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#123 管理頭脳はドラゴンの夢を見るか? 13

 俺に説得の甲斐(?)あってレーティアは宇宙船に乗ることになった。

 現在はイザヨイのサブの管理頭脳となるべく、機能拡張中である。

 俺としてはレーティアがどんな選択肢をしてもよかったのだが、形見分けされたようなものだし引き受けるのが正解かなと思っている。

 善し悪しはわからない。

 

「ヨミ博士の心中をお察しするとこれで正解だったと思います」


 とポーラは賛成してくれる。


「数十年後に迎えにくる方法もありましたけど」


 というのはカグヤ。

 ただその場合、所有者のいない管理頭脳が廃棄されずに生き残るためにはどうすればいいのかが難しい。

 国家に金を支払って維持してもらえるのだろうか?

 誰か信頼のおける人に預けるべきか?


 どちらも現状厳しいという判断になった。

 そもそもコネがない。


 あとヨミ博士がいつ死んだのかわからない。

 この星のドラゴンに連絡をもらう点は論外だ。

 まず俺は蒼龍の件でドラゴンに嫌われている。

 早く出ていけ、二度と来るなという感じだ。


 そして俺もドラゴンのことを信用していない。

 蒼龍のせいだ。

 借りを作るとあと何を要求されるかがわからない。


 つまり蒼龍が全部悪い。


 


 というか、現状だとウチのウサギどもはヨミ博士が死んだらどうなる?


「あれは規格内ですので他の所有者で再利用されるかと」


 ならよかった。

 できれば長く使ってもらいたい。

 もっというならいい人に使ってもらって幸せに働いてほしい。


「船長にとってはあの2体にも魂があるのですか?」


 てか俺は思うのだが、お前たちはモノに愛着がわかないのか?

 

「私はそもそもモノですし」

「大事に使おうとは思います、限りある資源ですから。ですが不必要になればリサイクル、リユースのほうが良いかと」


 と、価値観の違いは埋めがたい。

 てかポーラ、お前はこの前イザベラ、エクレアと買ったおそろいのイアリングは大事にするだろう?


「それはもちろん、友情の証ですから」


 それは大事にするだろう?

 愛着がわくだろう?


「もちろんです」


 いずれはそれがイザベラやエクレアのように感じるだろう?


「それは意味が分かりません。記念品ですのでお二人のことを思い出すことはあるでしょう。でもこれはイザベラさんでもエクレアさんではないのですから」


 ふむ、よくこの認識、価値観の中、ヨミ博士は長年、魂を証明しようとしたもんだ。



 ちなみにお前らはレーティアに魂があると認めてないのか?


「私は魂については禁則事項です」

「ヨミ博士の生涯をかけた作品ということであれば、……例外的にそういう奇跡が起きてもいいのではないでしょうか」


 ふむ、では俺がこの宇宙船に魂があると言ったら?


「魂については禁則事項ですが、地球という特殊な事例を聞いていなかったらカウンセリングを検討してほしいと思っています」

「宇宙船に魂があってなにか変わるんですか?」


 よくわかった。

 降参だ。

 ヨミ博士、あんたはすごいな。

 俺なんかもうこいつらに説明しようなんてあきらめたぞ。

 

 


 さて時間か、出港しよう。

 レーティアにヨミ博士への最後の挨拶は?


「現在機能拡張中ですが、それくらいはできます。今しているようです」


 ならそっとしておこう。

 ただメールで「娘さんをお預かりします」と送っておいてくれ。


「簡素ですね」


 正直そこまで俺の言葉なんかいらないと思うのでな。

 

「まあ船長の場合、舌先三寸で生きていますからね、文章が短いと返って重みがありますよ」

「ああ、それ、少しわかります」


 お前らひどいな。


「ヨミ博士を説得するのは今までの経緯からできるだろうと思っていました。相変わらず見事な手口です。本当に斜め下で」


 最後の一言は一番ひどいぞ。


「褒めているんですよ」


 どこがだ。


「でもね、私が一番感心したのは管理頭脳までそそのかして、よくもまあその気にさせたもんだと。命令を拒否する管理頭脳に命令を受諾させるなんて並大抵の話術じゃないですよ」


 まあレーティアは管理頭脳としては特殊な気もするが。

 そもそも管理頭脳は人の言うことを聞くのが仕事だろうよ。


「著しく国家運営にダメージを与える命令や、他人が苦しむといったものは拒否しますね」

「そうですよね、マイタンでも国家運営の管理頭脳が意に沿わないからって最高司祭が数時間怒鳴って命令を聞かせようとしたのですが結局ダメだったという噂があります」


 いったいやつは何を命令しようとしたんだろう?

 てかそれと同じにされても困るんだが?




 惑星フィ=ラガを出航して、ポーラは日課の教会の清掃に向かう。

 さて飯まで引きこもるかね。


「最後に船長、一言いいですか?」


 何だ?


「タイガーってネーミング、微妙じゃないですか?」


 俺も何も吟味もせずにとっさに出た単語だから今考えるとどうかとは思う。

 けどな、カグヤ。


「なんでしょう?」


 ドラゴンってネーミングだって微妙じゃないか?



今回でこのシリーズ終了です。

今までとは少々毛色が違う話でしたがいかがだったでしょうか?

感想や評価いただけると嬉しいです。


明日からは前もって告知していますが、スピンオフを5話投稿します。


興味のない方、苦手な方は申し訳ございません

2/11から本編を再開します。

そこまでお待ちください。


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― 新着の感想 ―
[一言] >俺に説得の甲斐(?)あってレーティアは宇宙船に乗ることになった。  甲斐……を使ったのは虎だからか。  甲斐の虎。  レーティアが仮定ながらタイガー(虎)だけに。
[一言] 船に魂があって何か変わるのか。 う〜ん。ただの乗る道具から戦友になる? 心の拠り所。信頼の寄る辺にはなるよな。
[一言] 此のシリーズも面白かった
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