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#125 違和感

「すみません、遅くなりました!」


 ポーラが慌てて艦橋に飛び込んでくる。

 別に急ぐことはないぞ。


「そうですよポーラ、悪いのは引きこもってなかなか出てこない船長ですから」

「そうだよ、規則正しいポーラ姉にあわせられないマスターが悪いんだよ」


 ほんと一人増えると厄介だな。


「いえ、私がちょっと考え事してたせいです、すみません」


 ポーラ、お前はそのままでいてくれ。

 あとでかぶら蒸しを食わせてやろう。


「ありがとうございます。頑張ります」


 先ほどの申し訳なさそうな顔から一転、笑顔になる。


「姑息だね」

「いつもの手ですよ」


 失敬な。




「では揃いましたので、今後の予定をと思います」


 次の惑星か?


「はい、この星系から15日ほどのところにゲートがありまして、そこが惑星沖雲に通じています」


 選択肢はないんだな?


「戻るという手もあります。シールに戻り、そこからゴールのゲートを通りそこから20日の場所にもまだ通ったことのないゲートがあります」


 いまシールに戻ると腕時計が手に入ったのかと誤解されそうだからやめておこう。

 まあポーラがイザベラ、エクレアに会いたいというならそっちを通ってもいいのか


「いえ、そういうことはないのですが……」


 どうした?

 何かあるなら言ってみろ。


 なにやら言いたそうにしているように見えるポーラに俺はうながすと、しばしいいよどむが意を決して口を開く。


「あの、フィ=ラガを出航してから何か変なのです」


 変?

 それは体調か?


「いえ、体調ではなくて」


 まあ、体調の変化はカグヤがモニターしているだろうから何か異変があったならすぐ伝わるだろう。

 問題は精神的なことだ。

 目にも見えず、対処法もこれといってあるわけではない。

 ゆえにカグヤが一番気にしているところだ。

 特に思春期の女の子は気をつけないといけない。

 場合によっては惑星パールやマイタンに引き返すことも検討するべきだ。


「何か違和感があります」


 何に?


「僕がいることが違和感?」

「いえ、レーティアさんではなくて……何て言えばいいのか」


 まあ、ゆっくりで構わん。

 あと抽象的でもいい。


「えっと、外に違和感があります」


 外?

 部屋のか?


「いえ、宇宙船の外のような気がします」


 はて?


「現在この宙域は真空も穏やかです。スペースデブリや隕石等はそれなりですが、イザヨイのシールドを突き破り外壁に当たるようなものは見当たりません」


 カグヤは船を中心とした宙域図をモニターに映し出す。


「そういうのではなくて……」


 ポーラはモニターを指差して、


「あの方向に違和感があります」


 イザヨイの進行方向から左下にずれた方向だ。


「レーダーや望遠でモニターできる範囲内には特に異常は見当たらないのですが?」

「そう、ですか。……何か違和感がありますが、やっぱり気のせいですよね」


 とポーラは恥じるようにうつ向く。


 まあ、いいんじゃないか、進路をそっちの方向に向けてみよう


「キャプテン、そこまでしていただかなくても」


 どうせ急ぐ目的もないんだ。

 気になることは確認してから行こう。

 それにもしかしたらゲート航行のやり方を知らない惑星の住人が宇宙に出ようとして遭難したのかもしれないだろう?

 そこには未知のコンテンツやワイン、腕時計があるかもしれない。


「そういう設定でしたね」

「そんなあからさまな嘘でよく騙せたよね?」

「レーティア、そこは船長の話術……もとい詐術ですよ」


 カグヤ、わざわざ言い直すな。


 とまあポーラ、単なる暇つぶしだ。

 なんかあったらめっけものだ。


「すみません、よろしくお願いします」




 ただポーラが精神的に病みかけている可能性も否定はできない。

 カグヤ曰く、宇宙はそれほど過酷なのだという。

 レーティアに引き連れられて医務室でメディカルチェックを受けることになった。


「私的には船長にも受けてもらいたいんですけどねぇ」


 どんなに正常と言っても認めてくれない管理頭脳の言うことを信じれないからな。


「管理頭脳を信用できないなんて病気ですよ」


 きっと信用できない人種がドラゴンを滅ぼすんだと思うんだよ。


「なるほど、新解釈ですね。それはさておきポーラのことはどう思います?」


 3つ思い当たる節があるので可能性の低い方から検証しよう。


 1つ目、蒼龍がなにか指令だの信号だのを送っている。


「同じ惑星内ならともかく、ゲートを使ってこれだけ距離があるとちょっかいの出しようがないですよ。いまだに毎日通信はきますけど、それは私だから受けとれますが人間には無理です」


 てかまだあいつ俺に用があるのか?


「気になります?」


 間に合っています。


 では2つ目、ポーラの巫女としての特殊能力。


「別に蒼龍教って何か能力があるから巫女や神官になれるわけではないですよ」


 特殊能力の存在自体は否定しないんだ?


「長くなりますよ?」


 じゃあ今度にしよう。

 とりあえずポーラに特殊能力はないと?


「無いとは断言はしませんが、今回の件はどうかなと疑問符が付きます」


 じゃあ最後。

 女神。


「……何でもありです。ポーラの脳に囁いて誘導するなんて余裕かと」


 一番否定してほしかったんだが。


「申し訳ございません。この件に関しては力不足です」


 そうか。

 残念だ、本当に残念だ。



感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。


実のところここから新章にしても問題ないよなと思いましたが、まあプロローグということで。


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