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#スピンオフ 若者の海賊離れを嘆く女神様に変身できる眼帯をもらったけど、あたしにそんなのできっこない 6



 ――苦い。

 この星の食べ物は何食べても苦い。

 スイーツにも苦みがあるってどういうことかな?


 食文化は星によって違いがあるのは知ってるけど、ちょっと違いすぎないかな?

 そりゃあこの星、辺境にもなるよね。

 そうでなくても次のゲートがなくて行き止まりなのに、食べ物が口に合わなければ来る気にならないって。

 せっかくの魚料理も苦みのあるソースをかけないでほしい。


 自然はいいんだけどなあ。

 久々の大地で光を浴びるのって本当に幸せ。


 売店の管理頭脳に甘いジュースを頼むと、これは苦くなかった。

 安心して飲みながらぶらぶらと公園を散歩する。


 あたしは宇宙船で機械いじってるのが好きな人間だけど、やっぱ人間たまには地上でぶらぶらしないと息が詰まるよね。

 とにかく空が高いのがいい。

 空を見上げているだけで安心する。


「おい、そこのお前」


 本当なら数か月滞在したいところだけど……どうしようかな。

 とにかく食事があたしに合わないのがつらい。

 食材を買い込んで宇宙船で調理してもらえばいいんだろうけど、食事の度に船に帰るのであったら遠出ができない。

 この星に苦くない食事ができないかブロンに検索してもらおうか。


「おい! 聞いているのか!」


 へ? 

 あたし?

 地上で他人に声かけられたのって何年ぶりだろう?

 

 声の方向を見ると毛皮みたいなコートを着た1人の男性と円柱型の移動式管理頭脳がいた。

 男性はサングラスをかけて表情はよくわからないけど、口元から不機嫌そうな感じがする、っていうか怖いんですけど。


「お前、話がある! ちょっと来い!」


 とあたしの手を掴もうとする。


 いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!


 あたしは大声で絶叫した。

 何これ怖い!


「うるさい! 黙れ!」


 来ないで! 

 痴漢? 

 犯罪者?

 誰か助けて!

 ってここは誰もいない公園だった。

 そこの管理頭脳!

 これ犯罪じゃないの! 

 助けてよ!


「マーロン三世に警告。嫌がる女性を無理矢理拉致するのは犯罪に当たります。執行猶予が取り消されます」


 ああ、あの管理頭脳って執行猶予者の保護観察用なんだ。

 ていうか、そこの管理頭脳。

 今の時点で犯罪でしょう。

 助けてよ!


「私は記録するだけの管理頭脳です。四六時中マーロン三世を監視・警告はしますが実力行使はできません」


 それって、目の前であたしがこの男に拉致されて犯される現場を記録して、警察にそれを見せて犯罪を認定されたらこの人は再逮捕されるってこと?


「そうです」

「ちょっと待て! なんで俺がお前を犯さなきゃなんないんだ!」


 いやー! 

 とにかく近寄らないで!

 

 管理頭脳、よく聞いて、これは犯罪よ。

 助けてよ!


「私にその権限がありません」


 何この役立たず!


「いいから少し黙れ、話を聞けって言ってるだろう!」


 だから近寄らないでって言ってるでしょう!


「いい加減にしろ! こっちが下手に出ていれば」


 すごい形相で近寄ってくる。

 もういやだよ!

 あたしは泣きながら走り出す。


「おいこら! 待て!」


 やだもう、怖い!

 あたしが必死に逃げているとあの男が追っかけてくる。

 いったい何だっていうのよ?


 いつもは宇宙船でマシーンで走っているからある程度は体力はあるんだけど、泣きながら走っているのと、マシーンと違い凹凸のある地面のせいでつまづく。


「いいから、話を、聞けと、――言っているだろう」


 男がゼエゼエと肩で息をしている。

 もうその汗だくで荒い息が怖くて仕方ない。


 あたしは泣きわめくけど男は近寄ってくる。


 ああ、そうだ!

 あたしに天啓がひらめく。

 そうだ、こういう時にあの眼帯が。

 あたしは地面を這って逃げながらポケットから眼帯を取り出して装着する。



「はぁはぁ……。いいから話を聞けて言ってるだろうが、クソが!」


 止まったあたしに追いついた男が威圧的に言う。


「とにかくこっちに来い」


 あたしの手を掴んでひっぱり起こそうとする。


「おいおい、鼻息が荒いんだよ、この変態が!」


 ひっぱりあげられた勢いを利用して、もう一人のあたし、ブラッディー・クイーンは男の顔面にパンチを叩き込む。


「昼間っから高圧的に女を追い回すんだ、それなりの覚悟があるんだろうな」


ニヤリと獰猛に笑う。


「貴様! こっちが下手に出ているっていうのにこの俺様に手をあげるだと! この無礼者が!」

「何が下手だ、何が無礼者だ! そりゃこっちのセリフだ! あたいが下手に出ていると追いかけまわしやがって! どっちが無礼だっていうんだ!」


 今度は飛び蹴りをかます。

 グハッとうめき声をあげ、飛んでいくマーロン三世。

 てかあたしってあんな風に動けるんだ?

 幽体離脱の状態で転がったマーロン三世を踏んだり蹴ったりしている様子を見て他人事のように思う。


 そうこうしていると警察の管理頭脳が到着する。

 ああようやく、さっきの保護観察用の管理頭脳が応援を呼んでくれたんだ。

 これで助かった……え?


「警告! 暴行の現行犯で逮捕します。抵抗はあなたに不利になります。速やかにマーロン三世を解放して投降しなさい」


 へ?

 あたしが逮捕されるの?



ブックマークが4000件達成しました。

してくださった方ありがとうございます。

励みとなります。

これからも頑張ります。


さてTwitterでもつぶやきましたが本編のほう、なんとなく方針が決まりました。

これからストックを増やします。

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