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#スピンオフ 若者の海賊離れを嘆く女神様に変身できる眼帯をもらったけど、あたしにそんなのできっこない 5

「惑星Z3-J、入国管理局。応答願います」


 あたしはこの入国管理局に連絡するのが苦手だ。

 知らない人に話しかけるのって本当に怖いよね。

 そんなの得意なら友達の1人くらいできてるって。


「こちら惑星Z3-J入国管理局です」


「あたし、惑星パールの……あ、違う。いえ、違うってわけではないんですけど」


 ああ、いけない。

 気を抜くと今までの癖がでる。

 ふぅっと大きく深呼吸して、


「あたしは最近まで惑星パールで定期便の船長してまして、この度独立して初めてこの星に来ました。宇宙船クリスタ、船長のマルチダです」


 用意していた原稿を読む。

 定期便しているときに学んだこととして、入国管理局の人はどの星でも似たような対応をする。

 相手は大体マニュアル通りの応対するのだから、こちらもマニュアルさえあればなんとかなる。

 基本的には管理頭脳同士のやり取りだしね。

 まあこの後、世間話をさせられるのが苦痛なんだけど。


「パールっていうと三つ子星でしたっけ?」


 相手があたしの言葉に気が付く。


「はい、それです。知ってましたか?」

「まあ有名ですから」


 地元ではあまりこの星のコンテンツを見たことがない。

 でも交流のあまりない星でも知られているんだ。

 地元が有名なのはちょっと誇らしい。


「売り物はパールのものですか?」

「あ、いえ……それもあるけど、大翠のコンテンツが売れるって聞いて」


 ドラパパ似の人の情報は正しいのだろうか?

 もしかしたら騙された可能性があるのではないかと、ここに来るまでに思い至って不安になったりもした。

 例えそうでも文句を言える筋合いでもない。

 でもあの人良さそうな人だったからお願いだから売れてください。


「ええ、売れますよ。この前の方が惑星ワイズって未知の星のコンテンツを持ってきてくれたんですけど、それはそれで売れまくったんですけど、この惑星はお隣が大翠ですのでやっぱ一定数の需要があります」

「それはよかった」


 本当に良かった。

 あの人マジいい人。

 友達になってほしいなぁ。

 でも変なこと言ってた?


「てか、惑星ワイズって?」

「どこかの滅んだ星だそうです。イザヨイの船長が難破船を発見したとかで」


 はい? 

 そんなことってあるの?

 聞いたことないよ、そんなことって。

 確率的にはめちゃ低いことだと思うんだけど……あれ?

 さっきの人とは違う人じゃないよね?


「イザヨイって……赤い宇宙船ですか?」

「そうです、ちょうどどこかですれ違ったのではないですか?」


 やっぱり同じなんだ。

 あの人すごいね。

 ゲート突入も上手だし、難破船でお宝発見するなんて。

 才能と運も持った人っているんだなぁ。

 あたしとは大違いだ。


「……ええ、見ました。その人に大翠のコンテンツが売れるって……教えてもらって」


 そういやあたしあの人の名前も知らないや。

 えっとどう聞けばいいんだろうか?

 

 あたしは手元に置いてあるメモに質問をシミュレートする。


「ちなみにイザヨイの船長の名前って何て言いましたか?」

「えっと、日下部、でしたよ。……聞いてないのですか?」

「いえ、……聞いたんですけど……聞き、とれなくて」


 そっか日下部っていうのか。

 イザヨイの船長、日下部。

 覚えておこう。


 

 そんなこんなでどうにか無事入国審査が終わる。

 本当にこの瞬間が一番緊張する。

 画面を切った後にどっと疲れが出て、椅子の背もたれに崩れ落ちる。


「船長。休むのなら部屋で寝てください」


 わかってるわよ。

 ブロン、じゃあコンテンツの販売よろしくね。


「はい、ではおやすみなさい、船長」


 はい、おやすみ。




 さて起きたら久しぶりの大地に降りよう。

 もう2か月もゲート前で遭難してたから、そろそろ太陽が見てみたいな。

 美味しい空気吸って、大地を踏みしめる。

 宇宙に出ているとこういう些細なことが本当に嬉しい。


 宇宙船のなかでカスタマイズを考えることも好きではある。

 でも人間は宇宙船に引きこもれる生き物じゃない。

 限界というものがある。

 誰しも地上に降りたくなるものだ。

 宇宙船から降りた直後だと半日でも日向ぼっこしていられる。

 木々の揺れを見ているだけで幸せになる。

 エアコンの風ではない、暑さ寒さが調節できない風がなんと素晴らしいことか。

 


 あと、おいしいものがあればいいな。

 大翠だとお肉ばっかだったし、お魚がいいなぁ。

 あの星のお魚ってクジラとかイルカしかなかったしなぁ。

 その前のマイタンなんか魚はそもそも戒律で禁止だったし。

 あたしの地元の惑星パールは海産物が豊富だから恋しくなる。

 お魚と、あとは甘いスイーツが食べたいな。

 


感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方、ありがとうございます。


今回は海賊パートとなります。

去年お蔵入りにさせた話なのですっかり忘れていましたが初回は導入部となり少し短いです。

某引きこもり船長との対比を感じてもらえればと。


予告として明日からマーロン三世が登場します。

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