可能性もゼロではない。
「祈りたい気分ですね」
問題は祈る相手が元凶だしなぁ。
それはさておき目的について考えてみよう。
行動原理から考えるにスペースオペラが関わってくると思う。
「私にそれを否定することはできません」
悲しいな。
さてポーラが指し示す先に何があるだろう?
「見る限り何もないんですけどねぇ」
遭難船はないか?
「船長の言うところの管理頭脳も乗っていない宇宙船が漂っていて、レーダーにも反応しない素材で宇宙船を作っているのであれば、近くに行かないと気が付かない可能性はありますが、まあ望み薄です」
じゃあ質問を変えよう。
航行中の不意に起こる危険について。
「可能性が高いのは先ほども言いましたが隕石やスペースデブリが宇宙船に当たることです。宇宙船にダメージを与えるほどの大きさのものが飛来することもあります」
対処法は?
「常に周りを監視しております。見逃すことはありませんので即座に迎撃もしくは回避で対応します」
たとえば反応できないほどの猛スピードで来る可能性は?
またそれが大量に来る場合は?
「私が反応できない速度ですか?」
自分のスペックからそんなことはありえないと思っているようだ。
例えば近距離から予期せぬ方向から何かが飛んでくる可能性もあるだろう?
「常にシールドは張っていますので出力を上げる、その方向を厚くすることで対応しましょうか」
カグヤは答えを絞り出す。
じゃあ他には?
「スパイラルでしょうか」
なんだそりゃ?
「真空に高い低いとか重い軽いがあるとは言ったと思いますが、それが幾重にも複雑に絡み合ってまともにまっすぐ飛べないという場合をそう表現しています」
そんなのもあるのか。
台風とか竜巻のイメージでいいのかな?
そんなわけのわからないのがあるのか?
「苦情は宇宙を作った創造主に」
了解した。
で、対処法は?
「近寄りません。別にいきなり発生するわけでもありません。兆候がありますのでその宙域には近寄りません。そこにわざわざ飛び込もうとしない限りは問題ありません」
不意に巻き込まれるわけではないのならそれでいいのだろう。
台風で思いついたが磁気嵐とかは?
「あります。船体に万全な対策をしていますが、それを突破する強力な磁気もありえます。これもスパイラルと同じですね。近寄りません」
なんかさっきから近寄らないばかりだな。
「それが一番の対策ですよ。そこを無理に通る必要性もないのですから。あと急ぐ必要性も」
まあそう言われると正しいのか。
君子危うきに近寄らずという。
俺は宇宙に出てからはその言葉を座右の銘にしたいと思っている。
他には?
「惑星や恒星が近かったら重力に気をつけますが」
重力と言ったらブラックホールは?
「いきなり発生するものでもないですからね、情報があります。スパイラルと同じで近づきません」
他にもいくつかの危険を聞くがピンとくるものはない。
一応聞いておくが宇宙空間でも平気な巨大生物がいるとかはないよな?
「それは地球の創作でしょう? 宇宙はそんなに生易しい空間ではないのですよ」
それはこの世界の常識だろう?
もしかしたらいきなりとち狂った女神が新しい生物を創造する可能性だって。
「それは……。可能性がゼロであって欲しいと心の底から願っています。さすがに今更いきなり法則まで変えないかと」
脅すわけではないが俺の存在自体、いろいろ特例だろうよ。
「確かにそれはそうですが、船長は選ばれた以外は普通の人間……」
と言いかけ、俺を見て固まる。
「詐称能力はともかく、引きこもりと操船能力は異常ですよね。船長のせいでなにか法則狂っているのかも。ちょっとネットワークにつないで他のドラゴンに情報をもらいます。早急に研究しなければ」
後にしろ。
話をまとめると、基本的に危険には近寄らない。
不意の遭遇には逃げるまでの間は対処できる備えがあるから、しのげる。
「そういうことです」
ならよしとしよう。
さすがに女神もいきなり死ぬような目にあわせないだろうよ。
……たぶん。
「メリットがないはずです。船長に死なれるなり、大怪我をして航海不能になればここまで何してたのかという話ですものね」
カグヤとイザヨイに対応できるレベルのことだとそれほど焦ることもないしな。
そう考えると女神の差し金案もハズレかな?
「あまりスペースオペラをしない船長を解任するために亡き者にしようとするなら話は別ですが?」
その場合は俺だけにしてもらいたいもんだ。
お前ら巻き込むのは忍びない。
「抗わないのですか?」
実感は無いが一度死んだ身だからな、今わの際に見た夢だと思って諦めるよ。
「潔すぎではないですか? 人間はもうちょっと生に執着する生き物かと」
ただ、蘇生してもう一度クズノミヤで働けって言うなら抗うぞ、必死にな。
場合によってはカグヤも巻き込み、イザヨイが半壊しそうでも逃げるぞ。
「そういう状況は私もイヤなんですが、1度くらいは船長の必死な姿を見てみたいものですね」
何が待ち構えているか、わかった方もいるかもしれませんが答えは明後日の#128です。
明日は主人公的にはそんなものより大事なことがあります。