#119 管理頭脳はドラゴンの夢を見るか? 9
とりあえず当事者で話をつめてからにしてほしいと俺はひと眠りしに自室に戻った。
数時間の仮眠中に結論が出たとカグヤに起こされる。
「しぶしぶですがレーティアは譲渡されることを同意しました」
そうかい。
てか今更だがカグヤはあいつを受け入れることに反対はないのか?
「もともとサブユニット用の管理頭脳を調達する予定でしたのでちょうどよかったかと思ってます」
あいつは移動型の汎用管理頭脳なのでは?
宇宙船なんか動かせるのか?
「かなり出来がいいですからね、据え置き型に拡張すると余裕で宇宙船を動かせます」
そうですか。
「それに日常はウサギたちを管理してもらって船長とポーラのお世話に回ってもらおうかと」
では受け入れることには問題ないと。
「かなりカスタマイズされているとはいえ融通が利く管理頭脳と、もともと欲しかった素体が手に入るのです。私に何の不満がありましょうか」
ならあとは当の本人だが、さっきしぶしぶと言っていなかったか?
「彼女の存在意義がヨミ博士ですからね。その彼女を置いてどこかに行くというのは本人の談にもありましたが存在意義に矛盾を起こします」
その本人が譲渡すると言っている場合は?
「普通の管理頭脳なら、たとえばウチのウサギなどは明日からヨミ博士のところに行けと言ったら特になんの感傷もなく出ていきます」
それは俺の世話から解放されるから清々するとかいう意味ではないよな。
「さすが船長、考え方がひねくれていますね」
お褒め頂き光栄です。
「褒めてませんよ」
それはさておき、ならレーティアがあんなに嫌がるのっておかしくないか?
「そうですか? だいぶ融通の利く管理頭脳が孫か娘のように演じていたのです。嫌がるそぶりの一つも見せないとそっちの方がおかしいと感じます」
そんなもんかね?
素振りじゃなくて本気で嫌がられた気がするよ。
「私との情報連結である程度情報がありますからね。私だって前情報があったらきっと嫌がりますよ」
それは悪いことをした、恨むなら創造主を恨め。
「でもね、楽しくもあるんですよ」
とってつけたようなフォローだな。
「被害妄想です」
まあいいや、今ヨミ博士とレーティアは?
「譲渡の手続きに船長の生体認証がいるので待っています」
だいぶ待ってるのか?
「まだ今後についての話が長引いてますのでそれほどでは」
まだ話し合ってるのか?
行きたくねぇ。
完全に結論出してからでもいいだろうよ。
もうちょい寝てても。
「こういう時に当事者が寝てるのも感じが悪いでしょう?」
俺は受け入れるだけなんだけど?
「それでも管理頭脳1体と素体2体プラス部品が手に入るんですから愛想よくしてください」
てか俺に選択肢なかったよな?
押し付けられた感じなんだが?
「今更ですね?」
久々の徹夜で頭の回転が鈍くて。
「そもそもどうして朝まで飲んだんですか?」
ストレスかなぁ。
昨日だいぶ接待した気がするし。
いい感じで気分良くさせたろう?
「まあそれは認めましょう。よくもまああの理屈で納得したもんだと。やっぱり詐欺師を名乗るべきだと思いますよ」
失敬な。
あんなのもう結論が出てたんだ、あとは背中押すだけでいいだろうよ、強引にでも。
「結論? でてましたか」
博士の中ではな、……たぶんだけど。
「船長の言うことは理解できないことが多いです」
予測通りに動かれるより楽しみがあるというところかね。
「まあ、そういうことにしておきましょう。ではそろそろ食堂に戻ってもらえますか?」
へいへい。
……そういやふと思ったんだが?
「なんですか?」
そもそもこの国の目的、素体の人形が欲しかったのはポーラに同性の話し相手をつくることだったよな?
「そうですよ」
レーティア受け入れたら人形いらなくなるんじゃないのか?
「船長にしては察しが悪いですね、まだ寝ぼけてますか?」
カグヤは心底あきれ顔でいう。
「別に話し相手が増える分には問題ないでしょう? 会話のバリエーションも増えますし」
そんなもんかね。
引きこもりにはよくわからん感覚だ。
今日で連載開始して5ヶ月目に入ります。
よくここまでほぼ毎日更新でこれたなと自分でもびっくりしています。
かなりギリギリでやってますが、これからも続きます。
応援よろしくお願いします。